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大切なのは「モノづくりが好きかどうか」(株式会社積進)

高い企画力・提案力・技術力を武器に、ミシン・車両部品を皮切りに航空・宇宙・衛星・医療など高付加価値分野の金属加工に強みをもつ企業が、1965年に京都府京丹後市で創業したモノづくりが好きな人のための会社、株式会社積進です。様々な顧客から「最後には積進に頼るしかない」と言われる地位を築くまでの変遷を追いました。

株式会社積進
設立 1965年
資本金 4,800万円
従業員数 95名
所在地 京都府京丹後市峰山町長岡1750-1
#モノづくりが好きな人のための会社  #誠実とチャレンジ #一流の技術・技能でモノづくり #京丹後市

モノづくりが好きな人のための会社

株式会社積進(以下「積進」) は、1965年に京都府京丹後市でミシン・車両部品量産工場として創業しました。
「航空」「宇宙・衛星」「医療」分野に加え、細かい応用力が必要な「試作品」を手掛けるなど、高い技術力が求められる仕事に挑み続ける「地域未来牽引企業(※)」です。

地方部は物流や取引先との距離において優位点が決して多いわけではありません。そんな中でも積進は、技術力を強みに存在価値を高め、「最後には積進に頼るしかない」と言われる地位を築いています。

この背景には、「モノづくりが好き」な多様な社員の活躍による『しなやかな』体制づくりとその試行錯誤がありました。

出発点は地方製造業が直面する「人材」の課題

10年前の積進の現場は、大半を占める男性技術者が勘と経験で仕事を進めている、そんな現場でした。また、積進が立地している京都府京丹後市でも、地元の学生は都市部へ進学したまま就職してしまう過疎地域の人材の課題に直面しており、地方で技術人材の採用することはとても難しい状況でした。

結果として、同社の稼ぎ頭である技術者の人達に、工程を管理する仕事や取引先に提出する書類づくりなどの事務作業がのしかかり、本来、技術者の人達にやってもらいたい、モノづくりのための機械操作や加工方法の検討に専念できない状況に陥っていました。

一方、積進の強みである「技術力」を絶対に諦めたくない田中社長は、あるとき、採用活動やインターンの受入れ等を通じ、世の中には、モノづくりに携わりたい文系出身や女性が多いことに気づきます。 

株式会社積進 代表取締役社長 田中 安隆さん

そこで、技術者が苦手・負担としていた現場での事務業務などをより細かく分けて、技術者を支援するための事務職区分を新たに創設したのです。
モノづくりが好きな文系人材や女性の方に向けた採用の裾野拡大と、現場業務の効率化、そして、技術者が技術開発に専念できる環境づくりのいわば「一石三鳥」を図ろうとしたのです。

創設当初は現場には馴染みのない女性が入ることになり、以前から働いていた従業員の方は戸惑いを感じていたと言います。しかし、技術者に根気強く質問し続ける女性社員の胆力や、じっくり時間をかけて現場をフォローする田中社長の地道な努力が、現場の雰囲気を少しずつ変えていきました。

そういった数々の積み重ねは、同社のコアとなる熟練技術の「客観化」「見える化」につながり、専門技術を学べる教育体制の構築、どんな人にとってもわかりやすく実践しやすいマニュアル作りなどの成果にも現れました。

さらに、技術者の視点からは、当初目的としていたコアな技術の仕事に専念することが叶い、より高度な仕事に挑戦できる環境が整っていきました
このようにして、現場には見慣れない人材を受け入れる体制が徐々に整い、積進の現場の風景が変わっていきました。

高い技術力を支えるしなやかさと成長への姿勢

現在、積進で活躍する女性の割合は全体の約3割に及びます。男性・女性関わらず「モノづくりが好き」という共通精神で集まる多様な人材が活躍することによって強みである技術力を一層高める、そんな好循環が起きているのです。この背景には、技術の高みを諦めなかった田中社長の信念と、経営層、技術者、事務社員が、それぞれの立場から挑んだ新たな体制作りへの努力がありました。

現場で活躍する社員の様子

この挑戦を続けるのは決して簡単なことではありません。しかし、積進は今も軸をぶらすことなく、性別や専攻を問わず人材採用を続けています。

他にも、地域の子供たちにモノづくりの魅力を伝え、将来のUターンに繋げたいとの思いから、継続的に学校への出前授業を行うなど、自社のビジネスに留まらない地域経済を牽引する取組を積極的に行っています。さらに近年では、外国人の人材登用も始まっており「今後は海外にも、分野を絞らず技術を売っていきたい」と担当者は話しています。

時代に応じて、多様な人材、地域とともに成長を続ける積進。
製造業をとりまく様々な環境変化にも、多様な人材によるしなやかな体制と揺るがない武器(技術力)で挑んでいます。今後立ちはだかる様々な壁も、多様な人材から生まれる創意工夫で乗り越え、地域の新たな未来を創造していくのでしょう。

地域未来牽引企業
地域内外の取引実態や雇用・売上高を勘案し、地域経済への影響力が大きく、成長性が見込まれるとともに、地域経済のバリューチェーンの中心的な担い手、および担い手候補である企業。
同社は2017年に経済産業省より認定。

地域未来牽引企業(経済産業省)

KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]

経済産業省近畿経済産業局は、近畿2府5県(福井県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県)における経済産業省を代表する機関であり、経済産業施策の総合的な窓口機関です。年間 1,000 件以上にも及ぶ企業訪問を通じて、未来に向けて躍動する関西企業を発掘し、そんな企業の挑戦を、より良い未来を見据えた変化への「兆し」と捉え、「KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]」として、とりまとめています。

2023年1月に発表された「KIZASHI vol.20 『不変と可変 揺るぎない価値観、絶え間ない挑戦』」では、事業環境の変化を前向きに捉え、絶え間ない「挑戦」を続ける中小企業11社に対しインタビューを実施し、その「挑戦(可変)」の裏に宿る、揺るがない「価値観(不変)」を大切にしている姿を特集しています。

https://www.kansai.meti.go.jp/1-9chushoresearch/jirei/jirei20.html

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