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親子2代でつながり、未来志向で共に挑戦(株式会社兼廣 × 株式会社M.T.C)

兵庫県神戸市にある株式会社兼廣と、奈良県大和高田市にある株式会社M.T.Cは、どちらも経済産業省が地域経済の中心的な担い手となる企業として選定した「地域未来牽引企業」です。

両者は、「地域未来牽引企業」に選定されていることが決め手になって、信頼関係を構築し、双方の強みを持ち寄って対等なパートナーとして切磋琢磨しながら、新たな協業連携に取り組んでいます。

株式会社兼廣                  株式会社M.T.C
橋本 廣社長(左)と橋本 雄輔専務(右)        森 久次社長(右)と森 秀貴専務(左)

経営者としての勘所(株式会社兼廣)

株式会社兼廣は、1952年に大型の建設機械・産業機械の部品を扱う商社として、兵庫県明石市で創業しました。
その後、大手建設機械メーカーからTier1(※1)として部品製造の依頼を受けたことをきっかけに、2001年に建設機械の車体部品の製造部門を立ち上げ、製造業へと大きく舵を切りました。

(※1)Tier1(ティアワン)
一次請けという意味があり、完成品メーカーに直接部品を供給するメーカーのこと。
またTier1メーカーに部品を供給する企業のことをTier2(ティアツー)という。

業態転換を伴う大きな決断でしたが、橋本廣社長は当時を振り返って、「最終的には経営者としての勘所に頼った」と力強く語ります。

現在は本社を兵庫県神戸市に移し、商社時代に得た商品知識・ネットワーク・市場分析力と、製造業として一つ一つ培ってきた技術力・提案力を活かして、『THINK & CHALLENGE』をモットーに、すべての取引先と一緒に考えながら、企画から開発・試作・製造組立まで、兼廣にしかできないものづくりに挑戦しています。

同社のシンボルマークの中には3つの光があり、これは「安全」「品質」「環境」を表しています。
「安全」は全てに優先し、「品質」はお客様の満足。「環境」はsustainability(継続性)の為の指針です。
この3つの光が『THINK & CHALLENGE』の2枚の若葉に注がれ、同社が「明日を創る」活力の源となり、社会に向かって大きく成長したいという願いをこめてこのシンボルマークを作りました。

(左)本社・神戸工場 (右)同社のシンボルマーク

株式会社兼廣
創業  :1952年8月1日
資本金 :2,000万円
従業員数:140名
事業内容:建設機械車体部品・産業機械組付け部品、設計製作
     産業設備・自動装置、設計製作
所在地 :兵庫県神戸市西区伊川谷町潤和811-5
#地域未来牽引企業 #THINK &CHALLENGE

なんでも一番に挑戦する(株式会社M.T.C)

株式会社M.T.Cは、1968年に金属プレス加工業として奈良県大和高田市で創業しました。

現在は、住宅設備部品や鋼製家具部品・その他重要パーツを製造し供給しています。株式会社M.T.Cの製品はいわゆる「部品」です。
製品の表には出ない部品ですが、製品を形作るものとして、部品を世の中に送り出すときには「株式会社M.T.C製であることに胸を張りたい」と考えています。
厳格な社内検査を行い、自信をもって製品を世の中に送り出すことに、ものづくりとしての使命を感じています。

同社は、順送プレス機械9台・単発プレス機械13台・ベンダー機械8台・レーザー加工機・タレットパンチ機を保有。
奈良県でトップクラスの機械保有台数を誇っており、トイレやお風呂を固定する金属部品や業務棚、オフィスチェアの固定具など他社ではできない比較的小さい部品の金属加工ができ、更に同一金型内で多工程加工も可能です。

特に、得意分野の一つである、複数工程を組み込むことができる順送プレス機械を多数所有していることで、加工時間の短縮化や自動化・省人化・それに伴う低コスト化を実現しています。
また、森久次社長が就任以来約20年かけて推進してきた「工場全体の向上」と、DX推進本部長を兼務する息子の森秀貴専務が約10年かけて推進してきた「ITシステムの向上」を融合することでデジタル化による製造管理の強化と定着、生産性の向上にも積極的に取り組んでいます。
2023年7月には、奈良県で第一号となる、経済産業省の「DX認定制度」(※2)における事業者として認定されました。

(※2)「DX認定制度」
DX推進の準備が整っていると認められた企業を国が認定する制度。

独立行政法人情報処理推進機構ホームページより

森久次社長は「なんでも一番に挑戦する」と嬉しそうに語ります。
DXに取り組みながら、「デジタルを使いこなし、経営環境の変化に適応できる、柔軟性の高い製造業であり続ける」というビジョンの実現に向け、現場改革を進めています。

(左)本社工場 (右)同社の強み

設備にも裏付けられた「生産力」、社内一貫生産による工程上の工夫や自由な発想に基づく「提案力」、社内に設置している品質保証課による「品質管理体制」、DX技術も活かしながら行う「工程を改善する力」の4つの強みが相乗効果を生み、当社は常に発展を続けています。

株式会社M.T.C
創業  :1968年7月5日
資本金 :1,000万円
従業員数:47名
事業内容:住設部品、鋼製家具部品、建設部品、建築部品、
     準医療機器部品、その他のプレス加工、板金加工、
     溶接、タッピング、組立
所在地 :奈良県大和高田市大字大谷8番地1
#地域未来牽引企業 #DX推進 #ものづくりは人づくり夢づくり

一貫生産体制と協業連携、域内から広域へ

建設機械産業はインフラ整備の多額投資等で国内外ともに順調に推移しています(下図参照)。

日本建設機械工業会の資料より

株式会社兼廣は2001年から、建設機械の車体フレームの部品加工・溶接・組立・塗装から、ショベルカーのアーム可動部に使われる軸受け部品といった機能部品の設計・試作・量産まで、約20年かけて一貫生産体制を構築してきました。

しかしながら「昨今の建設機械の多様化により、顧客ニーズは細部にまで広がり、また、海外メーカーの台頭により世界的な競争が激化し、開発スピードも速くなってきて、全てのニーズ・需要に追いつくことが難しくなってきた」と橋本廣社長は危機感を感じています。

そこで橋本廣社長は「一貫生産体制や自社が得意とする工程は社内に残しつつ、車体や部品の大きさに応じて、それぞれの工程・加工に強みを有する企業と広域的な協業連携を進める」ことを決断しました。

一方の株式会社M.T.Cは、多種多様な金属プレス機械を保有していることを強みに、森久次社長が持つ地域の横のつながりから、奈良県内で様々な金属加工の依頼を受けてきました。

今後も住宅設備関連を中心に地域のサプライチェーンの役割を維持しつつも、森秀貴専務は「将来の人口減少に伴う戸建て住宅の着工数減少にそなえて、住宅設備以外の新しい分野や、自社オリジナル商品の企画開発など積極的に進めていき、最終的には地域を越えて、あらゆる企業のものづくりニーズに応えるEMS(製造受託企業)になる」ことを目指しています。

決め手は地域未来牽引企業

これまで全く接点のなかった両社ですが、株式会社兼廣が2018年に、株式会社M.T.Cは2020年に「地域未来牽引企業」に選定されたことがきっかけで、両社は協業連携をスタートします。

上述のとおり、建設機械の世界的な需要の高まりにより、株式会社兼廣は、建設機械の部品加工において、自社で有する単発プレス機械(※3)だけでは顧客ニーズやそのスピードに対応することが難しくなってきました。

そこで、複数工程が組み込まれている順送プレス機械(※4)とそのノウハウを有する協業先を2020年頃から探していたところ、「お付き合いのあった機械商社から、順送プレス機械を多数保有している企業として、株式会社M.T.Cを紹介された」と言います。
その後、同社の会社HPを見たら、同じ地域未来牽引企業ということで、株式会社兼廣から株式会社M.T.Cにメールしたことが始まりです。

(※3)単発プレス
各工程が独立した型となっており単独で使用される。

(※4)順送プレス
複数の工程(ステージ)が一つの金型に組み込まれており、コイル材を順送りにすることによりプレス機1台の中で複数の工程(ステージ)を経て、完成した製品が金型から排出される。

株式会社M.T.Cホームページより

株式会社兼廣の橋本廣社長は「昨今、転職やM&Aが活発だが、人の流れが激しいと企業は不安定になる。M&Aで外から資本が入ると、事業の方向性が変わって事業転換することも多い。当社としては、大手建設機械メーカーのTier1として、安定的な供給責任が求められるため、地域にしっかり根ざして、事業の存続性があり、長期的に信頼関係が築ける企業と協業連携することはとても重要」と考えています。

「地域未来牽引企業は地域経済のバリューチェーンの中心的な担い手として経済産業省に選定された企業であり、株式会社M.T.Cも当社と同様に、地域のサプライチェーンにおいて重要な役割を担っていることから、株式会社M.T.Cとの協業連携は長い目で見ても安心して進めることができる」と、株式会社M.T.Cとの協業連携に至った決め手を力強く話しています。

株式会社M.T.Cも、『より良い提案ができ 良きパートナーとして 求められる企業として存続する』ことを経営理念に、日頃から顧客のニーズと期待に応えるものづくりに取り組んでおり、「株式会社兼廣の”顧客に対してより良いものを協業先と一緒に作り上げようとする姿勢”に共感した」と株式会社M.T.Cの森秀貴専務は話しています。
「当社と同じ地域未来牽引企業に選定されている企業と同じ価値観で、当社の得意とする順送プレスのノウハウを活かして協業連携できることは非常にやりがいと意義を感じている」とも語っています。

株式会社M.T.Cの供給するパーツが組み込まれた、株式会社兼廣の機能付きヒンジ

今後も補完し高め合う関係に

両社は2022年秋に契約し、2023年から本格的に取引が始まりました。

「通常は数ヶ月で契約することが多い中、株式会社兼廣とは、単に決められたことを受注生産するということではなく、お互いが相手の立場を理解した上で、最終顧客に向けて構想段階から一緒にものづくりしていくという共通認識を深めるために、1年以上対話を継続して契約しました。株式会社兼廣のTier1としての責任ある立場を考えると、じっくり時間をかけて慎重に判断するのは理解できる」と株式会社M.T.Cの森秀貴専務は言います。

株式会社兼廣の社長の息子である橋本雄輔専務も、「当社では、新たに契約する場合、お互いの工場を見学したり、両社長・両専務をはじめ従業員同士の対話を繰り返したりしながら、お互いの強みや提供できるリソースを理解した上で、目指すべきところを共有し、長期的な信頼関係が構築できるかどうか見極めることが最も重要と考えており、そこに時間を費やすようにしている」と語ります。

従来のTier1・Tier2という関係ではなく、オープンで対等なパートナーとして補完し合い、また、お互いのいいところは吸収して高め合い、より良いものづくりにこだわった長期的な協業連携を進めています。
取引開始後も定期的に訪問して意見交換をしており、株式会社M.T.Cは、住宅設備や鋼製家具の加工で培った技術やノウハウを活かして、工程短縮や自動化・省人化を提案し、株式会社兼廣もその提案を積極的に採用しています。

株式会社兼廣としては、建設機械の多様化に伴う開発スピードと、人命にも関わる建設機械の品質管理の両方を担保するため、株式会社M.T.Cと一体となって切磋琢磨しながら、最終顧客に対して技術力や設計力・プレゼン力を高めています。

現在は建設機械の車体フレームの部品加工における協業連携が中心ですが、その他産業機械の部品加工など、今後も両社は取引を拡大していくことが見込まれます。

株式会社兼廣の橋本廣社長も、株式会社M.T.Cの森久次社長も「地域未来牽引企業として地域に根ざしつつ、いかに地域を越えた連携を広げて、挑戦していけるかが今後の成長のカギだ」と共通した考えを持っています。

お二人の考えは、息子である橋本雄輔専務と森秀貴専務にも引き継がれ、未来志向のパートナーとして、共に成長・発展していくことが期待されます。


KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]

経済産業省近畿経済産業局は、近畿2府5県(福井県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県)における経済産業省を代表する機関であり、経済産業施策の総合的な窓口機関です。年間 1,000 件以上にも及ぶ企業訪問を通じて、未来に向けて躍動する関西企業を発掘し、そんな企業の挑戦を、より良い未来を見据えた変化への「兆し」と捉え、「KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]」として、とりまとめています。

「KIZASHI」
https://www.kansai.meti.go.jp/1-9chushoresearch/jirei/jireitop.html


地域未来牽引企業

地域内外の取引実態や雇用・売上高を勘案し、地域経済への影響力が大きく、成長性が見込まれるとともに、地域経済のバリューチェーンの中心的な担い手、および担い手候補である企業を、経済産業省では「地域未来牽引企業」として選定しています。

「地域未来牽引企業」https://www.meti.go.jp/policy/sme_chiiki/chiiki_kenin_kigyou/index.html


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