アバターで働き方改革~好きな姿、好きな場所で~(株式会社パソナグループ×AVITA株式会社)
XRとは、AR(拡張現実)、VR(仮想現実)、MR(複合現実)といった、現実の物理空間と仮想空間を融合させて、新たな体験を創造する先端技術の総称です。
近年では、社会課題や地域課題を保有する企業等がXRコンテンツ制作企業とタッグを組み、試行錯誤しながらも解決に導こうとする動きが見られます。
本記事では、アバターを活用した働き方改革を推進する事例をご紹介します。
モニターの「中身」は?
2023年、広島で開催された先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)。
モニターに映し出された笑顔の女性が、海外メディアからの質問に英語で答えていました。
この「中身」の人は、淡路島にいました。そして、女性ではなく男性だったかもしれません。
笑顔の女性はアバター。
アバターとは、デジタル空間においてユーザーの外見の代理となるキャラクターやアイコンのことです。
代理するだけではなく、その身体や能力を拡張し様々な制約を超えて活動することができます。
通訳が足りない!
パソナは2020年に脱東京一極集中と地方創生事業での雇用創出を目指し、本社機能の一部を淡路島に移転しました。
その後、「人を生かすこと」をビジョンとしているパソナ社が、「人を拡張する」AVITA社と協業し、2021年に「淡路アバターセンター」を設立しました。
AVITAは20年以上に渡り、ロボットやアバターの研究開発に携わってきた石黒浩さん(現:大阪大学栄誉教授)が、研究成果を社会実装するために設立した大阪大学発ベンチャーです。
同センターでは、アバターを操作するオペレータの育成、アバターによる接客業務に取り組んでいます。
この動きは、新型コロナウィルス感染症の拡大により在宅勤務やリモートワークが広がっていることも追い風になりました。
そんな中、広島でG7が開催されることとなりましたが、通訳の確保に大きな懸念がありました。
全国各地から多くの通訳が広島に集まりましたが、それでも不足が見込まれていました。
当時、パソナはG7を機に国内外から広島を訪れる人たちを手助けする「おもてなしカウンター事業」を実施しており、それには現地での学生通訳ボランティアも含まれていましたが、彼らをフォローするリーダー的な人材の配置も必要でした。
リーダーには英語スキルがある人が望ましいが、すでに通訳は不足している状況。
そこでアバターを使って淡路島から遠隔操作し、好評のうちに閉幕を迎えることができました。
グローバルアイランド・淡路島
意外かもしれませんが、淡路島はグローバルアイランドです。
パソナでは海外の有名大学の学生や社会起業家が淡路島に集い地域創生に取り組むプログラムを2017年から実施しており、プログラム終了後も一部は淡路島に引き続き移住していました。
また、淡路島で働く社員のため、「淡路島インターナショナルスクール」も開講。淡路島で働く外国籍の社員は100名を超えます。
この流れは、パソナの社員だけに限りません。
親の介護のために就業環境に制限があるが英語力は抜群という女性がいました。また、表に出たくないが英語を使って働きたいという潜在的な人材も多くいました。
強固なネット回線はアバターセンターが担保できました。
リソースは、淡路島に揃っていたのです。
見た目をコントロールする
アバターのメリットは印象をコントロールできることです。
正しい情報を伝えていても表情が強張っていれば相手は不安に思うもの。
アバターなら安定的に笑顔で答えてくれます。
アバターで対応する側は自分の顔を写さなくてよいため、心理的な負担も軽減できます。
シチュエーションに合わせてアバターの性別だけではなく、動物での対応も可能です。ボイスチェンジ機能で性別・年齢も超越できます。
G7でも活用されたAVITAのアバター接客システム「アバコム」は、パソコンは使うものの操作において専門的なスキルは不要です。
学生でも主婦でもスムーズに使うことができます。
現在、アバコムは通訳だけではなく、コンビニ・保険代理店・病院などでの活用が広がっています。
身体的なハンディキャップがある、介護や育児で外出がしづらい、時間的・距離的な理由があるなど、様々な制約にとらわれることなく、働きたい人が働ける環境をアバターは提供してくれます。
そして、アバターであれば「中身の人」で勝負できます。
アバターとの未来
当初、アバターに仕事を奪われるのではないかという声もあったといいます。
「奪うのではなく、人の可能性を広げていきたい」。
淡路島から、日本、世界中の働き方を変える取り組みが広がりつつあります。
KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]
経済産業省近畿経済産業局は、近畿2府5県(福井県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県)における経済産業省を代表する機関であり、経済産業施策の総合的な窓口機関です。年間 1,000 件以上にも及ぶ企業訪問を通じて、未来に向けて躍動する関西企業を発掘し、そんな企業の挑戦を、より良い未来を見据えた変化への「兆し」と捉え、「KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]」として、とりまとめています。
「KIZASHI」
https://www.kansai.meti.go.jp/1-9chushoresearch/jirei/jireitop.html