創業からプラスチック製品向けの金型を中心に３０００種以上もの新規製品を開発。設計から加工まで社内一貫で手がける中で蓄積されたノウハウを活かして、２０１８年から社会課題を解決する製品の開発をスタートしているのが、株式会社浪速工作所です。

金型製造業から社会課題解決企業へ

株式会社浪速工作所は、プラスチック製品向けの金型を中心に設備、製品などを生産する会社です。創業から現在までに３０００種以上もの新規製品を開発してきました。　　
設計から加工まで社内一貫で手がける中で蓄積されたノウハウを活かして、２０１８年から社会課題を解決する製品の開発をスタートしました。

世界の水問題を安く　コンパクトに解決

「水」という限りある資源の需要は年々高まっています。この限られた資源をどう使うのか、これはグローバルな社会課題です。

「日本のろ過装置は高価で開発途上国などで実際に使うことは非常に難しい」と代表取締役社長の谷本和考さんは考えていました。
そこで、様々な水の課題に合わせ安全な水を作る事ができ、誰でも使用できる低価格な新型ろ過装置「クリアーノ」を開発しました。

クリアーノでろ過した水は飲料水として使えるだけでなく、工業用水の処理・リサイクルなど企業が抱える排水問題に対しても効果を発揮します。また、この製品は一般的なろ過装置と比較して、シンプルな構造をもつため故障の心配が少なく、フィルター交換も２年に１回と、管理コストの削減にも成功しました。

飲み水に使用できることは言うまでもありませんが、コンパクトかつ経済的、簡単な構造である利点を活かし、産業用途に応じて様々な場所での使用が期待されています。

金型屋が展開するサービス業とは

製造業として経営をしている浪速工作所ですが、現在新たな製品をAIベンダーと生み出そうとしています。それが「振動大臣」です。

製造業の現場では稼働する機械の刃具がいつ折れるのかの予見が難しく、機械を24時間稼働させることができないという課題がありました。そのような課題を、「振動大臣」は解決へと導きます。このサービスを製造現場に導入すると機械の刃が折れることをセンサーが検知・破断のパターンを分析しAIが学習します。この学習サイクルを繰り返すことで、刃の破断を未然に防止することができ、機械の24時間稼働を可能とします。

なぜ、谷本氏はサービス業という新たなジャンルに着目するのでしょうか。それは、製品を作っていくだけでなくサービス業にも裾野を広げていくことで、ものづくり業にも新たな価値を見出すことを考えているからです。

製造業が見出す新たな価値

浪速工作所は上流となる金型製造から始め、「クリアーノ」といった製品の製造及び販売を行いました。現在は完全なサービス業となる「振動大臣」の開発を行っています。

ものづくり業界は主に設計・デザイン・組立・製造を行っているため上図のスマイルカーブで考えると付加価値が出しづらい場所に位置しがちです。今後ものづくり業界が発展していくためにはスマイルカーブ上で付加価値が高いマーケティングや販売アフターなどを狙っていく必要があります。浪速工作所は「振動大臣」を通じ、製造や組み立てだけでなく、ものづくり業界をターゲットとしたサブスク型のサービス業へと展開しようと試みています。

ものづくりのサービス化を進めることで、浪速工作所は今後のものづくり業界の発展や成長への第一歩を踏み出していくことでしょう。

KIZASHI［関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 （きざし）］

経済産業省近畿経済産業局は、近畿2府5県（福井県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県）における経済産業省を代表する機関であり、経済産業施策の総合的な窓口機関です。年間 1,000 件以上にも及ぶ企業訪問を通じて、未来に向けて躍動する関西企業を発掘し、そんな企業の挑戦を、より良い未来を見据えた変化への「兆し」と捉え、「KIZASHI［関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 （きざし）］」として、とりまとめています。

2023年1月に発表された「KIZASHI vol.20 『不変と可変　揺るぎない価値観、絶え間ない挑戦』」では、事業環境の変化を前向きに捉え、絶え間ない「挑戦」を続ける中小企業11社に対しインタビューを実施し、その「挑戦（可変）」の裏に宿る、揺るがない「価値観（不変）」を大切にしている姿を特集しています。

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