回収したら埋めずに活用、CO₂の再資源化からGXを実現!(株式会社Eプラス)
物理学への探究心と環境保全への思いが原動力
株式会社Eプラスは、CO₂の削減をはじめとした環境対策技術開発と関連製品の製造販売を行っている大阪の研究開発ベンチャー企業です。
「美しい地球を、次の世代に残したい。」というビジョンを掲げ、CO₂の分離回収技術のほか、CO₂を燃料化する再生技術や肥料化技術・高効率の水素製造技術・放射能対策技術等、多くの技術開発を行っています。
もともと技術系の出身ではなかったものの、50代になってから大学で物理学を学び、修士号を取得するなど、強い探究心と環境保全への思いを原動力に事業に取り組む、同社代表の廣田武次さんに話を伺いました。
回収したCO₂は資源 埋めずに燃料化し発電に利用
カーボンニュートラルは、CO₂の排出量と吸収量の差し引きで実質排出量をゼロとする考え方です。
これらに資する取組として、CO₂を分離回収して貯留するCCS(※1)やCCUS(※2)と呼ばれる技術の開発が進められていますが、CO₂の分離回収が本格化する将来には、点在する埋設場所までの運搬や埋設時の安全性確保等に係るコスト負担等の問題が生じると考えられます。
同社では、この点に着目し、埋没以外の手法でCO₂を有効利用する技術として、CO₂の燃料化「CCFR(Carbon Dioxide Capture Fuel recycle)」やCO₂の鉱物固定化「FDAC(Fertilizer Direct Air Capture)」の開発に取り組んでいます。
まず、同社のCCFRは、工場排ガス中のCO₂をアミン液(※3)で吸収し、その吸収液を保有特許技術にて低コストで電気分解し、炭化水素を生成することで、CO₂の燃料化とガス分離回収を同時に行う技術です。
CCFRはCCSに比べて初期投資は3分の1程度、重量あたりの回収コストも大幅に抑えられる特長があり、さらに、通常は産業廃棄物となるCO₂吸収液から燃料を生み出し、発電に利用することが可能となるため、処理コストそのものを回収できるというメリットがあります。
また、CCFRの技術開発と並行し、資源化した燃料を用いたボイラー発電や、設備を小型化できるエンジン発電の研究開発も進めています。
これらの技術を活用したCCFR燃料化プラントをCO₂集積地に展開することで、新たなCO₂処理ソリューションの提供を目指しています。
CO₂再利用の幅は広く 肥料やコンクリート等にも
CO₂を水酸化物と反応させることで鉱物固定する同社製品「Cガード」を用いてCO₂を吸着し、生成された炭酸塩鉱物(※4)から肥料(グリーンカーボン肥料)を製造し、土に資源として戻す技術が同社のFDACである。
大阪府の脱炭素関係の技術開発実証事業では、同社がFDACの技術を提供し、パートナー企業とともに肥料製造までのLCA評価(※5)を行った。
その結果、従来の化成肥料製造に比べて、 FDACであれば、1tの肥料製造あたりで約0.6tのCO₂削減効果が見込めることが示されている。
また、同社は産業副産物に含まれるCa源によってCO₂を鉱物固定し、コンクリートやアスファルトの資材に利用する取組も進めており、今後、広島県の補助金を活用しながら実証を行う予定です。
企業との輪を広げ展開 廣田代表の熱い思い
同社は研究開発型企業であるため、事業展開に際しては、大学の研究チームや企業など、多くの関係者との協業の輪を大切にしています。
COP28(※6)に先立ってアラブ首長国連邦(UAE)で開催された世界最大級のエネルギー産業展示会「ADIPEC(アブダビ国際石油展示会・会議)」のジャパンパビリオンに出展し、世界からも注目を集めるなど、海外からの問い合わせも多くなっています。
今後も、CCFR関連では回収設備の小型化や燃料化プラントの拠点拡充、発電装置の実証を、FDAC関連では室内DAC装置の開発や肥料の拡販等を皮切りに、CO₂資源化によるカーボンニュートラル社会の実現に向けた協業先との挑戦は続きます。
KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]
経済産業省近畿経済産業局は、近畿2府5県(福井県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県)における経済産業省を代表する機関であり、経済産業施策の総合的な窓口機関です。年間 1,000 件以上にも及ぶ企業訪問を通じて、未来に向けて躍動する関西企業を発掘し、そんな企業の挑戦を、より良い未来を見据えた変化への「兆し」と捉え、「KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]」として、とりまとめています。
https://www.kansai.meti.go.jp/1-9chushoresearch/jirei/jireitop.html