世界初!醤油発酵技術をカカオに応用「チョコレート第5次革命カカオ醤」(湯浅醤油有限会社)
醤油発祥の町、和歌山県湯浅町で世界初の調味料「カカオ醤」を開発、栄えある「第9回ものづくり日本大賞 経済産業大臣賞」を受賞したのが、湯浅醤油有限会社の新古さん、湯川さんです。
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醤油発祥の町“湯浅”から新たな可能性への挑戦
和歌山県湯浅町は醤油発祥の地と言われており、その歴史は鎌倉時代まで遡ります。そんな伝統の地で新たなイノベーションが起こりました。
湯浅醤油有限会社は、創業140年以上の歴史を持つ丸新本家株式会社の醤油部門を、5代目となる代表取締役の新古敏朗さんが平成14年に法人化してスタートしました。国産素材にこだわり、大きな木樽で長期熟成させる伝統製法で作る醤油に定評があり、大手醤油会社が見学に訪れるほどです。
新古さんは醤油作りに従事する中で、発酵技術の追求と醤油の特徴を活用した製品開発、また、醤油蔵の見学を軸とした観光事業の展開などを行ってきました。背景には、醤油発祥の地としての「湯浅醤油のブランド化」と「地域振興」を進めたいという思いがあります。そのような日々の挑戦の中で生まれたのが、世界初の調味料「カカオ醤」です。
【画像】昔ながらの杉樽で醤油づくり
チョコレート第5次革命 新たな調味料「カカオ醤」
きっかけは、新古さんがイタリアに行った際、カカオをつぶしてチョコレートを作った体験です。今までチョコレートに関心はありませんでしたが、発酵食品であることに興味を持ち、「カカオ豆で醤油を仕込んだらどうなるのだろう?」との遊び心を持ちました。醤油作りに熱心な新古さんは、早速2017年にベトナムのカカオの産地をめぐり、自分のアイデアを試してみることにしました。
「チョコレート第5次革命」ともいえるカカオ醤の製法はユニークです。使うのは廃棄されていたカカオの未熟豆です。上質で酸味のあるカカオ豆よりも、酸味が少ないため捨てられていた未熟豆がむしろ醤油のうまみに合うことを発見しました。
また、検討段階の当初はカカオ豆を麹で分解することに注力していましたが、フランスのショコラティエの技術により、焙煎することでカカオ独特の香りが増幅されることを発見。瓶内熟成させることで商品化に成功しました。
使用する醤油も、どの醤油でもよいわけではありません。
いろいろな醤油を試したところ、伝統の製法金山寺味噌のたまり醤油が合うことに気づき、今までにない画期的な調味料を生み出したのです。
さらに、カカオ醤で使用したカカオ豆の農園は障害者雇用に配慮された施設ともなり、様々な観点からSDGsの精神が込められた研究です。
世界と醤油をつなげる
「カカオ醤」はまったく新しい調味料です。発売当初は、「そんなに売れるとは思わなかった」と新古代表は話しますが、2020年の発売と同時に3,000個が完売。すでに海外販売も進めています。発売当初から大きな注目を集め、現在では国内外でジャンルを問わず様々な料理人などが注目しています。
またカカオ醤をきっかけに、ヨーロッパを中心とした海外で醤油そのものへの認知度や関心度アップにもつながっています。伝統的な産業でも、新たな技術の探求や斬新な発想をもち、思いもしない材料との組み合わせなどにより、産業としての新展開が期待できる見本事例といえるのではないでしょうか。
KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]
経済産業省近畿経済産業局は、近畿2府5県(福井県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県)における経済産業省を代表する機関であり、経済産業施策の総合的な窓口機関です。年間 1,000 件以上にも及ぶ企業訪問を通じて、未来に向けて躍動する関西企業を発掘し、そんな企業の挑戦を、より良い未来を見据えた変化への「兆し」と捉え、「KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]」として、とりまとめています。
2023年4月に発表された「KIZASHI vol.22『第9回 ものづくり日本大賞編』」では、2023年1月に決定した第9回ものづくり日本大賞受賞者のうち、近畿ブロックから受賞した10案件の取組をご紹介しています。
今回の受賞者の皆様も、それぞれの技術力を存分に活かしながら、その新規性と革新性、豊かな発想力によって、「ものづくり」を通じた様々な社会課題の解決に貢献されている、そんな姿を特集しました。
https://www.kansai.meti.go.jp/1-9chushoresearch/jirei/jirei22.html