オートファジーで健康寿命の延伸をめざす(株式会社AutoPhagyGO)
細胞の健康を維持する役割を担う「オートファジー」の研究・製品への応用で、健康長寿社会の実現を目指すのが、株式会社AutoPhagyGOです。
産業界との橋渡しによりオートファジーの社会実装を
株式会社AutoPhagyGOは、細胞の新陳代謝と有害物除去の作用を起こすオートファジーの研究成果が産業界で活用されるために設立された、大学発ベンチャーです。
各企業との共同研究で得られた知見・ノウハウをベースにオープンイノベーションプラットフォームを提供。企業間のコラボマッチングを促進し、得た資金を大学の基礎・臨床研究に循環させる、新しいタイプのベンチャーです。
平均寿命は世界でも有数である日本。「健康で長生き」を実現することが強く望まれるなか、同社はこの社会課題解決を目指します。
今回は、同社の代表取締役社長である石堂美和子さんにお話を伺いました。
オートファジーとは
私たち人間は37兆個の細胞からできています。オートファジーとは、細胞の輸送・分解・リサイクルを行う仕組みを指し、細胞の健康を維持する役割を担います。
マウスでの動物実験で、オートファジーを止めると、なんと1日で死亡するという結果も出ているとのこと。また、歳を取ると様々な病気になりやすくなりますが、アルツハイマー病や神経変性疾患などの加齢性疾患についても、一部は老化によるオートファジーの機能低下が原因ではないかと推測されています。
我が国では、東京工業大学の大隅良典教授がそれまで未解明であったオートファジーの分子機構を明らかにし、人間の生理的意義についても解明しました。その研究の功績が認められ、2016年にノーベル生理学賞・医学賞を受賞しています。
オートファジー活性の測定から関連する製品・サービスの展開まで
オートファジー活性の測定は技術的にも難易度が高く、ヒトの各個人において正確に測定できる方法は、現状では存在しません。
しかし同社の技術顧問であり、大隅研究室での助教授の経験もある大阪大学の吉森保栄誉教授がオートファジーの測定方法の研究を行っており、同社では世界最高水準の測定の実施が可能です。
この技術を用いて、パートナー企業との共同開発でオートファジー活性製品・サービスを展開しています。
また同社は、UHA味覚糖との共同開発で、オートファジー活性に効果のある食品素材を利用したサプリメントを販売しています。
同社が中心となって紡ぐオープンイノベーション
「現状では、オートファジーの存在はまだまだ世間に浸透していない」と石堂さんは言います。
我が国においても研究・技術は先行していますが、アメリカ・中国と比べ特許取得数は10分の1に停滞しています。
アメリカでは創薬ベンチャーなども次々と立ち上がっており、我が国においても研究と産業界とのつなぎ合わせが特に重要課題となっています。
そうした現状を踏まえ、吉森教授を中心に日本オートファジーコンソーシアムを立ち上げ、事業化を目的として、アカデミア・製薬会社・食品会社など様々なステークホルダーが参画しています。
これまで計2回のシンポジウムを開催しており、産業界、大学関係者からの参加者は500名を超えました。
今後は、業種・業態の垣根を越え、参画者の裾野を広げていく予定です。
健康寿命を延ばすことで豊かな老後を
石堂さんは、生き生きとした老後生活を送り、苦しむことがなく生涯を終える人々が増えるよう同社の取組を推進していきたいと語ります。
現在研究を進めている中で、オートファジー活性に効果のある素材も見つかっています。
今後はそれらを自社素材として特許を取得し、機能性食品も視野に入れて世に出していく予定です。
KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]
経済産業省近畿経済産業局は、近畿2府5県(福井県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県)における経済産業省を代表する機関であり、経済産業施策の総合的な窓口機関です。
年間 1,000 件以上にも及ぶ企業訪問を通じて、未来に向けて躍動する関西企業を発掘し、そんな企業の挑戦を、より良い未来を見据えた変化への「兆し」と捉え、「KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]」として、とりまとめています。
2022年12月に発表された「KIZASHI vol.19 『社会課題の解決とともに成長する企業 – シリーズ:2025の先に待つ未来を描く 02 -』」では、未来に向けて、日々企業の成長、企業の変革に向けて挑戦を続ける企業を当局1年目の職員が先輩職員と訪問し、経営者の方などにインタビューを重ねその魅力を特集しました。