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幅広い温度で利用可能なLIBが切り開く新たな用途展開(株式会社アイ・エレクトロライト)

株式会社アイ・エレクトロライトは、関西大学の石川教授が「イオン液体電池」の技術を核に2014年4月に立ち上げた大学発ベンチャーです。

株式会社アイ・エレクトロライト  
設立 2014年
資本金 6,210万円
従業員数 10名
所在地 大阪府吹田市山手町3丁目3番35号 関西大学イノベーション創生センター309号室
#広温度対応リチウムイオン電池 #関西大学発ベンチャー #宇宙産業

イオン液体電池の技術を活かした関西大学発ベンチャー 

株式会社アイ・エレクトロライトは、関西大学の石川正司教授が「イオン液体電池」の技術を核に2014年4月に立ち上げた大学発ベンチャーです。

イオン液体電池は、通常の電解液の代わりに「イオン液体」を用いることで揮発成分・引火成分を一切排除し、宇宙用電池で不可欠であった堅牢な外装を不要とし、かつ軽量で薄くコンパクトな蓄電池で、石川教授が2005年に初めて作動を確認しました。

同社が開発したイオン液体電池

2014年6月には宇宙用イオン液体電池として開発に成功し、人工衛星「ほどよし3号」に搭載されるなど、超高真空の宇宙空間でも安定作動することが確認され、宇宙用電池として利用可能な電池であることも実証されました。

従来のリチウムイオンバッテリー(LIB)では実現が難しい状況においても電力供給可能な状態を作り出している同社の代表、阿部一雄さんにお話を伺いました。

蓄電池技術で世界を持続可能にする

リチウムイオン電池は、スマートフォンやタブレット、ウェアラブルデバイス、ノートパソコンなど小型・薄型化する電子機器をはじめ、EV(電気自動車)・HEV(ハイブリッド自動車)の車載用バッテリー、住宅用の太陽光発電・燃料電池の蓄電システムなどに幅広く使われています。

一方でリチウムイオン電池の最高許容周囲温度は「45度」と規定されていることから、使用できる範囲の制限や、その温度帯に収まる設備等が必要となってしまいます。

しかし、同社技術を活かしたイオン液体電池は、消防法でも難燃剤とされているイオン液体を電解液の代替とするためマイナス40度~80度の環境下でも作動可能で、2022年7月に打ち上げられたJAXA観測ロケットにも採用されました。宇宙空間では、これまでの電池に必要であった堅牢な外装が不要になり、地球周回軌道上での充放電試験に世界で初めて成功しました。

JAXA SS-520 5号機 ロケットに搭載(2018年)

用途可能性の広がりで実現を目指す量産化

イオン液体はこれまで粘度が高く、十分な充放電性能を得られず、実用化は難しいとされていました。しかし、石川教授が確立したイオン液体電解液であれば 、高い電池特性を引き出すことが可能であり、今後の様々な用途可能性が広がります。

過酷な宇宙環境への応用のみならず、地上での用途展開を見越して、これまで温度面等で活用が見送られていたと想定される市場の開拓(潜在顧客の発掘)に取り組み、規模の経済を働かせることで課題解決を目指しています。

今後、同社のこうした活動が、現在のLIBでは活用が想定できないさらなる潜在顧客の発掘と国内電池産業の発展に繋がることが期待されます。

研究イメージ

KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]

経済産業省近畿経済産業局は、近畿2府5県(福井県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県)における経済産業省を代表する機関であり、経済産業施策の総合的な窓口機関です。年間 1,000 件以上にも及ぶ企業訪問を通じて、未来に向けて躍動する関西企業を発掘し、そんな企業の挑戦を、より良い未来を見据えた変化への「兆し」と捉え、「KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]」として、とりまとめています。

2022年12月に発表された「KIZASHI vol.19 『社会課題解決とともに成長する企業 – シリーズ:2025の先に待つ未来を描く 02 -』」では、社会の様々な課題を解決し、人々が快適に暮らすことができる社会を創ろうと奮闘する企業を特集しています。