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デジタル化で両立を目指す「おしゃれ」と「SDGs」(株式会社島精機製作所×KDDI株式会社)

XRとは、AR(拡張現実)、VR(仮想現実)、MR(複合現実)といった、現実の物理空間と仮想空間を融合させて、新たな体験を創造する先端技術の総称です。

近年では、社会課題や地域課題を保有する企業等がXRコンテンツ制作企業とタッグを組み、試行錯誤しながらも解決に導こうとする動きが見られます。

本記事では、アパレルの環境問題の解決に向けたシステム開発事例をご紹介します。


アパレル業はSDGsに逆行?

1,200トン。
全国で1日あたりゴミとして出される衣類の量です。
毎日大型トラック約120台分が焼却・埋め立て処分されています。
年間では45万トンにもなります。
(環境省_サステナブルファッションより)

ファストファッションは流行をいち早く取り入れて大量生産し、短いスパンで大量に販売します。
店頭では、客のニーズに応えるためサイズや色も豊富な品ぞろえが要求されています。

生産時に売れ行きの予測が立てにくいため、余剰在庫が発生し、売れ残りの大量廃棄へと繋がっています。
また、商品の企画・デザインの段階でも多数のサンプルを試作し、生地の無駄が大量に発生することも多くあります。

アパレルはSDGsに逆行している」。
ニット編み機の大手メーカー、島精機製作所では危機感を抱いていました。

株式会社島精機製作所
設立  :1962年
資本金 :148億5,980万円
従業員数:1,381名(連結従業員数 1,819名)
業種  :コンピュータ横編機、デザインシステム、自動裁断機、
     手袋靴下編機などの開発、製造、販売
所在地 :和歌山市坂田85番地
#ファッション #環境問題 #XRマネキン

和歌山から世界のブランドに 支持されるモノづくり

和歌山県に本社がある島精機製作所の主力製品、「ホールガーメント® 横編機」は、立体的にニット製品を編み上げることができ、縫製が必要ありません。

通常、アパレル製品は四角い生地から前身頃・後身頃・袖といったパーツを切り取り、それらを縫い合わせて完成させます。
この際カットロスとなる余りの生地30パーセントが無駄となりますが、ホールガーメント®は一着丸ごとすべてのパーツがつながった状態で編み上がるため、ロスが発生しません。

ホールガーメント®
最終製品の状態で編みあがる

デザイン性の高さも評価を得て、ユニクロやグッチ、ルイ・ヴィトンなど、ファストファッションからハイブランドまで、多種多様なブランドから支持されています。

デザインシステムの採用でサンプル廃棄の軽減

そんな同社の環境問題への意識はバーチャルの活用へと広がっています。

同社では、実物サンプルを作らずに画面上でデザイン検討ができるデザインソフトウェア「APEXFiz®」(エイペックス フィズ)の提供を開始しました。

実物と見間違えるほどの高精細なシミュレーション画像を作成することができ、かつ、カラーや柄も瞬時に変更できるため、大量のサンプルを作る必要がなくなりました。

3Dバーチャルも作成できるAPEXFiz®


一方、KDDIでは、XRの知見をもとに、先進的な体験の企画・制作・社会実装に至るまでをひとつのチームとして担うクリエイティブチーム「au VISION STUDIO」の主導により、アパレル業界における商品の企画・デザイン時のサンプル制作をDX化し、「資源の無駄がないモノづくり」の支援に取り組んでいました。

KDDI株式会社
設立  :1984年
資本金 :141,852百万円
従業員数:49,659名(連結ベース)
業種  :電気通信業
所在地 :東京都千代田区飯田橋3丁目10番10号 ガーデンエアタワー
#ファッション #環境問題 #XRマネキン

その中で開発されたのがアパレル販売向け高精細XRマネキンです。
XRマネキンを活用すれば、店舗のサイネージ(液晶画面)や顧客のスマートフォンなどのさまざまなデバイスで、商品を360度好きな角度から確認可能です。

実物の商品がなくても目の前にあるように実感できるため、店頭で多種多様の色、サイズを置くことなく販売することができ、在庫ロスの削減・環境負荷の軽減につながります。

ARでマネキンを目の前に表示

KDDI「XRマネキン」との融合

ともにアパレルの環境問題を解決しようとする島精機製作所とKDDIが、島精機製作所の創立60周年を機にタッグを組み、両社のデジタル技術を連携させた販促パッケージ「XRマネキン for APEXFiz」を開発しました。

APEXFiz®でデザインしたバーチャルサンプルを利用して、デジタルカタログやVRショールーム、スマートグラスでの投影等が可能となりました。
店頭のサイネージでバーチャルサンプルを表示すれば在庫を持たずに消費者への商品提案ができます。

スマートグラスによるバーチャル展示

ホールガーメント®で生産する編み機用データに変換できるため、タイムラグが発生することなく、売れるものだけを生産することも可能です。

資源だけでなく、時間の短縮になり、消費者の要望を取りこぼすこともありません。

ファッションの明るい未来へ

「暗い世の中でもファッション業界は着る人を幸せにする、ワクワクするような洋服を作らなければならない。」

ファッションはサステナブルに逆行するものであってはなりません。
両社の強い意志が、ファッションの未来に彩りを与え続けます。


KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]

経済産業省近畿経済産業局は、近畿2府5県(福井県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県)における経済産業省を代表する機関であり、経済産業施策の総合的な窓口機関です。年間 1,000 件以上にも及ぶ企業訪問を通じて、未来に向けて躍動する関西企業を発掘し、そんな企業の挑戦を、より良い未来を見据えた変化への「兆し」と捉え、「KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]」として、とりまとめています。

「KIZASHI」
https://www.kansai.meti.go.jp/1-9chushoresearch/jirei/jireitop.html