DXを活用してプラ容器製造のSDGsを実現したRoll to IML生産システム(サンシード株式会社)
約10年の試行錯誤を経て”昔ながらの町工場”から”製造業が行うDX(※)のロールモデル”と言っても過言でないほどの転換を遂げ、生産性の向上と環境負荷低減の両立を実現する「Roll to IML生産システム」の開発により、栄えある「第9回ものづくり日本大賞 優秀賞」を受賞したのが、サンシード株式会社の浅野さん、木村さん、原さん、高橋さん、森田さん、松田さん、山本さんの7名です。
業界トップクラスの食品包装容器メーカー
サンシード株式会社は、業界トップクラスのシェアを誇る食品包装容器をはじめ、医療機器や衛生用品等の容器を製造する企業です。
食品包装容器の一般的な工法である「IML方式」では、予め印刷加工された一枚のラベルを金型内に装填し、容器の射出成型と同時にラベルを装着します。その場合、印刷メーカーから納品されるフィルムロールに対して以下の前工程が必要です。
(1)スリット、(2)分割、(3)カット、(4)積み重ね
しかし同社特許技術の「Roll to IMLシステム」では、フィルムロールをそのまま機械に装着するだけで、その後は機械がラベルを自動連続的にカットしてそのまま金型内に装填することから、上記の前工程が不要となるのです。
この技術により同社は生産性の飛躍的な向上と大幅な工数削減を実現し、これが競争力の源泉となっています。
プラスチック廃棄物削減によるSDGsへの貢献
一般的なIML方式では、ラベルを積み重ねた状態からはがし取って金型に装填するため、一度に2枚を取ってしまうリスクがあり、このため一定の厚みが必要です。
しかし同社のRoll to IML方式では、そもそもフィルムを重ねる必要がないため、2枚取りのリスクはありません。これにより、フィルムの厚みを従来の3分の1程度(約20μm)まで薄くすることができ、2,000トンもの廃棄物量の削減に繋がりました。
生産性の向上と環境負荷の低減を同時に実現した実績は、業界に広く知れわたることとなりました。
町工場から高付加価値スマートファクトリーへの劇的進化
同社は Roll to IML方式を主軸に、自動分析、自動復旧、予兆分析において独自のDX手法を磨いてきました。不良率の削減と短納期化が軌道に乗ることで捻出された原資により、さらなるDX投資が促進されます。
そして、現場オペレーターは創造的業務に注力しDX技術をさらに高めていきます。これこそ製造業が行うDXのロールモデルとなるべき、好循環の姿と言えますが、これらを実現した背景は大きく二つあります。
一つは、同社の事業特性です。食料品や医療品業界では、安全性・追跡可能性が高く求められます。顧客ニーズに真摯に応えるものづくりの姿勢が現在の姿を作りました。
もう一つは開発型企業への転換です。同社の発祥は東大阪にある昔ながらの町工場でした。最先端技術が集まるけいはんな学研都市へ本社を移転したのは2013年のこと 。その後、工学系学生の積極採用や技術部の新設など抜本的な組織改革を進めてきました。新社屋は、業務、集中、コミュニケーション、リラックスをテーマとした人間を起点とする設計であり、未来のものづくりを感じさせます。
今回の受賞は、廃棄物削減や、DX、働き方改革など、社会が直面する課題解決に向け様々な示唆を与えるものとなるでしょう。中小製造業の未来を牽引するサンシード株式会社の今後の展開から目が離せません。
KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]
経済産業省近畿経済産業局は、近畿2府5県(福井県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県)における経済産業省を代表する機関であり、経済産業施策の総合的な窓口機関です。年間 1,000 件以上にも及ぶ企業訪問を通じて、未来に向けて躍動する関西企業を発掘し、そんな企業の挑戦を、より良い未来を見据えた変化への「兆し」と捉え、「KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]」として、とりまとめています。
2023年4月に発表された「KIZASHI vol.22『第9回 ものづくり日本大賞編』」では、2023年1月に決定した第9回ものづくり日本大賞受賞者のうち、近畿ブロックから受賞した10案件の取組をご紹介しています。
今回の受賞者の皆様も、それぞれの技術力を存分に活かしながら、その新規性と革新性、豊かな発想力によって、「ものづくり」を通じた様々な社会課題の解決に貢献されている、そんな姿を特集しました。
https://www.kansai.meti.go.jp/1-9chushoresearch/jirei/jirei22.html