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100年を紡ぐ伝統。未来へ織り成す挑戦。(株式会社松川レピヤン)

株式会社松川レピヤンは、高度な技術によって繊細なデザインや1つ1つ異なる柄の織ネーム(ネームタグ)・お守り袋・ワッペンなどの織物を製造している会社です。
大正時代に創業し、2025年3月で創業100周年を迎える“越前織”の老舗企業
その伝統的な技術と新たな挑戦に迫ります。

株式会社松川レピヤン
創業  :1925年
資本金 :1,000万円
従業員数:95人
事業内容:・織ネーム、織ワッペン、越前織お守り袋、織ストラップ等の
      製造販売
     ・ファクトリーブランド「レピヤンリボン」の製造販売
     ・越前織のワッペンブランド「フワッペン」の製造販売
     ・リボンとスイーツのお店 「RIBBON'S CAFE」の運営
所在地 :福井県坂井市丸岡町舛田20-5-1
#地域未来牽引企業 #越前織 #社員ファースト


高い技術で織り上げる松川レピヤンの“織物”

同社は1925年に福井県坂井市丸岡町で創業しました。
丸岡町は古くから“越前織”が栄えてきた町で、織物の糸屋や問屋が集まっており、織ネーム生産量では日本一です。

その中でトップクラスのシェアを誇る同社は、主に2種類の織り方で様々な織物を生産しています。

1つ目は「レピア織」。
長い槍(レピア)の様な物で緯糸(ヨコイト)を運んで織り上げるところから由来し、高速で幅広の織物を織ることができるほか、多くの色を使用して様々な表現が可能です。
1985年に登場したばかりのレピア織機を、三代目社長松川敏雄さんの強い想いでヨーロッパから導入して以来、レピア織は同社の主力技術となりました。
同社を代表する織ネームも、このレピア織で生産されています。

ちなみに同社の名前である“レピヤン”とは、織機部品の“レピア”と、織り糸を意味する英語“ヤーン”を掛け合わせたものです。

レピア織機

2つ目は「シャトル織」。
緯糸(ヨコイト)のシャトル(※)が左右に行って帰りながら織るシャトル織では、端がほつれにくい耳付きの織物ができるというところや、天然繊維など素材を選ばない点、昔ながらの風合いを生かしたデザインが可能な点が特徴です。
現在では、レピア織・シャトル織それぞれの特徴を生かしながらニーズに応じた色々な種類の商品を製造しています。

(※)シャトル
緯糸(ヨコイト)を巻きつけた管(こくだ・小管)を入れて経糸(タテイト)の間に滑りこませて織りこむ為の道具。

シャトル織機

高い技術力や表現力の高さも同社の強みの1つです。

極細の糸を使って細かく織り上げることで繊細な柄や文字等を表現することができる「超高密度織」は、生地の密度が高いため肌触りが良く、高級感のある綺麗な仕上がりが可能です。

また、QRコードを織物で表現する「QRコード織」は、同社が編み出した日本で初めての技術(特許取得済み)で、生地に直接織り込むことで、QRコードが剥がれたり読み取れなくなったりというリスクを減らすことができます。

ほかにも大枠のデザインはそのままに数字部分のみ変更可能なナンバリングネーム技術など、クオリティ・対応力の高さが評価されて多くの大手企業や有名ブランドに同社の技術が使われています。
このように、伝統技術を生かしながら現代に合ったアイデアで様々な織物製品を提案しています。

超高密度織とQRコード織

創業当時から変わらないモノ

「レピヤンの良さは昔も今も変わらない」そう語るのは、創業100周年目である2025年、社長に就任予定の松川晃久さんです。
晃久さんは現社長の長男で、現在は営業企画次長を務めています。
次男の享正さんは工場長として製品作りを、三男の昌玄さんはエンジニアとして機械のオペレーションを担い、兄弟3人が同社の屋台骨として活躍しています。

また、兄弟の母親は“レピヤン全員の母”として経理や人事を務め、家族全員で同社を支えています。
おじいさん(二代目社長)の家の後ろがすぐ工場だったこともあり、晃久さんは幼い頃から織物に触れて育ちました。

直接両親から「家業を継げ」と言われたことはないものの、おじいさんっ子だった晃久さんは、物心が付いたときから後継ぎの意識はあったそうです。
しかし、家業を継ぐ前に「25歳までは夢を追いかけたい」という想いから、一度は音楽の世界へ進み、メジャーデビューまで果たしました。
そして、26歳での結婚を機に家業を継ぐ決心をして、同社へ入社しました。

幼少期の社員数は4人、晃久さんの入社時には25人になって、今では約100人となった同社ですが、昔と今との同社の変化に晃久さんは「幼い頃と今とのギャップは逆にあまりない。会社は大きくなったが、雰囲気は当時のアットホームさが今でも暖かく残ったまま大きくなったような感じだ。」と言います。
その背景には何があるのでしょうか。

営業企画次長 松川晃久さん

“社員ファースト”が結び繋ぐ暖かな社風

同社は情報発信にも積極的です。
HPやSNSはもちろん、ブログやスタッフ紹介ページなどで会社の日常などを自然体で発信しています。
社内報の役割を兼ねてInstagramで情報を発信したり、部活動として自主的にTikTokで同社の魅力が伝わるコンテンツを投稿する若手社員もいたりします。

こういった情報発信はもちろん「外向け」の広報という意味もありますが、どちらかと言うと「内向け」の意味の方が強い、と晃久さんは言います。
社員はもちろんのこと、その家族や関係者などにも見てもらうことで同社の良さや雰囲気を知ってもらう、理解を得る、そして好きになってもらう、同社は家族や周りの理解が何よりも大切と考えています。

社内向けの広報誌「れぴやん通信」

また、同社は「福井でいちばん大きなおうち」をコンセプトに、2022年に本社を大幅リニューアルしました。
内装などはデザイン部長を筆頭に社員の方々自らが設計事務所と打ち合わせを重ね、自分たちが働きたいと思う空間を自分たちの手で作り上げました。

1階エントランスには織ネームのギャラリーとして訪れた人を迎えられるようにし、2階はキッチン付きカフェスペースを設けて社員がリラックスできるようにして、外部のイベントも開催できるようになっています。

(左) 新本社
(右) 本社2階キッチン付きカフェスペース

このように、社員や会社の周りの方々との風通しの良さや、社員を何よりも優先する“社員ファースト”な姿勢が、結果的に社員自身の自己肯定感の向上や同社で働くことへの誇りに繋がり、創業当時から続くアットホームさのベースとなっているのです。

社員の成長を支えながら、織物にとらわれない挑戦を

これまで織物といったアパレル業界をメインとしていた同社は、その技術を生かしてインテリア業界やホテル業界など、既存の枠を超えてより幅広いことに挑戦していきます。

そのためにも「会社を大きくするのではなく、質を高めていきたい」と晃久さんは言い、「これまでよりも“人への投資”、特に“人の育成への投資”に力を入れていきたい。社員の成長を会社全体で支えることこそが松川レピヤンの成長に繋がっていく。」と語ります。

研修など様々な経験や、チャレンジと成功体験を積み重ね、モチベーションやエネルギーへ一歩ずつ繋げていく──「本当に織物屋だったのか…?と自分で思い返す日が来ると思う」──昔からの良さが今も変わらないように、これからも「松川レピヤンの魅力」を残しながら、過去にとらわれない挑戦を同社は今後も続けていきます。


KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]

経済産業省近畿経済産業局は、近畿2府5県(福井県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県)における経済産業省を代表する機関であり、経済産業施策の総合的な窓口機関です。年間 1,000 件以上にも及ぶ企業訪問を通じて、未来に向けて躍動する関西企業を発掘し、そんな企業の挑戦を、より良い未来を見据えた変化への「兆し」と捉え、「KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]」として、とりまとめています。

[KIZASHI]
https://www.kansai.meti.go.jp/1-9chushoresearch/jirei/jireitop.html


地域未来牽引企業

地域内外の取引実態や雇用・売上高を勘案し、地域経済への影響力が大きく、成長性が見込まれるとともに、地域経済のバリューチェーンの中心的な担い手、および担い手候補である企業を、経済産業省では「地域未来牽引企業」として選定しています。

[地域未来牽引企業]
https://www.meti.go.jp/policy/sme_chiiki/chiiki_kenin_kigyou/index.html