アイデアを技術で“カタチ”に~大きな器が未来を創りだす~(多田プラスチック工業株式会社)
多田プラスチック工業株式会社は、創業100年を超えるプラスチック成型技術が強みのものづくり企業です。
創業100年 多方面で重宝されるプラスチック成形技術
ゴムの一種であるエボナイトを原料とする印鑑母材の製造・販売から始まり、戦後、全国に先駆けてプラスチックの射出成形に着手しました。
大手家電メーカーの冷蔵庫のドアの製造等に携わり、40年以上縁の下の力持ちとして家電業界を支えてきました。
現在はさらに販路を拡大し、自動車・住宅設備・医療機器など幅広い業界で同社の技術が活用されています。
地球の未来を思いやるサステナブルなカトラリー
そんな同社が現在力を入れている事業の一つが、コンビニや大手カフェチェーンで導入されている、生分解性(*) カトラリーです。
素材となるプラスチックは、100%植物由来のバイオポリマーGreen Planet®です。これは株式会社カネカが開発した素材であり、海洋保全の観点で現在、注目を集めています。
海中など微生物が存在する環境下であれば分解が進み、海洋汚染防止に繋がります。
この素材を使用してカトラリーを量産できる技術を持ったメーカーをカネカ社が探す中、白羽の矢が立ったのが、プラスチック射出成形歴70年以上の同社でした。
長年培った高い技術力やスピーディな対応、他事業を通じて確立したクリーンルームがカネカ社の目にとまりました。
カメラとコンピューターを活用した自動検品システムを構築し、人の手をほとんど介在することなく製造から梱包までを行う製造ラインを組み立てることで、カトラリーの量産を実現させました。
同社の高い技術力と対応力は、 SDGsの達成にも一役買っています。
アイデアを技術で“カタチ”にする組織風土
顧客への高い対応力を強みとする同社が、重視している価値観は「顧客からの要望に対してアイデアを技術で“カタチ”にする為、チャレンジし続けることです。」と取締役の前田さんたちは言います。
同社を支える柱の一つであるマイクロポンプ事業の成り立ちを辿ると、同社の社風が垣間見られます。
当時給湯ポットの部品製造と組立を請け負っていましたが、仕様が手動から自動に変わった際、基幹部品であるポンプが顧客に支給されることになり、悔しさを覚えました。
プラスチック成形とは全く異なる分野でありましたが、自社を成長させるチャンスと捉えすぐにポンプの開発を始め、結果、採用にまで至りました。
失敗の連続だったそうですが、打率は低くてもよい、失敗は当然として取り組み続け、ポンプ事業は事業の柱になるまで成長を遂げました。
この許容度の大きい組織風土は、社内から日々様々な挑戦が生まれる土壌になっています。
十数年前に社員発案を基に数人小規模な体制でスタートしたDX推進体制は、プログラムを内製化するなど高度な水準まで成長し、前述のカトラリー製造等の肝である品質保証を支える、同社の新たな武器になっています。
磨かれた新たな武器で挑戦を続ける
同社は売上の多くを占めていた顧客の国内拠点撤退の影響で、今後の展開に悩んだ時期もありました。
しかし、高い技術力はもちろん、失敗を受容し、挑戦し続ける組織文化の中で磨かれた、品質保証やスピーディな対応力が今や同社の大きな強みとなり、新たな顧客を獲得する受け皿になっています。
今後は「クリーン」「精密」を武器に、より付加価値の高いものを製造したい、と前田さん。
「アイデアを技術でカタチにする」の社訓のもと、同社は挑戦を続けます。
KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]
経済産業省近畿経済産業局は、近畿2府5県(福井県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県)における経済産業省を代表する機関であり、経済産業施策の総合的な窓口機関です。年間 1,000 件以上にも及ぶ企業訪問を通じて、未来に向けて躍動する関西企業を発掘し、そんな企業の挑戦を、より良い未来を見据えた変化への「兆し」と捉え、「KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]」として、とりまとめています。