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創るのは、患者様と医療者に優しいシステム(株式会社リモハブ)

経済産業省近畿経済産業局は、近畿2府5県(福井県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県)における経済産業省を代表する機関であり、経済産業施策の総合的な窓口機関です。
年間 1,000 件以上にも及ぶ企業訪問を通じて、未来に向けて躍動する関西企業を発掘し、そんな企業の挑戦を、より良い未来を見据えた変化への「兆し」と捉え、「KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]」として、とりまとめています。

2022年10月に発表された「KIZASHI vol.18 『8 future technologies in Kansai – シリーズ:2025の先に待つ未来を描く 01 -』」では、非線形的な未来を掲げ、様々なアイデアとテクノロジーの力で未来を描き、実現に向けて挑戦する変革者を特集しています。

その中でも、患者様と医療関係者に優しいシステムというコンセプトのもと、オンライン管理型心臓リハビリシステムの開発を行うスタートアップ、株式会社リモハブをご紹介します。

株式会社リモハブ
設立 2017年3月
資本金 1億円
従業員数 20名
所在地 大阪府吹田市江坂町1-23-19 米澤ビル第5江坂4F
#医師発スタートアップ #遠隔医療をデザイン
#QOLが向上する心臓リハビリを

心臓リハビリの実施率向上を目指してオンライン管理システムを開発

心臓リハビリは、心疾患の基礎にある動脈硬化や心不全の病態の進行を抑制・軽減させるという意味で、とても重要な役割をもちます。
一方で、通院負荷が大きく、外来通院での実施率は7%とかなり低い状況です。

この現状を改善しようと考えたのが、循環器専門医である谷口達典さんです。
オンライン管理型心臓リハビリシステムを実装するため2017年に株式会社リモハブを創業しました。

近年は、新型コロナウイルスの感染拡大による遠隔診療のニーズの高まりをうけ、患者さんからも医療者からも同社への需要が高まっています。

自宅で安全に適切な負荷で行えるかどうか

通常は病院で医療従事者の監督のもと行う心臓リハビリを自宅で行うためには、心臓リハビリに適した医療機器と遠隔での管理を可能とするシステムの開発が必要です。

こうしたニーズに応えるべくリモハブは、オンライン管理型心臓リハビリテーション医療機器(通称:RH-01)を開発しました。

オンライン管理型心臓リハビリテーション医療機器(RH-01)の概要

鍵は有識者とのネットワーク

リモハブの開発するオンライン管理型心臓リハビリシステムは、医療機関と患者宅を繋ぐアプリ・心電計・エクササイズバイクから成る医療機器となっています。

「創業した当時は、ビジネスやものづくりのことは門外漢であり苦労した。」と谷口さんは語ります。
しかし、起業前に参加した、医療機器イノベーションの牽引人材育成プログラム「ジャパンバイオデザインプログラム((一社)日本バイオデザイン学会)」で得たネットワークがひとつのターニングポイントでした。
ビジネスパートナーや機器設計の外注先企業等を獲得し、当初のビジョンを形にすることができたのです。

医師発スタートアップのEXIT戦略(M&A)

このリハビリシステムは、主に高齢者を中心に、医療機関からのレンタルで、退院時に医師の判断・指導の元、自宅に一式設置するというビジネスモデルを想定して開発されました。
医療機関との連携は当然のことですが、日本全国への営業・販売網の獲得という課題に直面していました。

そんな中で遠隔モニタリング技術にエア・ウォーターグループが関心をもち、2022年3月にM&Aを実施。
リモハブは同グループの子会社となり、課題であった全国の営業・販売網の獲得に成功しました。

医療機器スタートアップのエコシステムの観点からも、創業当初より谷口さんは、スタートアップのEXITとして大企業によるM&Aを意識していたといいます。
「医師発・大学発のスタートアップの一つのモデルとなることで、日本における医療機器開発を推進したい」と谷口さんは熱く語ります。

心疾患にとどまらず、遠隔医療そのものをデザイン

2020年より、同社は大阪大学と共に、国内初のDTx(※1)領域の医師主導治験を実施するなど更なる躍進を続けています。

今後の課題は「医療者からの理解促進」。
そのためにシステムを利用する医療従事者への教育体制構築も重要だと考え、「関連する医療学会との連携も重要」と谷口さんは語ります。

将来的には、運動療法に加え、食事などの生活指導も含めた包括的な心臓リハビリを組み込んだシステム提供を目指していますが、これは同社が掲げる「遠隔医療のデザイン」の1歩目にすぎません。
認知症やうつ病といった他の疾患にも活用される未来の実現に向け同社の挑戦は続きます。

DTx(デジタルセラピューティクス)
医師の管理下で患者自身が使用する治療目的のプログラムであり、疾病の予防、診断、治療などの医療行為をデジタル技術を用いて支援、または実施するソフトウェア

http://www.aro.med.kyushu-u.ac.jp/pdf/center/documents/document20220304-1.pdf

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