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メタバースで「たき火」のような温かみを~離島の挑戦~(有限会社ケノヒ×NTT西日本)

XRとは、AR(拡張現実)、VR(仮想現実)、MR(複合現実)といった、現実の物理空間と仮想空間を融合させて、新たな体験を創造する先端技術の総称です。

近年では、社会課題や地域課題を保有する企業等がXRコンテンツ制作企業とタッグを組み、試行錯誤しながらも解決に導こうとする動きが見られます。

本記事では、XRの技術を駆使し、離島の地域活性化や魅力発信に挑戦する事例をご紹介します。


瀬戸内海に浮かぶ、小さくも魅力あふれる島

瀬戸内海に浮かぶ「男木島」。
「おぎしま」と読む周囲約4.7キロメートルの小さな島は、夕日に映え、水仙が咲き誇る美しい島です。
3年に1度開催されるアートフェスティバル「瀬戸内国際芸術祭」の会場にもなっています。

魅力的な島でありながら、人口減少が続き、現在の住民は150人ほどです。
いま、この小さな島では、最新のメタバース技術でバーチャルとリアルを融合した取組で関係人口(地域に深い情熱や愛着を持ち地域と多様に関わる人々)の創出・拡大を目指す取組が始まっています。

男木島の灯台。夕日が美しい。

島に活気を取り戻す

大阪市でデザイン・Web制作会社「有限会社ケノヒ」を経営する福井大和さんは男木島出身。

有限会社ケノヒ
設立  :2006年
資本金 :300万円
従業員数:4名
業種  :インターネット関連
所在地 :大阪市淀川区十三東1-17-13-403
#離島 #関係人口の創出 #メタバースはたき火

大学進学のタイミングで島を離れていましたが、久しぶりに瀬戸内国際芸術祭の地元でのボランティアのために帰省した際、小中学校が休校し子どもがいなくなった故郷を目の当たりにし、島の活気を取り戻すべく妻と子どもと家族3人で男木島への移住を決意しました。
2013年、島を離れて18年が経っていました。

まず、島に住んでいる人たちが率先し、島出身の人たちや瀬戸内国際芸樹際のアーティストやボランティア参加者たちの協力もあり、休校した小中学校を再開し、島で子育てができるように2016年には保育園も再開しました。
古い郵便局舎を買い取ってコワーキングスペースも作りました。

ただ、男木島には移住するための空き家が少なく、せっかく移住の希望者があってもUターンやIターン者の間で家の取り合いになることもありました。
また、移住に関心を持っていても高松港からフェリーで40分の距離は、気軽に行ける場所ではありませんでした。

メタバースでつながる

そんな中、地域活性化プロジェクトの実証エリアを探していたNTT西日本と縁があり、「TENGUN Ogijima プロジェクト」が発足しました。

NTT西日本
設立  :1999年
資本金 :3,120億円
従業員数:1,400名
業種  :電気通信業
所在地 :大阪市都島区東野田町4丁目15番82号
#離島 #関係人口の創出 #メタバースはたき火

NTT研究所による3D点群の技術を活用し、現地で計測した膨大な情報をもとに、没入感の高いフォトリアルなサイバー空間に男木島を再現。
「来たくても来られない人」、「帰省できない人」に島民感覚を味わってもらい、男木島との関係を繋ぎとめるため、メタバースで再現したのです。

リアルなのはビジュアルだけではなく、VRゴーグルのコントローラーを操作すると、波の振動や砂浜をざくざくと歩く感触も伝わります。
この感触は実際に歩いて計測したものです。
視覚だけではなく、聴覚や触覚でも男木島を体感できるのが魅力です。

3D点群から再構築したサイバー空間

観光振興に向けた共創

観光面でもメタバースを始めとする最新技術の活用を進めています。
男木島が人気ゲーム「サマーポケッツ リフレクションブルー(サマポケ)」の舞台となっていたことから、島の魅力をファンにPRするイベント「サマポケ祭り」を開催。

立体的なキャラクターと「相席気分」

ARグラスを用いたサマポケキャラクターによる島のスポット案内や、立体的なキャラクターと参加者が画面上で相席できるスポット、仮想現実(VR)での島内散歩など、島の魅力と人気アニメ、最新技術を活用したこのイベントは、200枚のチケットは完売、当日来場者は500名以上という大盛況でした。
福井さんは「今後も島外からの収益確保となるような事業にしたい」と意気込みます。

高校はなくても

福井さんが奮闘した学校再開ですが、高校はまだありません。
そこで、メタバースによる通信高校、角川ドワンゴ学N高等学校、S高等学校の高松キャンパスに通う高校生と連携し、男木島の地域課題を学ぶ企画を開始。
学生は実際に男木島を訪れ、メタバース活用による関係人口増大のアイデアを練っています。

N高等学校・S高等学校 高松キャンパス

人が自然と集まる温かい空間に

「人が集まり、普段言えないようなことも言えてしまうたき火のような、温かみの感じられるメタバース空間をつくりたい」と福井さんは語ります。

バーチャルな空間は福井さんの思いとNTTの技術により、温もりを感じる場所になろうとしています。


KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]

経済産業省近畿経済産業局は、近畿2府5県(福井県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県)における経済産業省を代表する機関であり、経済産業施策の総合的な窓口機関です。年間 1,000 件以上にも及ぶ企業訪問を通じて、未来に向けて躍動する関西企業を発掘し、そんな企業の挑戦を、より良い未来を見据えた変化への「兆し」と捉え、「KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]」として、とりまとめています。

「KIZASHI」
https://www.kansai.meti.go.jp/1-9chushoresearch/jirei/jireitop.html

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