見出し画像

彦根仏壇の技術で現代の新しい祈りのかたちを体現した「自由壇(フリーだん)」の開発(合同会社NANAPLUS)

古来より受け継がれる祈りの心と現代のライフスタイルを繋ぐ、新感覚の彦根仏壇「自由壇(フリーだん)」。今回は、その開発秘話を合同会社NANAPLUS伊藤さん、井上さん、吉田さんに伺いました。

合同会社NANAPLUS
設立 2020年
資本金 100万円
従業員数 3名
業種 自由壇・仏壇・仏具・位牌等の製造・販売
所在地 滋賀県彦根市新町39
#伝統的工芸品 #彦根仏壇 #滋賀県東北部工業技術センター #公設試との連携のもと躍進する企業



若い世代が伝統「彦根仏壇」に現代の感性を吹き込む 

彦根仏壇は仏壇業界で初めての「伝統的工芸品(※1)」です。

合同会社NANAPLUS(ナナプラス)は、彦根仏壇事業協同組合の有志組合員による「若い世代の感性に訴える製品づくり」を目指したプロジェクトをきっかけに設立されました。彦根仏壇の伝統技術を受け継ぎつつ、若い世代の感性に馴染む新たな仏壇の製作を目指しています。
社名のNANAPLUSは、分業制の彦根仏壇が「工部七職」と呼ばれる7つの製造工程で成立していることが由来です。

伝統的工芸品「彦根仏壇」

(※1)伝統的工芸品
特定の技術、技法、原材料で製作され、経済産業大臣の指定を受けた工芸品。
伝統工芸品には、その証としてシンボルマーク「伝統マーク」が貼付される。

伝統的工芸品 (METI/経済産業省)

彦根仏壇の伝統技術を活用し広い世代に受け入れられる「自由壇」の開発 

彦根仏壇事業協同組合のプロジェクトが実施した、若者の祈りや供養に対する考え方の調査では、若者も祈りを大切にするが、従来の仏壇は大型・高価で、手を出しづらいと感じていることが明らかになりました。

「時代と共に祈りのかたちが変わろうとも、祈りに込める気持ちや祈る時間は不変」と確信した同社は、古来より受け継がれる祈りの心と現代のライフスタイルを繋ぐ新感覚の彦根仏壇「自由壇(フリーだん)」の開発を決意。

彦根仏壇の伝統技術を受け継ぎながらも若い世代の感性に寄り添ったスタイリッシュでモダンな「自由壇」は、老若男女問わず、幅広い層から支持を受けています。

合同会社NANAPLUSが制作した「自由壇」

地域の代表的な工芸品が融合されたスタイリッシュでモダンなスタイル  

「自由壇」は当初、「現代の生活の中に取り入れやすいデザイン」重視で開発を進めました。しかし、趣向を凝らしたデザイン故に、仏壇本来の機能不足や価格設定等でデザイナーとの折り合いがつかず一度は断念しました。

その後、同社のデザイン担当顧問を務める、「伝統」と「モダンデザイン」双方に造詣の深い乾陽亮設計事務所の乾さんとの出会いにより、祈り、デザイン、価格等の課題をクリアした現在の「自由壇」の完成に至りました。

「自由壇」の素材には、滋賀県を想起する工芸品を採用したいとの思いから、伝統的工芸品「信楽焼」や観光スポットで有名な長浜市の「ガラス」等も採用しました。これには、各産地の実情に精通する滋賀県東北部工業技術センター(以下「同センター」)の職員が「自由壇」の企画に携わっていたため、産地間の連携が円滑に進み実現したという背景があります。

伝統的なものづくりで新しい祈りのかたちの提案へ挑戦を続ける

同社は誰でも気軽に「自由壇」の世界観を体験できるよう、滋賀県東北部工業技術センターからの提案で、「自由壇」を仮想体験できるアプリ「バーチャル自由壇」を提供しています。

アプリ上に同社の「自由壇」のラインナップを紹介し、製品毎に扉の開閉、ろうそくや線香に火をつけた雰囲気、余韻のある〝おりん〟の音色を体験することができます。

今回の開発を通じて、彦根仏壇の新たな可能性に手応えを感じた同社は、新たなコンセプトの仏壇等、毎年の新製品の開発を目標とするほか、博物館等向けの高級感のある展示台等、新たな用途開発にも取り組んでいます。その際には同センターが保有する3Dプリンターでの試作等への挑戦を考えています。

人々の祈りに対する潜在的なニーズを掴みつつ、職人のものづくりに向かう姿勢はそのままに、新しい「祈り」の体現や彦根仏壇の新たな価値の創出を進める同社の更なるチャレンジに期待が高まります。

公設試担当者のコメント
将来的に販売促進にIT の活用も検討いただくきっかけとして、「バーチャル仏壇」の提案及び作成を担当しました。
また、滋賀県内の産地の状況を熟知していることから、産地の製品が自由壇においてその特色等を十分に生かせるよう、産地間のコーディネータ役として、製作の検討段階から積極的に調整等を行い、滋賀県の工芸の技が集結した自由壇が実現しました。
(滋賀県東北部工業技術センター)


KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]

経済産業省近畿経済産業局は、近畿2府5県(福井県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県)における経済産業省を代表する機関であり、経済産業施策の総合的な窓口機関です。年間 1,000 件以上にも及ぶ企業訪問を通じて、未来に向けて躍動する関西企業を発掘し、そんな企業の挑戦を、より良い未来を見据えた変化への「兆し」と捉え、「KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]」として、とりまとめています。

2023年11月に発表された「KIZASHI vol.23『公設試との連携のもと躍進する企業』編」では、公設試の活用をきっかけに躍進している、食品加工や医療機器、金属加工など幅広い業種の中小企業等11社を特集しています。

事業環境の変化を捉え、多様な課題解決や新規事業の開拓に挑戦する11社の熱い想いと、またその想いを受け止め、悩みの本質を引き出して一緒に考え、実現に向けてサポートする公設試の姿を感じていただき、公設試をよく知らない、もしくは、敷居が高いと感じて利用を躊躇されている方に、ご覧いただければ幸いです。

https://www.kansai.meti.go.jp/1-9chushoresearch/jirei/jirei23.html

公設試のすすめ2023

近畿経済産業局では、当局管内に立地する工業系の公設試の紹介冊子「公設試のすすめ」を作成し、各公設試に設置してある多様な機器の説明、依頼試験や技術指導などの支援メニューの利用方法をわかりやすく紹介しております。

また、先端技術の活用を期待できる、産業技術総合研究所関西センターの紹介もございます。本ガイドブックを御覧いただきまして、一番近くで頼れる技術相談窓口「公設試」を積極的に気軽にご活用ください。