継続的な成長を通じて業界内随一の存在へ(株式会社神戸工業試験場)
「破壊試験」、その名の通り壊れてしまったら困る部品や製品に対して実際に負荷をかけ、破壊することでその部品や製品の強度を確かめる試験です。そんな試験業務を、国内では珍しい独立資本で第三者的な立場として、中立な試験を実施。結果、様々な業界の多くの企業から信頼を得ている企業が、株式会社神戸工業試験場です。
多くの顧客から信頼される企業へ
そんな試験サービスを事業とする株式会社神戸工業試験場の強みは、大きく分けて3つあります。
追跡可能性
中立性
信頼性
1つ目が「追跡可能性」です。同社の創業から蓄積されてきた幅広い技術を活用することで、実際の破壊試験に用いる試験片の加工・製造から検査後のレポートなどのアフターフォローまで、一貫したサービスを提供することができます。
2つ目が「中立性」です。冒頭で述べたように、同社は独立資本で経営を行っています。つまり、特定企業との利害関係に左右されない経営体制だからこそ、試験という中立で公平な評価を要するサービスを受注しても、顧客に忖度する必要が全くありません。結果として顧客からも絶大な信頼を得ています。
3つ目が「信頼性」です。保有している試験資格などの認定数が同業他社と比較しても非常に多く、試験サービス企業として高い評価を得ている点も同社の強みです。
これらの強みによって、同社にはあらゆる業種の研究開発案件が舞い込んできます。結果、同社は様々な企業の研究開発部門と密な接点を構築することにつながり、業界に先んじた情報収集と先行投資が出来るという、非常に希有なポジショニングを有することに貢献しています。
もっと活発な組織運営を実現するために
そんな同社が抱える直近の課題が「人材育成」です。キャリアの浅い社員でも働きやすく、挑戦しやすい環境をどのように創ることができるか、まさに試行錯誤のまっただ中です。
例えば、若手職員へのミッション付与による自発性の育成をはじめ、定期的に新入社員を採用するサイクルを活かして意図的にベテラン社員による教育機会をつくってみたり、そういった活動を通じて自分が行っている仕事そのものの意義の見直しなど、社員ひとりひとりの意識改革も行っています。
また、社員への積極的な権限移譲を通じ各々の裁量でプロジェクトを進めていくことで、社員それぞれのやりがい醸成へと繋がっています。
「同社の企業価値を更に高めていくためには、社員ひとりひとりのレベルアップが欠かせない。」そう語る鶴井副社長は、引き続き、挑戦と守りを両立する(両利きの経営)を実践する組織づくりと、そのための人への投資をより一層続けていく予定です。
コロナによる影響を足かけに新たな取り組みへ
同社では400名もの社員が日々安全に直結する仕事に取り組んでいます。「そんな社員を守っていくためにも、攻めと守りの経営が不可欠です。」と鶴井副社長はそう語りながら、社内で攻めの経営の旗を振っています。
そんな同社が新たな一手として見込むのが「水素ビジネス」です。先ほど述べた同社のポジションを活かした情報収集力で新たな事業領域を探索していたところ、2015年頃から大学や大手企業との関係性の中で水素分野への注目が上がっていき、同社も参入に向けたリサーチを進めていました。
そんな中で突如起きた新型コロナの影響は大きく、同社にとっても他人事ではない状況でしたが、様々な産業分野、多様な顧客に対応できるポートフォリオを組んでいたため、こういった社会情勢の変化にも柔軟に大きな打撃を受けず対応することができたようです。
更にそこで止まるだけでなく、コロナ禍で出来た時間を活用し新事業展開について攻めるのが同社の強み。改めて化石燃料市場の縮小及び水素関連市場の拡大をリサーチを通じて予測し、この機を逃さないためにも、新型コロナの影響で新設された「事業再構築補助金」を活用し、「高圧水素環境の試験」新サービスとして開始するための投資に取りかかりました。
鶴井副社長は、「このコロナ禍で生まれた余白は、自社の経営を立ち止まって見直すことができる大きな機会となった。また、事業再構築補助金は水素領域の新たな新ビジネスの創出の後押しになったのみならず、それを支える人材のやりがい創出に向けた福利厚生の拡充など、会社変革に向けた大きな事業投資につながった」と、この補助金が同社の企業変革全体への起爆剤になったと語ります。
業界内で随一のポジションを確立するために
そんな挑戦を続ける同社が掲げるビジョンは3つあります。
1つ目が「短期的な成長力の強化」です。更なる成長のために、自社の活動範囲を既存の常識にとらわれずに常に検討し、M&Aや企業連携等の選択肢も加味しながら新市場開拓を狙います。
2つ目が、「中長期的な成長の布石を打つ」ことです。生産性向上や新技術開発などの自社の中長期的な成長投資を今後も続けていき、東アジア1の研究支援企業を目指します。
3つ目が「経営基盤の整備」です。社員が一層能力を発揮出来る環境整備を不断に努めていきます。
このように、株式会社神戸工業試験場では、業界に先んじた情報収集、自社事業の分析、新事業に対応するための設備投資・人材育成等を通して、益々競争が過酷となるビジネス環境でも継続的な成長を行い、業界内で随一のポジションを確立すると共に、2031年に売上高60億円を目標に掲げます。
そんな同社の時代の先端を走る姿はますます、関西、そして日本を元気づけてくれるに違いありません。
KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]
経済産業省近畿経済産業局は、近畿2府5県(福井県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県)における経済産業省を代表する機関であり、経済産業施策の総合的な窓口機関です。年間 1,000 件以上にも及ぶ企業訪問を通じて、未来に向けて躍動する関西企業を発掘し、そんな企業の挑戦を、より良い未来を見据えた変化への「兆し」と捉え、「KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]」として、とりまとめています。
2023年2月に発表された「KIZASHI vol.21 『事業再構築で動き出すそれぞれの未来』」では、「事業再構築補助金」を活用しながらコロナという大きな危機を超えるため、ありたい姿と未来に向けて挑戦する中小企業9社にインタビューを実施し、補助金だけではない成長に向けたヒントを特集しています。
https://www.kansai.meti.go.jp/1-9chushoresearch/jirei/jirei21.html