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安全を創り出す「現場力」、未来を拓く「人財力」(株式会社ミヤジマ)

1929年の創業以来、「鍛造」という仕事の中でも、アプセット鍛造を強みに世の中の貢献する会社が、株式会社ミヤジマです。『「頭」の偏差値よりも、「心」の偏差値』を大切にし、社員全員が「ミヤジマの強み」と言い切る同社の新しい挑戦を追いました。

株式会社ミヤジマ
設立 1929年
資本金 1,000万円
従業員数 48名
業種 鍛造、金属熱処理、機械加工
所在地 滋賀県犬上郡多賀町多賀1008番地
#アプセット鍛造 #現場力 #人財力

独自の鍛造方式で躍動するアプセット鍛造専門メーカー

日本には鍛造会社が約350あると言われていますが、このアプセット鍛造(※)を専門とする会社は多くありません。アプセット鍛造は、軸部とツバ部が一体でメタルフロー(金属の繊維のような内部組織)が連続しているため、建設機械の駆動軸など強度が求められる部品に用いられます。

アプセット鍛造
鍛造(金属を加熱して柔らかくし、それを叩いて形を造る加工方法)における成型方法の一つ。一般的に、素材(丸棒)の先端または中間を加熱し、軸方向に据え込んで部分成形する工法。

アプセット鍛造とは(アプセット鍛造.com)

また、丸棒からの「削り出し」と比較して、材料費及び加工時間を大幅に節減できる点もメリットです。独自のミヤジマ式弁棒鍛造方式(特許:第209965)と組み合わせた製品展開が同社の技術的強みです。

アプセット鍛造品

安全に妥協を許さない「現場力」

ミヤジマのアイデンティティの一つは、「商品の絶対的な安全」と「それを支える現場力」です。同社は、自動車や鉄道車両、建設機械、工作機械などの産業機械に使われるシャフト(軸)部品が主力です。強い力を伝えたり、人の命を運ぶための重要部品なので、高い品質と耐久性が求められます。

「常に要求されるのは間違いのないものづくり」と宮嶋会長は云います。安全に対しては、一切の妥協を許しません。
その背景には1990年代に同社が重大クレームを発生させた苦い経験がありました。その際、顧客から派遣された品質保証の専門家と共に必死に改善に取り組んだことが、今の会社の原型となりました。

2000年には関西の100名以下の中小鍛造企業として初めてISO9002(品質マネジメントシステム)を取得しました。以来、標準化やトレーサビリティの確保に努めながら強みの「現場力」が養われ、業界を牽引してきました。

ISO9002取得当時の新聞紙面(2000年)

変わっていく経営環境

コロナ前の製造業では、顧客の海外進出に伴って現地生産移管が進み、日本国内での受注は減少し、同社も例外ではありませんでした。そんな苦しい最中に新型コロナは起きました。同社もその影響を受け当時の売上は約3割減少となりました。

「これを契機に、今後日本に残っていく産業を見定め挑戦する必要がある」そう考えた宮嶋会長は、世界の脱炭素社会の潮流、そして加速する電気自動車の開発に注目します。

「この大きな流れは鍛造部品の軽量化・高強度化の要求をきっと高める。つまり、極めて難易度の高い高付加価値製品として一定の地位を築くチャンスである」と宮嶋会長は意気込みます。

そんな思いで、同社が事業再構築事業を通じてチャレンジするのは「中空鍛造品」です。これに合わせ特殊機能を備えたプレス機を導入します。
併せてロボットを採用し、生産性向上とコスト競争力も高めます。高付加価値製品の投入によりミヤジマブランドを各業界に訴求していく構えです。

事業再構築を支える「人財力」浸透する「ミヤジマism」

ミヤジマを支えるもう一つのアイデンティティは「人財力」です。社員の平均年齢は36歳。一人一人が経営にコミットし、日々の仕事に向き合っています。役割が分担されがちな製造業ではなかなか見られない光景です。

これを実現するのは宮嶋会長の経営哲学、そして人生哲学(ミヤジマism)にあります。様々な視点で全社員の「自ら燃える力」を醸成し、全員がベクトルを合わせて経営に向き合う。これが社員の働きがいに繋がり、同社の経営力の源泉になっています。

そんな宮嶋会長は、59歳の若さで社長職を弟の宮嶋俊介氏にバトンタッチしています。「企業は公器。バトンを渡す側でなく、受ける側の状態で決める」という考えのもと計画的に事業承継がなされました。

新社長もその精神を引き継ぎます。
2023年のスローガンは「全員営業 全員成長」
会長・社長は口を揃えて云います。「鍛造技術は日本のものづくりの大切な宝。これを高め、残していくのが我々の使命。」

ミヤジマが現場力と人財力で挑む新たな一歩にますます期待が高まります。

人財力の源泉 ミヤジマism醸成の現場

KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]

経済産業省近畿経済産業局は、近畿2府5県(福井県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県)における経済産業省を代表する機関であり、経済産業施策の総合的な窓口機関です。年間 1,000 件以上にも及ぶ企業訪問を通じて、未来に向けて躍動する関西企業を発掘し、そんな企業の挑戦を、より良い未来を見据えた変化への「兆し」と捉え、「KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]」として、とりまとめています。

2023年2月に発表された「KIZASHI vol.21 『事業再構築で動き出すそれぞれの未来』」では、「事業再構築補助金」を活用しながらコロナという大きな危機を超えるため、ありたい姿と未来に向けて挑戦する中小企業9社にインタビューを実施し、補助金だけではない成長に向けたヒントを特集しています。

https://www.kansai.meti.go.jp/1-9chushoresearch/jirei/jirei21.html