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誰もが使えるAI readyな社会を目指して(株式会社tiwaki)

経済産業省近畿経済産業局は、近畿2府5県(福井県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県)における経済産業省を代表する機関であり、経済産業施策の総合的な窓口機関です。
年間 1,000 件以上にも及ぶ企業訪問を通じて、未来に向けて躍動する関西企業を発掘し、そんな企業の挑戦を、より良い未来を見据えた変化への「兆し」と捉え、「KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]」として、とりまとめています。

2022年10月に発表された「KIZASHI vol.18 『8 future technologies in Kansai – シリーズ:2025の先に待つ未来を描く 01 -』」では、非線形的な未来を掲げ、様々なアイデアとテクノロジーの力で未来を描き、実現に向けて挑戦する変革者を特集しています。

その中でも誰もが使えるAI readyな社会を目指し、画像認識技術をコアとしてエッジAI開発を進めるスタートアップ、株式会社tiwakiをご紹介します。

株式会社tiwaki
設立 2016年
資本金 8,299万円
従業員数 40名
所在地 滋賀県草津市野路東1-1-1 立命館大学BKCインキュベータ101
#エッジAI開発のプロ集団 #コアは画像認識技術  
#誰もが使えるAIこそ最先端

琵琶湖から湧く知恵で暮らしをよくするAI企業

IoT技術の進展は実社会のあらゆる事業・情報のデータ化を促しています。質の高いリアルデータの収集ためには、ネットワークの末端(エッジ)側の革新が重要であり、その中でも画像認識技術に可能性を見いだし、実用的なエッジAI(※1)を目指すスタートアップが滋賀県にある株式会社tiwakiです。

機械学習・画像認識のコア技術開発を専門とする同社は、国内でも有数の物体検出などの技術者を揃え、誰もが簡単にAIを活用し創り、共有できる、そんなAIエコシステムの形成を目指して技術開発に取り組んでいます。

画像認識技術をコアとしたAI開発のプロが参画

「人間の情報処理において、数ある中でも視覚情報が重要という研究結果もある。環境を認知・理解する画像認識が機械学習で最も大事だと思い没頭した」と、代表の阮 翔(げん・しょう)さんは語ります。

そんな画像認識技術は、大きく分けて「検出系」と「認証系」の2つの役割が存在しています。「検出系」は検出する対象そのものを探し出す技術で、「認証系」は検出したものを理解し判断する技術です。同社は、その役割に対応して、検出系の基盤技術として「Furinkazan」、認識系の基盤技術として「Onmyoji」という2つのコア技術を開発しました。

高精度の骨格検出・姿勢推定を可能にする「Furinkazan Pose」

エッジAIは実環境にある端末に組み込まれるため、その環境でも耐え、ストレスなく利用できるよう小型・高速・高精度という特性に極限までこだわる必要があります。同社はそのため、オープンソースではなく、全てオリジナルでAI開発を進めています。

従来のAI利用法とエッジAIの比較

これらを実現する同社の強みは、企業等で15年以上AI開発に取り組んできたAIエンジニア集団であることです。物理・機械・組込などメンバーに多様なバックグラウンドがあることも、自社の強みに拍車をかけており、ユーザーの様々なニーズに対しワンストップでエッジAIを提供できる国内に類を見ない会社として存在感を放っています。

受託開発をベースにビジネスを進めてきた同社ですが、近年は共同開発に事業の軸足を移しつつあります。クライアントも自動運転、MaaSなどのモビリティ関連、FA関連、リテール関連など幅広いジャンルから引き合いが来ている状態であり、また、国内のみならず、フランスやアメリカ、中国など海外の取引先も多く、今後も目が離せない企業です。

tiwakiが目指す未来、乗り越えるべき日本の課題

tiwakiが考える最先端。それは、ハイスペックなマシンで専門的な人だけが使えるAIではありません。「ロースペックなエッジAIでも、現場の環境で自由に誰でも使えるAI、そんな状況が私たちが考える最先端です」と代表の阮さんは語ります。
この思いにドライブを掛けていくために、技術者以外の人材、特にクライアントの立場になりながら技術提案ができるマーケティング人材の獲得を精力的に進めています。

ただ、AI readyな社会の実現に向けて、日本における懸念に阮さんは警鐘を鳴らしています。

1つは画像認識のビッグデータにおける「プライバシー規制」です。特にグレーゾーンが多く曖昧さが心理的抑止力になっているため、機械学習のための教師データ確保が難しくなっているようです。

そして、もう1つが、「技術に対する尊重と理解が乏しいこと」だ。日本の硬直した組織の中では、技術に対して自ら学びを求める上層部が少なくなっていて、最新技術の普及の障害になっている、と阮さんは指摘する。

数字とともに、技術への尊重と確かな目利き、そして翻訳を行える人材育成こそが、AI readyな社会の到来を早めるために重要な要素かもしれません。

エッジAI
エッジデバイス(末端装置)に搭載されたAIのこと。AIが持つ学習機能や分析機能がクラウド上ではなく、端末側に存在し、リアルタイム性向上、通信コスト低減、セキュリティ向上が見込まれる。