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地域と子供たちに示す「新しい製造業の姿」(三洋金属工業株式会社)

近所の子供たちから「鯉のぼりの会社」として知られている企業があります。大阪府門真市にある三洋金属工業株式会社です。

三洋金属工業株式会社
設立 1987年
資本金 1,000万円
従業員数 35名
業種 精密金属プレス加工
所在地 大阪府門真市柳田町17番7号
#新しい製造業の姿 #事業戦略 #社内食堂

他社ではできないものづくりにチャレンジする

同社は、精密金属プレス加工に強みをもち、自動車業界や電機関連業界に多くの取引先をもつ企業です。主な事業である量産部品向けの精密金属プレス・成型加工から、小ロットの試作なども手掛けています。

また、「提案型のものづくり」という強みは会社を大きく成長させるとともに、更なる成長を見据え、大学や企業と連携した研究開発にも注力するなど、これまでにないものづくりにも果敢に挑戦しています。

「地元企業として、国内生産にこだわり、常に将来を見据えたものづくりを目指す」ことが同社のスローガンです。

一瞬で変わってしまう世界

コロナ以前、同社がメインとする自動車市場は、中国や新興国の需要がけん引して当面は成長が続くと見込まれていました。

しかし、コロナ禍によって状況は一変しました。
世界のサプライチェーンが寸断され、自動車の生産台数が急激に低下し、瞬く間に同社の売上げにも影響を及ぼしました。

同社の下大川社長は「世の中が止まり暗闇の中だったが、現実を受け止め、できることから前進した」と振り返ります。
このときに事業再構築事業が動き出します。また、同じ時期、休校の子供たちに喜んでもらうため敷地玄関に「大きな鯉のぼり」を上げたといいます。それは同社にとって新たな挑戦への狼煙でもありました。

柔軟な事業戦略と強靭な生産体制

自動車業界にはもう一つ大きな波が押し寄せています。それは、ガソリン車から電気自動車へのシフトです。政府の「グリーン成長戦略」では2035年までに、新車販売で電動車100%を実現」と謳っています。

「もともと顧客との会話の中で、大きな波が来ることは把握しており、将来の経営課題として認識していました。しかし、コロナによって世界が極めて短期間で大きく変わることに直面したこと、経産省から「事業再構築補助金」が展開されたことで、今しかないと大きな後押しになった。」と下大川社長は挑戦を決めました。

同社の事業再構築事業は、「電気自動車用部品を見据えた市場展開」を狙います。同社の強みである量産段階で発揮される高精度なプレス・成型加工技術と、試作・設計段階で発揮される研究開発能力を生かした部品です。

さらに今回の取組を機に、金型を内製化できる体制づくりに舵を切ります。新たに狙う分野は、より高品質な金型が求められることになります。自社のさらなる付加価値向上(差別化)と、外部環境変化に影響を受けにくい強靭な生産体制を創り上げていく構えです。

同社の工場の様子

下大川社長が変革していく新しい製造業の姿

スーツ姿にこだわる下大川社長。モダンなオフィスに色彩豊かで整然とした製造現場。周りを見渡すと、いわゆる製造業の感じがしません。

中でも目を引くのは「社内食堂」です。野菜は自社農園で栽培したものを使っていて、週に1回、下大川社長自身が社員に腕を振るいます。今後は社内に保育機能を備えることも検討しており、「誰もが働きやすい環境づくり」を目指しています。

社内食堂の献立
同社の社内食堂の様子

これを推し進める下大川社長とはどんな人物なのでしょうか。最後に横顔についても触れてみたいと思います。

下大川社長は、学生時代はラガーマンで大学では寮長も務めました。当時、寮の洗濯機を二層式から全自動式に刷新しつつ、年間経費を3割以上削減した武勇伝をもちます。思い切った投資から全体最適を導き出す経営センスは、このときから光っていました。

三洋金属工業株式会社 代表取締役社長 下大川 丈晴さん

卒業後は金融機関に就職。1990年代末には事業承継を見据えて同社のに経営に加わり、2018年に社長に就任します。

若手の採用や社内環境の改善を進め、入社当時5~6名であった社員数は35名に拡大。職人気質の社風から顧客重視の姿勢に変革させていきました。
チームをまとめる能力、社員への気配り、成長にストイックな運営は、これまでの下大川社長の数々の経験によるものでしょう。

「社員の幸せが第一の目的。そのためには事業の継続発展、そして今回の事業再構築に繋がっていく。」と語ります。
「社員の幸せを軸に見据える姿は、新しい製造業の姿だ。ものづくりの世界で圧倒的に輝き、地域や、福祉、子供たちにとって存在感を示したい」と意気込みます。

製造業は事業再構築や人への投資、働き方改革が待ったなしの状況です。
コロナ禍であげた「鯉のぼり」の狼煙からはじまった新しい製造業のあり方、その変化への力強い兆しを見ることができました。


KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]

経済産業省近畿経済産業局は、近畿2府5県(福井県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県)における経済産業省を代表する機関であり、経済産業施策の総合的な窓口機関です。年間 1,000 件以上にも及ぶ企業訪問を通じて、未来に向けて躍動する関西企業を発掘し、そんな企業の挑戦を、より良い未来を見据えた変化への「兆し」と捉え、「KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]」として、とりまとめています。

2023年2月に発表された「KIZASHI vol.21 『事業再構築で動き出すそれぞれの未来』」では、「事業再構築補助金」を活用しながらコロナという大きな危機を超えるため、ありたい姿と未来に向けて挑戦する中小企業9社にインタビューを実施し、補助金だけではない成長に向けたヒントを特集しています。

https://www.kansai.meti.go.jp/1-9chushoresearch/jirei/jirei21.html

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