資源循環のループを、世界中で、簡単に(株式会社ヴァイオス)
経済産業省近畿経済産業局は、近畿2府5県(福井県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県)における経済産業省を代表する機関であり、経済産業施策の総合的な窓口機関です。
年間 1,000 件以上にも及ぶ企業訪問を通じて、未来に向けて躍動する関西企業を発掘し、そんな企業の挑戦を、より良い未来を見据えた変化への「兆し」と捉え、「KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]」として、とりまとめています。
2022年10月に発表された「KIZASHI vol.18 『8 future technologies in Kansai – シリーズ:2025の先に待つ未来を描く 01 -』」では、非線形的な未来を掲げ、様々なアイデアとテクノロジーの力で未来を描き、実現に向けて挑戦する変革者を特集しています。
その中でも、資源循環のループを、世界中で簡単に行える小型バイオマス発電装置を開発したのが、株式会社ヴァイオスです。
早い段階から「循環」に着目、事業転換へのドライブ
1967年に浄化槽(※1)の施工・維持管理をルーツとする同社はこれまで、和歌山県下の生活排水関連の仕事を主な業務として担っていましたが、下水道の整備が進むにつれ、いずれは浄化槽のニーズが減少する自社の将来に大きな懸念を抱えていました。
先代から事業を引き継いだ代表の吉村さんと、前職でメインバンクの融資担当として同社の第二創業(※2)の必要性を感じていた現財務担当役員の村岡さんは、同社のルーツを活かしながら、これからの未来に活かしていくために、「資源の循環」に着目しました。平成の半ばの時代、3R(※3)が注目を浴びる中でまだまだ考え方としては新しい「エコシステム」という考え方を選んだのです。
「そこに迷いはなかった」という吉村さんと村岡さんの2人は、会社として大切にしていきたい価値観と思いを込めて、「資源循環のループを構築し、地域と共に歩む」という理念を作ったのです。その理念を体言していくため、汚泥をリサイクルした高品質有機質肥料や、石炭の代替として期待が高かった固形燃料の開発などを進めていきました。
事業を進めていた2011年、東日本大震災が起こります。未曾有の危機に、エネルギー需要の逼迫を目にした同社はここで大きく方針を転換します。
エネルギー源の多様化・国の再生可能エネルギー普及政策もあって、バイオメタンの生成研究に着手しはじめます。
「小型」という切り口で2017年にオリジナルのメタンガス発電プラントを上市し、同社の事業は2度目の転換期を迎えました。
バイオマスのコンパクト化で市場の差別化に成功
同社が取り入れた、「MFS/ Methane fermentation system (メタン発酵システム)」は、汚泥や生ゴミ等から、メタンガスを生成する技術です。プラント内の設置した無酸素環境下で、微生物が生ゴミなどの有機物を分解するプロセスで発生するメタンガスを利用して発電などを行います。
従来より、バイオマス技術を用いたプラントは大手を中心に開発されていましたが、同社はこの発酵の過程に必要な設備を、1つのコンテナに納められるように小型化(投入される原料が1日50㎏~5t)そして付帯設備等もモジュール化(一体化)したプラントの開発に成功。そのまま海外にも輸出できる規格とすることで差別化に成功しました。
また、小型化プラントは先行する大手企業の開発するバイオマスプラントとの市場の棲み分けにもなるとともに、モジュール化は一般に受注から納品まで数年かかるところを、4カ月程度でのスピード納品を可能としました。
さらに、コロナ禍で加速させたプラントのDX化(遠隔監視システム)は大手通信会社とも協業するきっかけとなっています。
東日本大震災以降、新エネルギーに対する期待の一方、コスト面で導入に慎重だった企業だけでなく、 ODA(政府開発援助)による東南アジア諸国への普及にも同社のプラントは大きく貢献しています。
また、災害時でも活用可能な仕組みとして「ジャパン・レジリエンス・アワード2016((一社)レジリエンスジャパン推進協議会)」で優良賞を受賞するなど、注目を浴びる技術・仕組みです。
経営理念に乗せた明確な未来へのビジョン
ヴァイオスは、小型メタンガス発電プラントと並行して農業にも取り組み始めています。リサイクルした有機質肥料の有効活用を図るべく、農業生産法人㈱ヨシムラファームを設立。資源循環のループを生み出すために、現在では5ヘクタールの農地に自社のリサイクル肥料を活用して、50万個のにんにくを栽培し、地域創生に一役買っています。
第二創業時の年商3億円から10億円まで伸長させ、実質無借金経営となった現在、村岡さんは「あの頃は自社のスタッフにすら心配されるほどだった。」と語ります。
そんなヴァイオスの未来について、「将来的には、東南アジア地域で当社のプラントを核とした施設建設も視野に入れていきたい」と吉村さん、村岡さんは着々とプランを練っています。
「資源リサイクルのループを構築し地域とともに歩む」という経営理念のもと、未来に向けたサーキュラー・エコノミーを描き、そして実現に向け本気で挑む企業がここにあります。