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託された”たすき”を繋ぐ2代目社長~「社員を大切にする経営」と「競争に負けない現場改善」の好循環~(河村化工株式会社)

大阪府茨木市に本社を構える河村化工株式会社は、自動車用の樹脂製品を中心に製造しているTier1(※1)のプラスチックメーカーです。1959年の創業から、今年で65周年を迎えています。同社の強みは、設計から量産まで一貫した対応が可能であり、顧客からどのような形状の注文があったとしても、安価で良質な製品を速やかに提供できることにあります。こうした企業努力の積み重ねにより、大手自動車メーカーからの信頼を獲得した同社は、日本経済を牽引する自動車産業を支える企業として多くの製品を作り続けてきました。また、CN(※2)への対応や原材料価格の高騰など、自動車産業を取り巻く環境は日々めまぐるしく変化する中で、競争力を失うことなく今もなお成長を続けています。そんな同社の2代目社長である河村泰典さんにお話を伺いました。

(※1)Tier1(ティアワン)
一次請けという意味があり、完成品メーカーに直接部品を供給するメーカーのこと。
またTier1メーカーに部品を供給する企業のことをTier2(ティアツー)という。

(※2)CN
カーボンニュートラルの略称。二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出量を削減し、排出量から吸収・除去量を差し引いた結果、地球温暖化の原因となる温室効果ガスの排出をゼロにすることを目指す取組。

多様な樹脂製品を製造

河村化工株式会社
創業  :1959年
資本金 :4,000万円
従業員数:600名(2023年1月末時点)
業種  :自動車部品製造業
所在地 :本社 大阪府茨木市南耳原2丁目8番35号
#茨木市 #自動車樹脂部品 #競争力の源泉たる社員 #2代目社長の役割


社員を活かし、守るのは経営者の務め

多くの企業において人手不足が喫緊の課題となっていますが、河村さんは、人手不足に対する経営者の務めについて、次のように話します。「経営者は社員が集まらないことを嘆くのではなく、いのいちばんに考え抜き、悩み抜き、社員にとって魅力ある職場とは何かを考えるべきである。社員の生活を守るため、社員に「成長」と「社会への貢献」を実感してもらうために、デジタル・IT化をはじめとした効率化とともに、社員のモチベーション向上など何でもやるつもりでいる。現場の担当を叱りつけるようなことは絶対してはならない。」

このような河村さんの経営者としての熱い想いと、現場の社員の創意工夫・試行錯誤が上手くかみ合っている取組を大きく3つに分けて、これから紹介します。

経営者がリードする職場環境改善

1つ目が、経営者が率先して社員が働きやすい職場環境を作り上げることです。河村さんは現場を支える社員を何より大切に考えており、経営者として社員が働きやすい環境作りに率先して取り組んでいます。その一つが「ありがとうBOX」になります。これは、社員が他の社員に感謝を伝え、より多くの社員から感謝された社員を表彰するという取組です。ボックスは河村さん自らが製作し、イラストなども工夫しています。お互いに感謝の気持ちを伝え合う風土を作ることで、社員のモチベーション向上にも繋がっています。

多くの社員から感謝された社員を表彰。ありがとうが溢れる工場に

他にも、社内を見渡せば、河村さん自らがDIYで製作した椅子や机などを設置した打合せスペースや休憩場があります。これらは社員が快適に業務に従事できるようにという想いも踏まえて設計されています。また、熱中症対策として設置されている自動販売機は、社員から要望があり、直ぐに導入を決めたものです。こうした実行力により社員が言いたいことを言える職場環境となっています。このように、社員にとって心地の良い環境作りを河村さん自ら取り組んでいます。

河村さん自らがDIYで製作した椅子や机などを設けた休憩スペース

社員が会社、社会に貢献できるように

2つ目は社員の個性を活かすため、経営者と社員間のコミュニケーションをしっかり取りつつ、社員自ら仕事の意義を感じられるような取組を行っていることです。
河村さんは「社員のアイデアを引き出すのは経営者の責任。」と話します。そのため、河村さんは意見を否定することはしません。まずは意見を出した社員を褒める、認めるということを大事にし、その後に改善点を伝えています。工場の中では、真剣な眼差しで社員一人一人が作業を行っており、更に効率よく製造できないか工夫を続ける社員もいます。河村さんはこうした社員の姿をしっかりと見て「前よりもできることが増えている。素晴らしい!」といった積極的な声掛けを行います。このように、河村さんは、現場の社員がスキルを高め、創意工夫を通じた”カイゼン”に取り組むことを強く応援しています。

また、社員の社会への貢献を可視化する取組も行っています。今年度の会社の方針は「競争の中で生きている!選ばれる会社になる!」であり、社会からも選ばれる会社を目指しています。この会社の方針を細分化し、工場、部・課、個人まで落とし込み、明確な目標を設定しています。これにより個人の活動がどのように会社方針に繋がっているかが分かるようになり、成長へと繋がっていきます。また、現場である工場には至る所に工場の方針やKPI(重要業績評価指標)が掲示された管理板が設置されています。これにより、社員が常に方針や目標を確認することができる環境となっています。このように、経営者が会社の方針を示し、社員の取組が会社だけでなく、社会にどう貢献しているかを感じてもらうことが重要だと話します。

工場の方針とKPI(重要業績評価指標)を共有化

社員が自ら主体的に現場改善を続ける

3つ目にAI・ロボットの導入など、社員が創意工夫・試行錯誤し、作業効率向上を図る取組があります。「河村化工は自分たちのアイデアで、自分たちで材料を調達して、自分たちの技術で開発・生産設備を作り上げている。それにより、同社の強みである一気通貫生産をより進化させることができている。」と河村さんは語ります。実際にAIやロボットの導入は、社員が自発的に勉強や開発に取り組んでいます。

高い自社内製力

同社では、製品の検査行程にAIを導入しています。検査行程は、会社の中で付加価値が低いと考えており、人の関与を少しでも減らす省人化を進めています。その他にも、正しい作業手順を踏まないと次の作業に移れない監視装置の導入も行っています。こうした取組は、ヒューマンエラーは誰だってするという河村さんの考えから導入に至ったものです。こうした考えをもとに、より現場で使いやすいものになるよう社員が試行錯誤、創意工夫を重ねることで、作業効率向上に繋がる設備の導入に繋がっています。
このようにAIやロボットについても、全て社内で作り出されています。大きなコストで導入するのではなく、自ら知恵を出すことを重視していると河村さんは言います。

社員間で議論を突き詰め、自らの知恵で効率化を目指す

2代目社長の役割~継続と時代に応じた改変~

河村さんは2代目社長としての自身の役割について、次のように話します。「歴史を振り返れば、偉大な功績を残した人物が注目されることが多い。しかし、偉大な功績を残した人物が全てを成し遂げたわけではなく、先代が確かに土台をつくり、次代に引き継いだ部分が大きいのではないか。私は2代目だが、先代からの方針を踏まえ、時代に合わせて工夫をしながら、次の世代に託す2代目でいたい。」
河村さんは、先代から“たすき”をしっかりと受け取り、未来に託し、繋いでいきます。河村化工の挑戦は、まだまだ続いていきます。


KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]

近畿経済産業局では、年間1,000件以上にも及ぶ企業・団体を訪問し、企業の変革のための挑戦を捉え、2025・2030年の先、将来を見据えた変化の「兆」として紹介するために、「KIZASHI  [関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆(きざし)]」として、作成、公表しています。

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