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高性能ガス分離膜によるCO₂分離回収からGXを実現!(株式会社OOYOO)

世界に存在感を示す京大発スタートアップ

株式会社OOYOO(ウーユー)は、空気やその他のガスを分離・精製するガス分離膜の製造技術をコアに、世界のCO₂削減に貢献することを目指す京都大学発のスタートアップです。

同社は、2023年11月30日から2週間にわたりアラブ首長国連邦(UAE)で開催された「COP28」(※1)で、各国の革新的なテクノロジーを展示する「スタートアップ・ビレッジ」に日本から出展する10社に選ばれるなど、今注目度が高まっています。

※1:COP28
温室効果ガス(GHG)の排出削減目標や気候変動への対策について議論される「国連気候変動枠組条約締約国会議」の28回目の会議。
締約国198カ国などが参加し、日本からも岸田首相が首脳級会合に出席したほか、各省庁の閣僚や関係者が多数出席。

資源エネルギー庁HPより

社名の「OOYOO」は「社名に縛られることなく何でも発想できるよう、わざと意味のない言葉にした」とのことです。

今回は、京都大学高等研究院物質・細胞統合システム拠点(iCeMS)教授であり、同社の創設者でもあるシバニア・イーサンさんに話を伺いました。

出典:Science Portal「環境・エネルギー問題に挑む冒険的なアプローチ シバニア・イーサンさん【海を越えてきた研究者たち】」(2023.02.22)科学技術振興機構(JST)

株式会社OOYOO
設立  :2020年
資本金 :500万円
従業員数:14名
業種  :ガス分離技術の開発およびその製品の販売
所在地 :京都府京都市下京区中堂寺南町 134番地
#CO ₂分離膜 #小型でも高効率にCO ₂回収 #CaaS


コスト面に優れた膜分離でのCO₂分離回収をリード

CO₂分離回収は、カーボンニュートラルに不可欠な技術とされますが、一般的には大規模な設備が必要となりコストが高くなる等の課題があります。

そこで同社は、いくつかあるCO₂分離回収方法の中でも、独自の高性能 CO₂ / N₂分離膜の技術を活用し、パートナー企業と省スペースかつ省エネルギーなCO₂ 分離回収装置の開発等に取り組んでいます。

OOYOO社の分離膜

この技術では、既存技術の3倍の速さで処理を行うことができるため、装置を小型化しても高効率なCO₂分離回収が可能となる点が最大の強みです。
また、GI基金(※2)事業にも採択され、工場排ガスからのCO₂分離回収を大手化学メーカーと共同で取り組んでいます。

※2:GI基金
グリーンイノベーション基金の略。
脱炭素に向けた研究開発や実証等を後押しする国の基金。

このように、オープンイノベーションにも積極的で、分離膜の原料から回収システムといったCO₂分離回収のサプライチェーンを構築するべく、多くのパートナー企業との連携を深めており、TOPPANホールディングス株式会社とCO₂分離膜の開発・量産に向けた基本合意契約を締結するなど、新たな技術の社会実装に向けた挑戦を続けています。

広がりを見せるCO₂の利用用途

回収したCO₂は、ミネラル化することで炭酸カルシムパウダーとして紙や化粧品等に再利用できます。
また、野菜の生育促進に利用することも可能です。

ビニールハウスでの野菜栽培では、生育を促し収穫量を増やすために、通常、ガス会社からCO₂を購入しハウス内のCO₂濃度を高めていますが、回収したCO₂に置き換えることでCO₂削減と同時にコスト削減も見込めます。

なお、化石燃料由来CO₂の回収はネットゼロ(排出量から吸収量や除去量を差し引いて正味ゼロ)にとどまりますが、発酵ガス等のバイオマス由来CO₂の回収はカーボンネガティブ(吸収量が排出量を上回る状態)になるため、ゆくゆくはカーボンクレジット(※3)の創出による収益化も期待できます。

※3:カーボンクレジット
CO₂排出削減効果を証券のように取引する制度。

このカーボンネガティブの取組についても、食品メーカー等の多くの企業からの引き合いがあり、実証を進めているところです。

今後は、中小企業向けのリーズナブルな膜分離装置から、CO₂とH₂(水素)を合成した未来の脱炭素燃料である合成燃料(e-fuel)(※4)の製造まで、環境分野の幅広い用途で貢献したい考えを持っています。

※4:合成燃料
CO₂とH₂(水素)を合成して製造され “人工的な原油”とも言われる燃料。
特に再生可能エネルギー由来の水素を用いた場合はe-fuelと呼ばれる。

ビジネスモデル(上)とCO₂分離モジュール(下)

CO₂回収が当たり前になる世の中の実現に貢献

同社は、CO₂を分離・回収する新たなソリューションサービスをCaaS(Carbon capture as a Service)と呼び、今後、社会的な広がりが見込まれるCO₂回収ニーズに対応していくことを目指しています。
将来的には回収したCO₂を地中に貯留するCCS(※5)のプロジェクトにも参画する意向です。

※5:CCS
Carbon dioxide Capture and Storageの略。
二酸化炭素を回収・貯留すること。

同社によると、日本のCO₂排出量を仮に分離膜で回収するとすれば、琵琶湖の約半分の面積に相当するおよそ3億㎡の膜が必要になるといいます。
これをCO₂回収にかかる市場規模と捉えた場合、その大きさが想像できるように、より多くの企業がCaaSに携わり様々なアプローチで課題解決を競う時代がそこまで来ていると時流の先を読んでいます。

同社のようなスタートアップがこうした新たな技術開発に挑戦し、より安価で効率的かつ大規模にCO₂回収が可能となれば、社会にもたらすインパクトは大きいものになるでしょう。

COP28 スタートアップ・ビレッジにて

KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]

経済産業省近畿経済産業局は、近畿2府5県(福井県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県)における経済産業省を代表する機関であり、経済産業施策の総合的な窓口機関です。年間 1,000 件以上にも及ぶ企業訪問を通じて、未来に向けて躍動する関西企業を発掘し、そんな企業の挑戦を、より良い未来を見据えた変化への「兆し」と捉え、「KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]」として、とりまとめています。

https://www.kansai.meti.go.jp/1-9chushoresearch/jirei/jireitop.html