若手の「気づき」を養い、顧客志向の真骨頂へ(二九精密機械工業株式会社)
今回取材したのは、精密金属加工部品の制作をはじめ世界初のβチタンパイプ(※1)の商品化など幅広い分野で活躍する京都のものづくり企業、二九精密機械工業株式会社です。
京都で育ったものづくり企業
同社は、戦前の1917年に創業し、今日まで100年以上の歴史をもっています。
ステンレスや特殊合金、チタンなどの加工の難しい材料をつかった精密機械加工部品の製作をはじめ、医療や半導体分野にも進出し、近年では、世界で初めてβチタンパイプ(※1)の商品化に成功するなど、高い技術力を武器に、今後も幅広い分野での活躍が期待されています。
企業理念「4M+S=29ING」に込めた思い
同社の理念「4M+S=29ING(※2)」の「4M」とは、同社がものづくりに欠かせない基本要素と捉える「人・素材・機械・方法」を指します。
ここで「人」を真っ先に据えるのは、「組織は人が中心となって動かすものであり、それゆえに『人は宝』、『人財』である」との考えが根底にあるためです。
今回は、創業当初から「ものづくりは人づくりから」という考え方を受け継ぎ、守ってきた同社の「人への投資」に迫ります。
スピード感と確実性のある人材育成への挑戦
「人への投資」をはじめたきっかけは、高精度・難加工技術を要する同社の特性にありました。
創業した当時は「先輩・上司の背中を見て育て!」というのが社会の風潮でした。
しかし、難度の高い業務を行っていく場合、ベテラン社員が会社の成長とともに培ってきた熟練の技のすべてを、目で見て学ぶだけで受け継ぐには時間がかかります。
そこでスピード感をもって確実に一人前に育ってもらうため、社内の体系的な研修制度を整える必要があると考えました。
将来を担う若手育成に注力
そこで同社は、新人や若手リーダーの人材育成に力を入れています。
まずは新人研修について、特に意識しているのは同期の「横のつながり」です。
入社後3ヶ月間は、毎週、全新人が一堂に会する場として研修を行い、座学やグループディスカッションを通して言葉を交わし、笑顔を交え「同期の輪」を構築します。
研修の目的は、社内で仲間を作ることを通じて、会社に対する帰属意識を持ってもらうことです。
新人研修を通して、業務や社員に接することで会社の文化・風土を理解してもらうことに努めています。
続いて「リーダー人材育成」は、若手とベテランの世代間ギャップを繋ぐ中堅層の育成を目指して開始されした。
2021年頃から若手のリーダー人材に必要な要素を体系的に打ち出し、研修を実施してきました。
代表的なのが、2022年度の取り組み「4つの芽(左下図)」や2023年度の取り組み「2つの若葉(右下図)」です。
「2つの若葉」では、「部下を見守る力」と「オンリーワンの技術開発力」の2つに焦点を当て、知見や経験を持つ大学教授や大手企業OBを講師に迎えて研修を進めています。
これらの人材育成の効果は、社員からふと感じられる「自信」に加え、売上や工場の生産性向上など、目に見える数字でも現れています。
「気づき」を与えるという難題
「人材育成における課題は、社員に『気づき』を促すことだった」と、社長の二九さんはおっしゃいます。
同社の強みは「お客様に良い提案ができること」です。
顧客の相談にワンストップで応え、製品を届ける同社では、顧客の真の要望に気づかなければなりません。
その「気づき」を得るためには、「考える」ことを大事にしてほしいという二九さんの思いがあります。
その実現に向け、自ら考え、気づき、改善する力を育てることができる研修を、現在も、日々試行錯誤しています。
人材育成の目指す先
同社の今後の目標は「顧客志向」の真髄を考えられる人材を育てることです。
そのためには、経営層が責任をもって社員に対し、顧客ニーズの本質を満たす提案力と、自社の技術を顧客ニーズに結びつける発想力を養う必要があります。
「やりたいことは限りない!人の力は無限大!」。
その言葉からは、同社で働く社員ひとりひとりへの期待があふれていました。
KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]
経済産業省近畿経済産業局は、近畿2府5県(福井県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県)における経済産業省を代表する機関であり、経済産業施策の総合的な窓口機関です。年間 1,000 件以上にも及ぶ企業訪問を通じて、未来に向けて躍動する関西企業を発掘し、そんな企業の挑戦を、より良い未来を見据えた変化への「兆し」と捉え、「KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]」として、とりまとめています。