見出し画像

レーザ技術を活用した最新の金属の表面改質技術(富士高周波工業株式会社)

富士高周波工業株式会社は、金属熱処理加工のプロ集団です。
創業以来65年磨き続ける高周波焼入れ(※1)技術と近年新たに獲得したレーザ熱処理加工技術を、同社が保有する日本トップクラスの加工設備に適用し、微細な加工から大型の加工まで、多様な金属の部分熱処理加工を行っています。

(※1)高周波焼入れ
耐摩耗性、疲れ強さ、じん性(粘り強さ)の向上を目的とした鋼の表面硬化法のひとつ。
・表面硬さが高く、優れた耐摩耗性、疲れ強さが得られる
・表面圧縮残留応力が大きく、優れた疲れ強さが得られる
・組織が微細で、優れた延性、じん性、疲れ強さが得られる
・脱炭がほとんど見られず、疲れ強さの低下や不安定化の心配が少ない
等の特徴がある。

https://www.fuji-koushuha.co.jp/technology/high-frequency

富士高周波工業株式会社
設立   1958年
資本金  1800万円
従業員数 24名
業種   金属熱処理加工
所在地  堺市堺区遠里小野町2丁3番15号
#レーザ加工 、#人材確保、#大阪産業技術研究所和泉センター #公設試との連携のもと躍進する企業



レーザ熱処理加工のパイオニア

同社は2008年に国内で先駆けてレーザ焼入れ(※2)設備を導入しました。
ピンポイントで加熱するレーザ熱処理は、歪みの低減のほか、冷却工程で水や油等を使用しないため廃液処理が不要で、環境負荷が少ない点が特長です。
高品質・低価格で提供する同社の受託加工は2万5千アイテム、100社もの試作・開発実績を有しています。

(※2)レーザ焼入れ
レーザ発振器から照射されたレーザ光がファイバー、光学系を介して、ワークに照射された部分のみ加熱される方法。
高周波と同じく耐摩耗性、疲れ強さ、じん性の向上を目的とした鋼の表面硬化法として活用される。
・硬化必要部位以外への熱影響が少ない為、歪が最小限に抑えられる
・冷却の際に水、油を必要としない
・消費電力が非常に少ない
等の特徴がある。

https://www.fuji-koushuha.co.jp/technology/laser-hardening

研究発表会への参加をきっかけに、レーザ熱処理設備を導入

同社代表取締役の後藤さんは就任前の数年間、高周波熱処理加工と並ぶ新事業の開拓を模索していました。
そんな折に興味本位で参加した、大阪府立産業技術総合研究所(現:地方独立行政法人大阪産業技術研究所和泉センター)(以下、同センター)主催の研究発表会で、レーザ焼入れに目が留まりました。

後藤さんは事業との関連性や将来性を感じ、同センター主催の研修への参加等を通じて発表者の職員との交流を重ねました。
更に独自の調査もふまえて有望分野と確信し、その1年後、高額のレーザ焼入れ設備の導入に踏み切りました。

産学官連携の共同研究で、同社のレーザ熱処理加工技術の礎を確立

同設備の導入後、経済産業省のサポイン事業(※3)に採択され、同センター及び公立大学法人滋賀県立大学との共同研究で、従来のセラミックスコーティングとレーザ熱処理を、工程の逆転により基材の硬さや密着強度を向上させ、高精度で低価格かつ環境に優しい画期的な熱処理技術を確立しました。

(※3)サポイン事業
中小企業が大学・公設試等の研究機関等と連携して行う研究開発、試作品開発及び販路開拓への取組を支援する事業。
令和4年度より、「Go-Tech事業(成長型中小企業等研究開発支援事業)」に統合

https://www.chusho.meti.go.jp/sapoin/index.php/about/

次に後藤さんの提案から、同センターと共同で、既存のレーザクラッディング(※4)加工で発生する、製品への加熱から生じる歪みの問題を解決するため、ワークに与える熱影響を最小化するハイスピードのレーザクラッディング技術を開発しました。

(※4)レーザクラッディング
レーザを熱源として、粉末やワイヤーを溶融させ、基材表面に同種または、異種材を肉盛り、被膜する技術。

同社HPより

開発において、同社保有設備の性能では納得できる成果が出ないため、更に高額なレーザ設備の導入に踏み切りました。
その結果、共同研究でハイスピードレーザクラッディング技術の確立に成功し、大幅な歪み軽減を可能にしました。

この判断は、多様かつ難易度の高い熱処理加工のワンストップ対応を可能にし、コスト及び技術面の競争力強化につながりました。
これに伴い顧客は地元中心から全国へと拡大し、業種も多様化したことで、顧客のニーズや課題に触れる機会の増加から提案力が向上し、更なる受注増加の好循環を生み、レーザ熱処理加工は高周波熱処理加工と並ぶ事業の柱に成長しました。

変化や課題を前向きに捉え、時代の一歩先を恐れずに進む

同社は、国内同業者が熱処理加工技術の向上により競争力を高めるため、自社技術のノウハウや加工事例等を自社サイト上に掲載するなど技術の普及に取り組んでいます。
この一環で、国内企業とのパートナーシップ契約により海外事業所への技術提供を開始しました。
更に事業再構築補助金を活用し、国内に先駆けて材料に金属ワイヤーを使用する金属3Dプリンターを導入し、大学との共同研究を進めるなど、熱処理技術の高みを目指しています。

また、社会情勢の変化を敏感に捉え、熱処理加工で起業に関心のある学生を採用し新規事業を担当させ、また、高齢の従業員には無理のない勤務形態での働き方を検討しています。

このような既存概念にとらわれない柔軟な働き方を許容する企業文化の形成などを通じて「社会に必要とされる会社であり続ける」企業理念を実現していきます。

公設試担当者のコメント
短期間でレーザ焼入れ設備を導入されたご決断に驚きましたが、その決断が良かったと思っていただけるよう、導入時点からレーザ焼入れ条件の選定方法や装置改良のアドバイス等、きめ細かなサポートを心がけました。
また、導入後は、共同研究等を通じて、レーザ焼入れ技術をはじめとする金属熱処理加工の高度化の実現に向けた同社の熱意を支援してきました。
現在は、金属ワイヤーを使用する金属3Dプリンターを導入した、新たなプロジェクトに参画しています。
(地方独立行政法人大阪産業技術研究所和泉センター)


KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]

経済産業省近畿経済産業局は、近畿2府5県(福井県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県)における経済産業省を代表する機関であり、経済産業施策の総合的な窓口機関です。年間 1,000 件以上にも及ぶ企業訪問を通じて、未来に向けて躍動する関西企業を発掘し、そんな企業の挑戦を、より良い未来を見据えた変化への「兆し」と捉え、「KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]」として、とりまとめています。

2023年11月に発表された「KIZASHI vol.23『公設試との連携のもと躍進する企業』編」では、公設試の活用をきっかけに躍進している、食品加工や医療機器、金属加工など幅広い業種の中小企業等11社を特集しています。

事業環境の変化を捉え、多様な課題解決や新規事業の開拓に挑戦する11社の熱い想いと、またその想いを受け止め、悩みの本質を引き出して一緒に考え、実現に向けてサポートする公設試の姿を感じていただき、公設試をよく知らない、もしくは、敷居が高いと感じて利用を躊躇されている方に、ご覧いただければ幸いです。

https://www.kansai.meti.go.jp/1-9chushoresearch/jirei/jirei23.html

公設試のすすめ2023

近畿経済産業局では、当局管内に立地する工業系の公設試の紹介冊子「公設試のすすめ」を作成し、各公設試に設置してある多様な機器の説明、依頼試験や技術指導などの支援メニューの利用方法をわかりやすく紹介しております。

また、先端技術の活用を期待できる、産業技術総合研究所関西センターの紹介もございます。本ガイドブックを御覧いただきまして、一番近くで頼れる技術相談窓口「公設試」を積極的に気軽にご活用ください。

みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!