レーザ技術を活用した最新の金属の表面改質技術(富士高周波工業株式会社)
富士高周波工業株式会社は、金属熱処理加工のプロ集団です。
創業以来65年磨き続ける高周波焼入れ(※1)技術と近年新たに獲得したレーザ熱処理加工技術を、同社が保有する日本トップクラスの加工設備に適用し、微細な加工から大型の加工まで、多様な金属の部分熱処理加工を行っています。
レーザ熱処理加工のパイオニア
同社は2008年に国内で先駆けてレーザ焼入れ(※2)設備を導入しました。
ピンポイントで加熱するレーザ熱処理は、歪みの低減のほか、冷却工程で水や油等を使用しないため廃液処理が不要で、環境負荷が少ない点が特長です。
高品質・低価格で提供する同社の受託加工は2万5千アイテム、100社もの試作・開発実績を有しています。
研究発表会への参加をきっかけに、レーザ熱処理設備を導入
同社代表取締役の後藤さんは就任前の数年間、高周波熱処理加工と並ぶ新事業の開拓を模索していました。
そんな折に興味本位で参加した、大阪府立産業技術総合研究所(現:地方独立行政法人大阪産業技術研究所和泉センター)(以下、同センター)主催の研究発表会で、レーザ焼入れに目が留まりました。
後藤さんは事業との関連性や将来性を感じ、同センター主催の研修への参加等を通じて発表者の職員との交流を重ねました。
更に独自の調査もふまえて有望分野と確信し、その1年後、高額のレーザ焼入れ設備の導入に踏み切りました。
産学官連携の共同研究で、同社のレーザ熱処理加工技術の礎を確立
同設備の導入後、経済産業省のサポイン事業(※3)に採択され、同センター及び公立大学法人滋賀県立大学との共同研究で、従来のセラミックスコーティングとレーザ熱処理を、工程の逆転により基材の硬さや密着強度を向上させ、高精度で低価格かつ環境に優しい画期的な熱処理技術を確立しました。
次に後藤さんの提案から、同センターと共同で、既存のレーザクラッディング(※4)加工で発生する、製品への加熱から生じる歪みの問題を解決するため、ワークに与える熱影響を最小化するハイスピードのレーザクラッディング技術を開発しました。
開発において、同社保有設備の性能では納得できる成果が出ないため、更に高額なレーザ設備の導入に踏み切りました。
その結果、共同研究でハイスピードレーザクラッディング技術の確立に成功し、大幅な歪み軽減を可能にしました。
この判断は、多様かつ難易度の高い熱処理加工のワンストップ対応を可能にし、コスト及び技術面の競争力強化につながりました。
これに伴い顧客は地元中心から全国へと拡大し、業種も多様化したことで、顧客のニーズや課題に触れる機会の増加から提案力が向上し、更なる受注増加の好循環を生み、レーザ熱処理加工は高周波熱処理加工と並ぶ事業の柱に成長しました。
変化や課題を前向きに捉え、時代の一歩先を恐れずに進む
同社は、国内同業者が熱処理加工技術の向上により競争力を高めるため、自社技術のノウハウや加工事例等を自社サイト上に掲載するなど技術の普及に取り組んでいます。
この一環で、国内企業とのパートナーシップ契約により海外事業所への技術提供を開始しました。
更に事業再構築補助金を活用し、国内に先駆けて材料に金属ワイヤーを使用する金属3Dプリンターを導入し、大学との共同研究を進めるなど、熱処理技術の高みを目指しています。
また、社会情勢の変化を敏感に捉え、熱処理加工で起業に関心のある学生を採用し新規事業を担当させ、また、高齢の従業員には無理のない勤務形態での働き方を検討しています。
このような既存概念にとらわれない柔軟な働き方を許容する企業文化の形成などを通じて「社会に必要とされる会社であり続ける」企業理念を実現していきます。
KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]
経済産業省近畿経済産業局は、近畿2府5県(福井県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県)における経済産業省を代表する機関であり、経済産業施策の総合的な窓口機関です。年間 1,000 件以上にも及ぶ企業訪問を通じて、未来に向けて躍動する関西企業を発掘し、そんな企業の挑戦を、より良い未来を見据えた変化への「兆し」と捉え、「KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]」として、とりまとめています。
2023年11月に発表された「KIZASHI vol.23『公設試との連携のもと躍進する企業』編」では、公設試の活用をきっかけに躍進している、食品加工や医療機器、金属加工など幅広い業種の中小企業等11社を特集しています。
事業環境の変化を捉え、多様な課題解決や新規事業の開拓に挑戦する11社の熱い想いと、またその想いを受け止め、悩みの本質を引き出して一緒に考え、実現に向けてサポートする公設試の姿を感じていただき、公設試をよく知らない、もしくは、敷居が高いと感じて利用を躊躇されている方に、ご覧いただければ幸いです。
https://www.kansai.meti.go.jp/1-9chushoresearch/jirei/jirei23.html
公設試のすすめ2023
近畿経済産業局では、当局管内に立地する工業系の公設試の紹介冊子「公設試のすすめ」を作成し、各公設試に設置してある多様な機器の説明、依頼試験や技術指導などの支援メニューの利用方法をわかりやすく紹介しております。
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