機械屋が米粉普及活動?~老舗企業の挑戦~(株式会社西村機械製作所)
株式会社西村機械製作所は、小麦粉の代替となる「パンや製菓に最適な米粉作り」を実現した粉体機器メーカーです。同社では、社員の皆さんが社会貢献を実感するきっかけにもなった、米粉の普及に向けた取組が進行中です。
粉体と向き合い続けて九十年
誰もが知るお菓子、インスタントラーメン、カレールー。これらの食品に欠かせない「粉体」を技術で支えているのが、大阪府八尾市の株式会社西村機械製作所です。昭和9年の創業以来、食品を中心に、粉粒体機器を幅広く展開してきました。
特徴は、粉体機器の製作販売のみならず、設計から施工、メンテナンスまで一貫して対応するプラントエンジニアリングを行っている点にあります。これによって、食品メーカーの細かな要望に応えることが可能になっています。
働きやすさの追求
近年では、企業の発展に欠かせない人材育成や、働き方改革にも力を入れています。令和3年には人事評価制度を導入し、評価を給与に反映することで、社員のやる気を引き出します。
また、同年には新社屋が建設され、新たに設けられた社員交流のスペースは食事や研修に利用されています。清潔な社屋は若者を惹き付け、人材確保にも寄与しています。
積み重ねた技術力を活かし新事業「米粉」へ挑戦
「社会に貢献していることを社員が実感し、彼らの働きがいが向上した」と社長の西村元樹さんが語る事業分野の一つに、「米粉」があります。
米粉は、小麦粉の価格高騰や欧米を中心としたグルテンフリーの広まりとともに、小麦粉の代替品として注目されています。
しかしながら従来の製粉プロセスでは、粒子サイズとでんぷん損傷率が大きいために、小麦粉から作られるパンやケーキの質を実現できないという課題がありました。
創業以来、和菓子や米菓向けの米粉製粉の技術開発に取り組んできた同社は、約20年ほど前から、小麦粉の代替用の米粉製粉機(湿式気流粉砕機「スーパーパウダーミル」)の開発に着手しました。
米に水分を含ませることで米を軟化させたあと、米同士がぶつかることで米が粉砕される「湿式気流製粉」は、でんぷん損傷が少なく、きめ細かい米粉に仕上がるのが特徴です。
この製粉技術の確立により、パンやケーキに最適な米粉の製粉が実現しました。この功績により、取締役会長の西村卓郎さんは令和元年秋の叙勲・旭日双光章を受章しています。
そして、粉体の乾燥工程を省くことにより小型化を実現した 「フェアリーパウダーミル」も開発しました。
工場と比べて作業スペースが狭い場所にも設置が可能であり、自家製粉にこだわる街角のパン屋やケーキ屋、道の駅など、多数の納入実績につながっています。
米粉ブームを全国、そして世界へ
米粉に関するホームページの作成や、米粉のマスコットキャラクターを考案するなど、米粉普及のために多くの取り組みを行っていますが、「まずは米粉食品を本当に必要とする人たちのために、業界の裾野を広げていきたい」と社長の西村元樹さんは語ります。
具体的には、機械を作り売るという面だけでなく、米粉で食品を作る人や店を徐々に増やしていくことです。
また、新社屋の交流スペースは米粉の料理教室にも活用されており、地域住民と交流しながら、米粉の普及に努めています。
米粉業界を牽引する企業として、西村機械製作所の存在感は今後いっそう大きくなっていくでしょう。
KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]
経済産業省近畿経済産業局は、近畿2府5県(福井県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県)における経済産業省を代表する機関であり、経済産業施策の総合的な窓口機関です。年間 1,000 件以上にも及ぶ企業訪問を通じて、未来に向けて躍動する関西企業を発掘し、そんな企業の挑戦を、より良い未来を見据えた変化への「兆し」と捉え、「KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]」として、とりまとめています。