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水とともに産地とともに~こだわりのものづくりを伝えるオープンファクトリー~- 神藤タオル株式会社 -(シリーズ:オープンファクトリー #7)

関西各地でオープンファクトリーを実施している企業様へのインタビューを通じ、どんな想いを込め取組を始めたのか、取組により企業や社員にどのような変化があったのか、オープンファクトリーの魅力を紹介するシリーズ:オープンファクトリー(バックナンバーはこちら↓)

第7回は、神藤タオル株式会社さんをご紹介します。


老舗タオルメーカーのオープンファクトリーへの挑戦

神藤タオル株式会社は、1907年に創業。日本のタオルづくり発祥の地である大阪泉佐野で、100年を超える歴史の中で培った技術力を活かし、素材・デザイン・環境に配慮した優れたタオルを製造しています。

そんな同社は、「神藤タオルを広く地域の人に知ってもらうこと」を目指して2023年から泉州オープンファクトリーに参加しています。

同社のオープンファクトリーの中心になっている、代表取締役の神藤貴志さんにオープンファクトリーに取り組んだきっかけや想いを伺いました。

お話を伺った神藤さん

オープンファクトリーに出会ったのは2020年。福井県で開催されているオープンファクトリーイベント「RENEW」に参加したことがきっかけでした。

その後も、様々なオープンファクトリーイベントに参加し、産地を盛り上げる活動として魅力を感じていた神藤さん。そんな中、泉州オープンファクトリーから参加の打診があり、絶好の機会と初回から参加しています。

今では、泉州オープンファクトリーの実行委員会メンバーとしても活動する同社ですが、工場見学は手探りだったと言います。

「取引先に対して工場見学を行ったことはありましたが、一般の方々を対象に工場を案内するのは初めての挑戦で、最初はとまどいもありました。そのため、試行錯誤を重ねながら、子どもでも安心して見学できるように工場内の動線を確保したり、複数人に説明が伝わるようにインカムを導入するなど、少しずつ受け入れ環境を整えました。」と神藤さんは語ります。

加えて説明者である自身も、専門用語を使わず、丁寧な説明を意識するなど、初めて工場に足を踏み入れる方でも楽しめるよう工夫したと言います。

また、見学者から「オープンファクトリー終了後にその場で製品を購入できるようにしてほしい」という要望があったため、今年は自社ブランド製品を購入できるスペースの確保や在庫の準備を進めるなど、絶え間なくアップデートを図っています。

会社の歴史とこだわりに触れて欲しい

現在日本で使用されている8割が海外からの輸入品とも言われているタオル。泉州は日本のタオル産業発祥の地ですが、全国的にはまだまだ知名度が低いのが現状です。

また、産地全体を見ても、職人の高齢化や長時間労働のイメージが付いているなど、先行きが不透明な状況が続いています。

そういった状況を打破し、産地全体を盛り上げたいという想いを原動力に、「実際に糸からタオル生地を織る工程を見てもらうことで、高品質なタオルを作る上で欠かせない職人の技術やこだわりを感じてもらいつつ、泉州タオルに親しみを持っていただきたい」という思いを込めて工場見学を実施しています。

見学コースでは、ダイナミックに動く織機を間近で見る事ができる

そんな工場見学の最大の見所は、製品に合わせて使い分けている3種類の織機です。

最新の織機は織り上げる速度が速いため、一定の規格のタオルを量産することに向いています。

一方、旧式の織機は、製造スピードでは劣るものの、最新の織機では出せない風合いを出せるのが特徴です。

旧式の織機が稼働している織物工場は年々少なくなっていますが、同社では長年にわたって職人が手入れを行い、細かい調整をしながらものづくりを続けてきた結果、これらが稼働可能な状態で残っています。

旧式の織機が生む風合いと、職人の経験や創意工夫が組み合わさって生まれたのが、「インナーパイルタオル」や「2.5重ガーゼタオル」といった同社のオリジナルブランドの商品です。

同社のオリジナルブランド商品「インナーパイルタオル 」

旧式の織機は調整の自由度が高く、職人の技術や発想を生かしたものづくりができますが、これも長年の経験の積み重ねがあってこそです。オープンファクトリーを通してタオル作りへのこだわりや、これまでの会社が行ってきたものづくりの歴史を伝えたいです。」と神藤さんは語ります。

産地全体を盛り上げる取り組みに

「泉州オープンファクトリーへの参加を通して、泉州地域内の他の会社を知るきっかけになりました。業界や事業内容の枠を超えたコミュニケーションをとりやすくなり、協業へのハードルが下がっていますね。」と神藤さんは言います。

実際に、これまで社内で行っていたタオルの加工の一部を、オープンファクトリーで出会った地域内の企業に依頼するようになるなど、新たな連携が生まれました。

泉州タオルでは、製造にあたって多くの工程を分業しています。神藤さんは今後のオープンファクトリーについて、「泉州タオルの製造工程の川上から川下までを見学できるようなツアーを実施し、泉州タオルのものづくり産地そのものの魅力を伝えていきたいです。」と語ります。

織り上がったタオル生地に付着している綿糸の汚れや、織りに必要な糊を洗い落とす「後ざらし」という工程は、大量の水を使用することで環境への影響が懸念されていますが、泉州タオル産地では、後ざらしに使用した水を浄化するなど環境に配慮したものづくりに産地全体で取り組んでいます。

タオルの製造工程全体を公開する構想には、こうした加工工程にも焦点を当て、泉州タオル産地全体で取り組むエコなものづくりを周知することで、正しく現状を知ってもらい、産地全体を盛り上げたいという神藤さんの想いがあります。

伝統を守りつつ、環境と人に優しいものづくりを追求する神藤タオル。そんな同社やタオル産地の魅力に触れに、泉州に足を運んでみてはいかがでしょうか。

織機の部品の保管場所では、同社が積み重ねてきた歴史が感じられる


#シリーズオープンファクトリー


オープンファクトリーとは

オープンファクトリーとは、ものづくり企業が生産現場を外部に公開したり、来場者にものづくりを体験してもらう取組です。

取組を通じて新たな接点やコミュニケーションが生まれるだけでなく、社員の成長やモチベーションにもプラスの影響を与えるという点で、現在注目を浴びています。
近年では、企業単独の取組はもちろん、ものづくりに関わる中小企業や工芸品産地など産業が集積している地域を中心に、地域内の企業等が面として集まり、地域を一体的に見せていく「地域一体型オープンファクトリー」も全国で広がりを見せています。

地域一体型オープンファクトリーとは(出典:近畿経済産業局)
OPEN FACTORY REPORT 2.0(出典:近畿経済産業局)
企業単体で取り組むオープンファクトリー集(出典:近畿経済産業局)