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レーザー核融合技術でクリーンエネルギーの実現に挑戦(株式会社EX-Fusion)

株式会社EX-Fusionは、レーザーにより発生させた核融合反応によって発電する「核融合発電」の実現に挑戦する大阪大学発のベンチャー企業です。

株式会社EX-Fusion
設立 2021年
資本金 6,865万円
従業員数 10名
所在地 大阪府吹田市山田丘2-8(大阪大学テクノアライアンスC棟 C806)
#レーザー核融合技術 #大阪大学発ベンチャー #カーボンニュートラル

脱炭素社会の実現を見据えた「核融合発電」 

株式会社EX-Fusionは、レーザーにより発生させた核融合(※1)反応によって発電する「核融合発電」の実現に挑戦する大阪大学発のベンチャー企業です。この技術は大阪大学レーザー科学研究所を中心として研究開発が進められてきました。

核融合は、太陽をはじめとする宇宙の星々が生み出すエネルギーの源です。 太陽が誕生したのは46億年前ですが、今も約1.5億キロメートル先の地球を照らし続けています。 気の遠くなるような長い時間にわたって膨大なエネルギーを生み出し続ける太陽で起きている現象を、人類の手で生み出し、発電等に使用することを目指すのが、核融合エネルギーの研究開発です。このため、「地上に太陽をつくる」研究とも言われています。

(※1)核融合反応
          水素のような軽い原子核どうしがくっついて(融合して)、ヘリウム 
          などのより重い原子核に変わること。

国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構ホームページ

今回はこの大阪大学発の技術を社会実装すべく起業した同社の代表、松尾一輝さんにお話を伺いました。

株式会社EX-Fusion 代表取締役CEO 松尾一輝さん

レーザー核融合とは

レーザー核融合とは、高出力レーザーで重水素と三重水素の混合物を高密度に圧縮し、高温度に加熱することで核融合反応を瞬間的に起こし、エネルギーを得る手法です。低密度の燃料を磁場容器に長時間閉じ込めて核融合反応を起こす「磁場閉じ込め核融合」と比較して、負荷変動にも対応できることから、同社では火力発電の代替方法としての確立を目指し、事業化を進めています。

レーザー核融合と磁場閉じ込め核融合の違い

レーザー核融合商用炉の実用化に向けて 

同社が目指すのは、レーザー核融合技術を活かした商用炉の実用化です。その上で現在課題となっているのが以下の2点です。

(1)核融合反応発生効率を向上させること
(2)核融合反応を定常的に発生させる(10Hz以上)こと

そのため、将来のレーザー核融合商業炉の基盤技術の一つであるターゲット連続供給装置とレーザー照準装置の開発のために、「ANRI-GREEN1号投資事業有限責任組合」及び「OUVC2号投資事業有限責任組合」を引受先とする第三者割当増資により、合計1.3億円の資金調達を実施しました。
日本を拠点とするレーザー核融合エネルギーのスタートアップとしての地位を確立することで、民間資本を集め、高い開発リスクを受け入れながら、実用化に必要な技術開発を加速していきます。

研究開発の様子

レーザー核融合関連技術を活かした社会実装を

商用炉の実現は、今後の設備投資を含め先の中長期でのビジョンを描く必要があることから、同社は関連技術を活かしたソリューションビジネスも視野に入れています。

具体的には、出力をコントロールすることで、重粒子線治療やレーザー誘雷、宇宙デブリの除去など、半導体、加工技術、災害対策、医療、宇宙開発、クリーンエネルギーといった多様な社会課題解決に繋がる社会実装実証に取り組んでいきます。

今後は技術開発と並行して、こうした事業展開における協業パートナーを求めるため、認知度の向上も余念がありません。

今年度、創業者の松尾さんが第17回日本物理学会若手奨励賞(※2)を受賞、会社としてもForbes Japan RISING STAR AWARD (※3)などを受賞しており、今後もこうした場での活躍を通して様々なパートナーと共に歩みを進める同社の成長が楽しみです。

(※2)日本物理学会若手奨励賞
         日本物理学が行う将来の物理学を担う優秀な若手研究者の研究を奨励
         する制度。

https://www.jps.or.jp/activities/awards/wakate.php

(※3)Forbes Japan RISING STAR AWARD
        創業3年目以内のスタートアップ起業家・経営陣を応援するために  
   Forbes JAPAN が主催するアワード。

https://forbesjapan.com/feat/rising_star/

KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]

経済産業省近畿経済産業局は、近畿2府5県(福井県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県)における経済産業省を代表する機関であり、経済産業施策の総合的な窓口機関です。年間 1,000 件以上にも及ぶ企業訪問を通じて、未来に向けて躍動する関西企業を発掘し、そんな企業の挑戦を、より良い未来を見据えた変化への「兆し」と捉え、「KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]」として、とりまとめています。

2022年12月に発表された「KIZASHI vol.19 『社会課題解決とともに成長する企業 – シリーズ:2025の先に待つ未来を描く 02 -』」では、社会の様々な課題を解決し、人々が快適に暮らすことができる社会を創ろうと奮闘する企業を特集しています。