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建築・社会構造の当たり前をリニアモータ・エレベータで変える(株式会社リニアリティー)

経済産業省近畿経済産業局は、近畿2府5県(福井県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県)における経済産業省を代表する機関であり、経済産業施策の総合的な窓口機関です。
年間 1,000 件以上にも及ぶ企業訪問を通じて、未来に向けて躍動する関西企業を発掘し、そんな企業の挑戦を、より良い未来を見据えた変化への「兆し」と捉え、「KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]」として、とりまとめています。

2022年10月に発表された「KIZASHI vol.18 『8 future technologies in Kansai – シリーズ:2025の先に待つ未来を描く 01 -』」では、非線形的な未来を掲げ、様々なアイデアとテクノロジーの力で未来を描き、実現に向けて挑戦する変革者を特集しています。

その中でも、AI制御のリニアモータ・エレベータ(※1)の開発を通じて、建築・社会構造の当たり前を変えることに挑むスタートアップが、株式会社リニアリティーです。

(右)株式会社リニアリティー 代表取締役社長 マルコン・シャンドルさん
(左)株式会社リニアリティー 取締役 (Desird Design R&D CEO) エンデル・カザンさん

株式会社リニアリティー
設立 2017年
資本金 1億630万円
従業員数 6名
所在地 京都市左京区吉田河原町14 京都技術科学センター14号室
#建築の当たり前を変える次世代輸送システム
#リニアモータ・エレベータ #AI制御技術

トップイメージ:SKY∩ARC ©︎FUTURE ACCEL Labo

超高層ビルのエレベータ関連スペースを削減 

どのビルも1階のスペースはエレベータホールで埋まり、テナント向けスペースの確保が難しい。高層階へ向かうには、10階までエレベータで移動後、高層階用エレベータに乗り換える。そんなビル建築の常識を変えたいとリニアリティー株式会社CEOのマルコンさんは語ります。

ひとつのエレベータ昇降路に複数台の輸送カゴを取り付けられる「リニアモータ・エレベータ」設備を導入すれば、従来のビル設計と比較してテナント用の床面積を大幅に確保でき、ビル1棟あたり、なんと400億円の収入増が見込まれるといいます。

AI制御のリニアモータシステム

マルコンさんは大手エレベータメーカーで16年以上に渡り、エレベータシステムを研究していましたが、2007年に建築家の高松伸さんが描いた、まるで回転コースターのような円型建築構想である「RINGDOM」に衝撃を受けました。

この常識にとらわれない自由な建築物を実現するには、エレベータシステムの刷新が必要だと痛感。単に上下に昇降するだけではだめだと、リニアモータ制御のエレベータ開発を目指すようになりました。

円型建築構想「RINGDOM」(©︎Shin Takamatsu Architectural Design Office)。
リニアモータ・エレベータが実現すれば、複雑な形状のビルでもエレベータ輸送が可能となる。

現在エレベータ駆動の方式として主流なのは、輸送カゴをロープでつり上げる「ロープ式」。

一方、同社が開発するエレベータはロープを用いないリニアモータ制御の昇降システムを検討します。このシステムでは、エレベータの軌道は縦方向に限定されません。カゴは昇降システムの軌道に沿って自走するため、例えば上のような複雑な形状のビルでもあらゆる方向への軌道設計が可能であり、また同じ軌道上への複数のカゴの設置が可能です。
複数のカゴはAI管理システムで効率的に制御されます。少ない待ち時間かつ乗り換え無しで目的階へ到達出来るため、輸送能力・サービス性の向上も期待されます。

エレベータ昇降システム「L-DRIVE」概要図。
電子回路やセンサー類等を一つのユニットにまとめ、採用する側の負担が最小限となる設計。 https://linearity.co.jp/jp/development/drive_technology/

エレベータの新駆動技術が社会生活を飛躍的に革新する

リニアモータ・エレベータは、ビル床面積の有効活用だけでなくラストワンマイル問題解決の可能性も秘めています。自由自在に設置できる昇降システム軌道は、駅ビルと少し離れたビルをも繋ぐことが出来るため、「駅の改札を出てすぐにエレベータに乗り込むと、自社オフィスのフロアまで直行するような設計も可能となる。」とマルコンさんは語ります。

マーケットは新規のビルだけではなく、既存のエレベータ昇降路も見込んでいます。旧式システムをリニアモータ制御システムへ改造するだけで輸送カゴが複数設置でき、建て直す場合と比較して低コストでの導入が可能です。

同社は今年度内を目処に京都大学宇治キャンパス内でテストタワーを建設し、大手エレベータメーカーとの共同試作を開始。エレベータ昇降システム「L-DRIVE」のサンプル販売に向け、開発を進めています。製品化に向け、トルコのDesird Design R&D社や京都大学、京都高度技術研究所をはじめ各社との協業により試作を進め、今後さらに資金や技術、事業パートナーを募り、2025年の大阪・関西万博への出展及び2026年内のIPOを目指しています。

リニアモータ・エレベータ
エレベータにリニアモータを直結し、直接駆動する次世代エレベータ。
エレベータが自走式(ロープレス)になり、軌道や制御の自由度が飛躍的に上がる。

株式会社リニアリティー