副業人材と共に、全社員を巻き込んだ組織の戦略的強化に挑む(株式会社幸池商店)
「異質のものに対する理解と 寛容の精神を以てもの事に取り組む」との理念を掲げ、主要食のお米をはじめ、米菓や日本酒などの原材料用米の製造・販売を行う株式会社幸池商店。
今回は、そんな同社の副業・兼業人材を活用した組織改革にフォーカスを当て、社長の幸池さんにインタビューを行いました。
勤怠管理システムの見直しをきっかけに、さらなる経営力強化を目指された同社の取り組みをご紹介します。
-副業・兼業人材を活用したきっかけについて教えてください。
喫緊の経営課題ではなくても「いつか見直したい」という課題は、どの企業にもあると思います。当社にも同じような悩みがありましたが、中小企業なので既存の人材やノウハウだけはなかなか取り組む余裕がなく、後回しになっていました。
その中の1つが勤怠管理システムのIT化です。当時、社内で統一されたシステムがなく、一部、紙ベースで出勤を管理している部署があったことが課題でした。そもそも、どのシステムを導入し、ベンダーとどのようにやりとりすれば良いのかがよく分からず、導入に踏み切れないのが実情でした。
そんなとき、経営支援機関の方から、副業・兼業人材の活用を提案していただきました。専門スキルをもつ優秀な人材がアドバイスをくれるのであれば心強いと思い、まずは勤怠管理システムのIT化を依頼しようと考えました。
-どのような人材を求めていましたか?
履歴書上のスキルよりも、面接時に話した内容や人柄を重視して選びました。というのも、応募してくださった方は皆さんスペックが高く、スキルだけでは選びきれなかったからです。そこで、プロジェクトを円滑に進めるためにも「提案内容」や「話しやすさ」などを見て選考しました。
中でも、今回依頼したSさんの提案内容は印象的でした。面接で当社の想いをお伝えしたところ、「勤怠管理ではなくもっと根本的に組織改革する必要がある」というアドバイスがあり、そのための提案をしてくれました。私自身も納得でき、期待以上の提案内容だったため、ぜひこの方と一緒に挑戦したいと思いました。他にも同様の基準で2名の方を採用しました。
-どのようにプロジェクトを進めていきましたか?
週1回、オンラインツールを用いて会議を行っています。初回は、3名の副業・兼業人材にリアルで集まってもらい、顔合わせと業務の役割分担を行いました。
Sさんはプロジェクトの中心的な役割を担い、方針の決定やスケジュール管理をしてくれています。オンラインの共有スペースを使うことで、漏れのない情報共有や他の業務との連携が実施できています。
Sさんの提案に沿って、会社としての骨組みを作るために必要な人事戦略や社内規程、行動指針の策定に取組ました。
策定にあたっては、社員にヒアリングを行うなど、会社全体を巻き込みながら進めていただいています。
-副業・兼業人材活用にあたり、工夫したことや心がけていたことがあれば教えてください。
副業人材からの提案内容には基本反論しないというスタンスを心がけていました。もし、自分たちの想像の範囲内でしか提案を受け付けないのであれば、外部人材に依頼した意味がないと思い、根本的な思いや狙いが納得できるのであれば副業人材のアイディアに乗っかってみることにしました。そのため、自分たちだけでは取り組まないような業務にチャレンジすることができました。
-実際に副業・兼業人材を活用されて、変化や成果はありましたか?
社長や役員だけでなく、全社員を巻き込みながら自社の行動指針(ミッション・バリュー)を作成することができました。そして、従業員への教育や業務フローの見直しなど、組織の在り方を強化するための、根本的な部分の改革に取り組めています。
また、オンラインツール活用のスキルが身についたことはもちろん、優秀な人材の業務の進め方を近くで見ることで、従業員の意識が変わりました。これまで自分の担当業務メインで、社内横断的なプロジェクトに関わることがなかったので、非常に良い経験となりました。
-最後に、副業・兼業人材を活用した感想をお聞かせください。
副業・兼業人材を活用するということは、今まで知り合うことができなかったようなスキル・考え方をもった方と出会えるチャンスです。でも、それは、「自分とは違った意見を持つ異分子を取り込む」という意味では無く、「自社の想いに共感してくれる、気の合う人」を見つけるようなものです。まさに“社長としての友達を見つける”感覚に近いと思いました。
そのためには、副業・兼業人材の方に業務をまるまる放り投げるのではなく、一緒にプロジェクトを進めていくという我々の意識も重要です。
今回、優秀な人材と出会え、自分たちだけでは取り組むことができなかった角度から組織の戦略的強化にチャレンジすることができて本当に良かったと思います。
KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]
経済産業省近畿経済産業局は、近畿2府5県(福井県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県)における経済産業省を代表する機関であり、経済産業施策の総合的な窓口機関です。年間 1,000 件以上にも及ぶ企業訪問を通じて、未来に向けて躍動する関西企業を発掘し、そんな企業の挑戦を、より良い未来を見据えた変化への「兆し」と捉え、「KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]」として、とりまとめています。
KIZASHI 番外編「2022 副業・兼業人材活用事例集 - 身近な事例から学ぶ 人材と企業の新しい『関わり方』-」
昨今の中小企業経営においては、新事業・新商品開発、新たな販売チャネルの獲得、IT・DX化、事業承継等の様々な経営課題について、社内で対応できる人材を確保しているケースは少なく、専門人材の確保が急務です。
その中で、新型コロナウイルス感染症拡大の影響によるリモートワークの進展や大企業による副業の解禁等が、大企業の従業員やフリーランス等の働き方に新たな選択肢をもたらし、中小企業における副業・兼業人材活用の機運が高まっています。
そこで当局では、2023年5月にKIZASHI 番外編「2022 副業・兼業人材活用事例集 - 身近な事例から学ぶ 人材と企業の新しい『関わり方』-」を公表し、副業・兼業人材を活用した先進的な11の取り組みをご紹介しています。
https://www.kansai.meti.go.jp/2sangyokikaku/2022jirei.pdf