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関西バッテリーだよりDENCHY 未来志向型エンジニアの育成を目指して - 授業レポート(1)- 神戸市立科学技術高等学校 電気情報工学科 中本 学 先生

こんにちは。近畿経済産業局 次世代産業・情報政策課です。

今回の関西バッテリーだより-DENCHY- では、神戸市立科学技術高等学校で実施された、バッテリー教育プログラムの授業の様子をお届けします。

インタビューに対応いただいた中本先生は、元々課題研究の授業で電池を扱っており、バッテリー教材への関心も高く、電気情報工学科の1年生を対象にスクールポリシーに応じたアレンジを凝らした授業を実施されました。

今回の記事では、中本先生が授業に込めた想いもご紹介していきます。

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#関西バッテリーだよりDENCHY #バッテリー人材育成  


バッテリー教育プログラム導入のきっかけ

「皆が家に帰って最初にすることは、スマホの充電じゃない?」

そう生徒に問いかけ、スマホからバッテリー(蓄電池)を取り出して見せるのは、神戸市立科学技術高等学校 電気情報工学科の中本 学先生。

「スマホを充電して毎日使えるのはバッテリーが入っているから。他にはどこで使われているかを学び、バッテリーがもたらす未来を皆で考えてみよう。」と、先生は続けます。

神戸市立科学技術高等学校 電気情報工学科 中本 学 先生

バッテリー業界の将来性に関する講演を聴き、関西蓄電池人材育成等コンソーシアムのバッテリー教育プログラム(以降「コンソ教材」)に興味を持った中本先生。

生徒が楽しみながら学べる身近な関心ごとと、先生が伝えたいこれからの社会で求められる考え方や知識を繋ぐ架け橋になるのでは、との思いでバッテリー授業を実施されています。

バッテリーを身近に感じてもらうために

科学技術高等学校では、電気情報工学科1年生80名(2クラスの累計)を対象に「電気回路1」の授業2コマを使って、バッテリー授業を実施しました。

5月下旬、入学して2ヶ月の生徒たちが6-7名の班で机を合わせ、1コマ目の授業に臨んでいました。

各班の中央には鉛蓄電池やニッケル水素電池等、様々なバッテリーが並び「それぞれの電池、名前は何と書いてある?」との先生の問いかけを受け、興味深そうに手にとって観察しています。

授業では、電車の駆動用電源にもバッテリーが使われていることや、3年生の課題研究の授業で鉛蓄電池のカーレースを行ったこと、先生自身も高校生の時にニッケル水素電池で動く電動三輪車を作った経験があることが伝えられました。

後日、停車中の電車の写真を撮って「これが電池?」と先生に見せにきた生徒もいるそうで「モビリティ好きの生徒が多く、彼らが興味を持つような解説を心掛けた」と中本先生はにこやかに話して下さいました。

生徒が自ら学び、未来を想像できる授業

1コマ目のまとめに「今日一番みんなに知ってほしいこと」として先生が解説したのは、環境問題と電池の関係です。

科学技術高等学校では、学校全体の方針としてSDGsを学習しています。

今回の授業では、SDGs7番目の目標である「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」に紐づけて、クリーンエネルギーを上手に使うためにはバッテリーが欠かせないことを学習しました。

2コマ目の授業では、リチウムイオン電池の歴史や今後の進化、コンソの動画教材を視聴してバッテリーの製造工程を学習。

その後に行った、電池が実現する未来を考えるグループワークでは

「空中で風力発電・蓄電を行い、使いたい時に地上へ無線で電力を送れたらエコで効率的」「鳴門の渦潮で海流発電すると大きな電力が得られるのでは。そのためには速い海流にも耐えられる電池の開発が必要」等、生徒の発想豊かな意見が飛び交いました。

授業後には現在開発が進む次世代電池についてインターネットで検索し、「こんな電池があった!」と先生に報告する生徒もいたとのことで、バッテリー教育の授業が自発的な学びに繋がったと言えそうです。

中本先生からのメッセージ

当校では「未来志向型エンジニアの育成」をスクールポリシーに掲げています。

コンソ教材は、身近な題材を切り口として、これからの世界や新しい技術について生徒が自ら考えを巡らせる機会を提供できる教材で、当校のポリシーにも合致するものでした。

授業後は「充電時にバッテリーはなぜ熱くなるの?」等の質問が増え生徒の学習意欲の高まりを感じるとともに、新たな気付きを報告する生徒もでてきて、生徒たちの心に響いたことを実感しています。

3年生での課題研究の授業等も含め、引き続き生徒にはバッテリーについて主体的に、かつ自由な発想で考察する機会を持ってほしいと考えています。

神戸市立科学技術高等学校
 神戸市中央区脇浜町1丁目4番70号
 https://kagi-hs.kobe-c.ed.jp/

編集後記

バッテリーカーを課題研究の授業テーマとするなど、元々教育の題材としてバッテリーにご関心をお持ちだったこともあり、令和5年度のバッテリー教育プログラム検討会から、よりよいプログラム作りのために協力してくださった中本先生。

社会に出たときに役立つ「自分で柔軟に未来を考えられる力」を生徒に身につけてほしいとの思いで授業を進める中本先生の温かいクラスづくりの上に、生徒の豊かな学びが実現できることを実感しました。

次回の授業レポートもお楽しみに!


関西バッテリーだより-DENCHY-とは

GX・DX等の実現にかかせない様々なイノベーションを支える基盤として、長期的な成長が見込まれるバッテリー(蓄電池)産業。

経済産業省は2022年8月に「蓄電池産業戦略」をとりまとめ、2030年までに国内150GWh(年間)のバッテリー製造能力を確保する等の目標を打ち出し、バッテリー関連企業が集積している関西エリアで「関西蓄電池人材育成等コンソーシアム」を立ち上げました。

これから益々の盛り上がりが期待されるバッテリー産業ですが、基盤産業であるからこそ、一般の目に触れる機会が少なく、その魅力が十分に認知されていないと考えています。

そこで近畿経済産業局では、未来を担う若い世代を含め、多くの方にバッテリーの魅力を“やわらかく”お伝えしたいという想いから「関西バッテリーだより - DENCHY -」をスタートしました。

今後も、様々なゲストへのインタビュー記事も順次お届けしますので、ぜひご覧ください!

関西蓄電池人材育成等コンソーシアム(近畿経済産業局HP)
関西バッテリーだより - DENCHY - バックナンバー(近畿経済産業局HP)