テクノロジーで空と地上をつなげる(スカイリンクテクノロジーズ株式会社)
2019年に設立されたスカイリンクテクノロジーズ株式会社は空飛ぶクルマの開発を進めるスタートアップ企業です。
きっかけは東日本大震災
同社社長の森本さんは東日本大震災の映像を見たとき、日頃から災害に備えた準備をしなければならないと感じ、自分が培ってきた技術を活かして開発する空飛ぶクルマは有事の際にも役立つと考えました。
空飛ぶクルマであれば、日常使いも可能で、大規模災害時にも傷病者の搬送、被災地域外からの物資の搬送などの支援に貢献できると考え、空飛ぶクルマの開発をスタートしました。
「あったらいいな」を実現するものづくり集団
森本さんの思いに賛同し、空飛ぶクルマの開発という大きな目標を実現するために、多種多様な分野から多彩な経歴をもった人材が同社には集まっています。
「Anytime Anywhere Fastest」をコンセプトに空飛ぶクルマを開発する世界の企業との競争に勝つために、社内のメンバーが機体開発やソフトウェア開発等といったお互いの得意分野を生かして知恵を出し合いながら、空飛ぶクルマの開発を進めています。
世界に先んじて中長距離市場のシェア獲得を目指す
現在、空飛ぶクルマを開発する企業の多くは、動力の主流がバッテリであり、短距離の飛行にとどまっています。
しかし、日本大学との協同でアメリカにおける一般旅客を対象とした市場調査を実施した結果、480~1120㎞の中長距離の移動に需要があることが判明しました。
そこで、空飛ぶクルマを開発する世界の企業と戦っていくために、エンジンを動力とし、航続距離1400㎞、巡航速度650㎞ /hの高速かつ長距離の移動を目指します。
機体の特殊性と課題解決に向けたチャレンジ
機体の特徴は3つあります。
1つ目は、JAXAと熊本大学と同社の3社で共同開発を進めているプロペラです。
開発中のプロペラは離陸時(低速)から移動時(高速)までの幅広い速度域で高い効率を発揮します。
2025年までに試作品の開発を目指しており、完成すれば他の企業では真似できない革新的な技術となります。
2つ目は、自立運行システムです。
この技術は山間部などを飛行する際に生じる通信障害・通信速度等に起因する様々なリスクを事前に把握したうえで、飛行ルートを決定するものです。
搭乗者により目的地がセットされると、自動的に飛行ルートの設定が行われます。
将来的にはこの技術を活かして、空飛ぶクルマの自動運転を目指しています。
3つ目は、姿勢制御技術です。
同社の機体では、水平飛行から垂直飛行へ遷移する際のプロペラの角度が随時変化することで、機体が大きく揺れるという課題が生じます。
本課題を解決するために経済産業省の成長型中小企業等研究開発支援事業(※)を活用し、大学等の協力機関と研究を進めています。
現在は小型実証機での研究段階で、将来的には、遷移時の機体の揺れはなくなる見込みです。
空飛ぶクルマの実装に向けて
長距離・高速飛行ができる同社の空飛ぶクルマでは、東京から本州全域を1時間で移動することができ、日本中どこにいてもストレスのない移動が可能となります。
それによって、生活・ビジネス・観光とった様々な面で移動時間の短縮ができます。
森本さんは2025大阪・関西万博が大きな転換点だと考えています。
「空飛ぶクルマが日常使いされるためには2025大阪・関西万博が重要な転換点である。空飛ぶクルマの未来を世界に見せることで、空飛ぶクルマの実装イメージを世界に発信していき、万博後の機運上昇に繋げていきたい」と語ります。
独自の技術で空飛ぶクルマの開発を牽引し、自社のみならず、日本の航空機産業全体の発展を目指す同社の未来に期待します。
KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]
経済産業省近畿経済産業局は、近畿2府5県(福井県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県)における経済産業省を代表する機関であり、経済産業施策の総合的な窓口機関です。年間 1,000 件以上にも及ぶ企業訪問を通じて、未来に向けて躍動する関西企業を発掘し、そんな企業の挑戦を、より良い未来を見据えた変化への「兆し」と捉え、「KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]」として、とりまとめています。