水上モビリティの自律航行技術で海に道を造る(株式会社エイトノット)
経済産業省近畿経済産業局は、近畿2府5県(福井県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県)における経済産業省を代表する機関であり、経済産業施策の総合的な窓口機関です。
年間 1,000 件以上にも及ぶ企業訪問を通じて、未来に向けて躍動する関西企業を発掘し、そんな企業の挑戦を、より良い未来を見据えた変化への「兆し」と捉え、「KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]」として、とりまとめています。
2022年10月に発表された「KIZASHI vol.18 『8 future technologies in Kansai – シリーズ:2025の先に待つ未来を描く 01 -』」では、非線形的な未来を掲げ、様々なアイデアとテクノロジーの力で未来を描き、実現に向けて挑戦する変革者を特集しています。
その中でもロボティクスとAIを用いた自律航行技術による水上モビリティで、海に道を造ることに挑戦するスタートアップが、株式会社エイトノットです。
ロボティクスとAIで水上モビリティの自律化を
ロボティクスとAIであらゆる水上モビリティを自律化すれば、水上交通が欠かせない離島地域の生活航路の維持存続ができる。
そんな水上交通に新たな活路を見いだす夢のような技術の開発に挑戦しているのが株式会社エイトノット(大阪府堺市)です。
「エイトノット AI Captain」という小型船舶向け自律航行プラットフォームの開発を2021年から行い、約半年で基礎部分を完成。
広島県での物資輸送の実証実験に成功しました。
他業界からの参入で、既存業界に新たなうねりを
代表者である木村裕人さんは、外資系企業において、ロボット開発や新規事業担当後独立。
クルーザーの企画・開発会社の設立に参画するが、「海に道を造る」というソーシャルインパクトを目指し同社を立ち上げました。
また、CTOにはロボカップ世界大会で2回の優勝経験のある横山智彰さんが就任。
同社の「無人航行」は、法律の整備も必要であり、2025年に大阪・瀬戸内海地域で旅客を乗せた実装を目指し、開発を進めています。
先進的なテクノロジーにより安全面を確保
水上モビリティの自律化においては、目的地までいかに安全に辿り着けるかが大きなポイントとなります。
流木などの浮遊物を避けたり、付近海域を航行する他船の動きを検知することで、安全な回遊ルートをリアルタイムで設定します。
目的地までのルート設定にはGPSの位置情報、水上の障害物には船では一般的ではないLiDAR(ライダー、レーザー光を使ったセンサーの一種)を活用し、先進的なテクノロジーを活用することで安全な自律航行の実現を目指しています。
同社が水上モビリティの自律化に着目したきっかけは、日本における船舶関連事業の持続可能性に危機感を覚えたからです。
船員数は過去30年で40%減少、また安全性の面では船舶事故の74%が人為的なミスに起因しています。
収益性の面では、離島航路に年間65億円の補助金が投入されており、行政による離島生活航路の支えは限界に近付いている状況と言えます。
離島での暮らしが将来にわたって安心で、持続可能な未来。
そんな世界を実現するため、同社はオンデマンド型の水上交通の開発に挑戦しているのです。
海起点で拡大する、新たな経済圏の創造へ
同社のモチベーションの源泉は「海に道を造る」「海上インフラ」への想いです。
かつて鉄道会社が鉄道を引くことによって、何もなかった地域に住宅、商業施設、娯楽施設といった沿線の地域開発を促し、新たな経済圏を創造したように、同社が「海に道を造る」ことができれば、海起点で町、海上都市の創造が可能となり、海起点での新しい経済圏を創造することができます。
また、人類は人口増加や温暖化による海面上昇により、多くの人の生活の場所が危ぶまれており、特に海沿いの都市にとっては深刻な問題となっています。
このような状況を解決する海上都市には国連も注目している状況です。
海上都市には水上交通というインフラが欠かせません。
利用者にとって必要な時に必要な場所に人が介在していなくても船を送る同社の技術を活用することができれば、海上都市において持続可能な水上インフラとなります。
同社は日本のみならず、海外における全人類的な問題に取り組む企業を目指し、技術開発に取り組んでいます。