あらゆる方向から光を捕捉、球状太陽電池からGXを実現!(スフェラーパワー株式会社)
「太陽電池といえば平板」という既成概念に疑問を持ち、太陽電池を球状にしてあらゆる方向から光エネルギーを捉える方がより効率的ではないかと考えたのがスフェラーパワー株式会社です。
大手電機メーカーで宇宙用太陽光発電に携わった経験を活かして、独立後にスフェラー®を開発し、現在は様々な用途開発に取り組んでいる同社代表取締役会長の中田仗祐さんに話を伺った。
既成概念に一石を投じる、三次元受光の球状太陽電池
スフェラーパワー株式会社は、直径1~2㎜の球状太陽電池「スフェラー®」を用いて各種発電モジュールや応用製品の製造販売を手掛ける京都府のベンチャー企業です。
「太陽電池といえば平板」という既成概念があるが、これは一定方向から光が差す宇宙用に始まった開発の歴史に由来しています。
しかし、この既成概念に疑問を持ち、宇宙と違い、地球上では拡散光や反射光など多方面から光が差すため、太陽電池を球状にしてあらゆる方向から光エネルギーを捉える方がより効率的ではないかと考えたのが同社の原点です。
発想とノウハウで量産化 球状シリコン製造が強み
スフェラー®は、ひとつひとつの球表面で発電する仕組みになっており、発電の用途では、扱いやすいメッシュ状等のモジュールにアセンブリして使用することが多いです。
同社では、スフェラー®の製造を自ら手がけていますが、開発当初は基礎となる球状のシリコンを作ることに苦労しました。
そこで、量産品の顆粒状のシリコンを電気炉で溶解し、表面張力で球状になったところを冷却して結晶化するという製造方法を考案しました。
今では、この工程を自動化することで量産を実現しています。
これらの製造方法とスフェラー®自体は特許を取得していますが、球状を保ったまま結晶化させる技能や、メッシュ状にアセンブリする方法など、特許以外の長年の研究で培ったノウハウも不可欠であり、他の企業が真似できない同社の強みとなっています。
従来の太陽電池ではできない多様な応用製品を展開
スフェラー®は、平板のソーラーパネルと同様の使い方も可能ですが、球状である特徴を活かし、平板では難しい用途での利用を想定し事業展開を図ります。
例えば、メッシュ状に配置されたスフェラー®は透過性に優れていることから、窓ガラスやガラス建材に組み込んだ製品等を展開しています。
同製品は、福井県の美浜町レイクセンターに設置されている照明付き案内板にも採用されていますが、地面に対して垂直に太陽電池を設置できるため、平板のものと比べて積雪による発電量への影響も少ないです。
更に、反射光の捕捉により出力が増えることから、雪の反射光を利用できる寒冷地での活用も期待されています。
また、緊急時の自立電源としての製品用途も拡大しています。
例えば、電導糸とスフェラー®をつなげた太陽光発電テキスタイルは、軽量かつフレキシブルなため、テントやバッグに利用することも可能です。
足下では消費者向け製品にも注力しており、スフェラー®を電源とした懐中電灯「スフェラー®スティック」や「スフェラー®ランタン」等を百貨店やセレクトショップで販売しており、非常時に活躍する防災グッズでありながら、インテリアとしても馴染むデザイン性が評価されています。
同製品は、G20エネルギー・環境閣僚会合において環境省から各国代表に贈られるなど、環境配慮製品としての注目も高まっています。
都市部で再エネを生み出し水素による貯蓄にも貢献
脱炭素社会の実現に向けて、同社はまず太陽光発電の量を増やすことが必要であると考えています。
特に、窓ガラスやガラス建材向け製品のラインナップは都市部でも適用可能な場所が多いことから、需要の増加が見込まれます。
さらには、太陽光発電だけにとどまらず、その電気を水素に変換して貯蓄しエネルギーを効率的に利用することも重要だと考えています。
ここでも同社の技術を活用する意向があり、水電解による水素製造までを含めたパッケージの開発や社会実装等も視野に入れています。
また、昨今では、太陽光パネルの廃棄問題が取り沙汰されているが、スフェラー®は球状であることから、パネル割れ等の破損の一因である、モジュール保護用の樹脂やガラスの熱による収縮に強いです。
加えて、衝撃や振動にも強いため、スフェラー®自体が破損することは稀であり、もしモジュールが破損したとしても、スフェラー®だけを回収して再利用することも可能です。
今後益々大きな投資が必要になる脱炭素分野において、本気になってくれる協業先とともに、さらに迅速かつ着実に取組を進めていきたいと中田さんは語ります。
KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]
経済産業省近畿経済産業局は、近畿2府5県(福井県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県)における経済産業省を代表する機関であり、経済産業施策の総合的な窓口機関です。年間 1,000 件以上にも及ぶ企業訪問を通じて、未来に向けて躍動する関西企業を発掘し、そんな企業の挑戦を、より良い未来を見据えた変化への「兆し」と捉え、「KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]」として、とりまとめています。
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