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未来へ継ぐ冷間鍛造・成長を続ける「おもしろい」会社(株式会社ミナミダ)
2023年に創業90年を迎え、今なお成長を続ける会社があります。大阪府八尾市に本社を構える株式会社ミナミダです。同社は、自動車、産業機械、建築土木部品の製造・販売(以下、部品事業)を行っています。
同社は、1933年に釘を作る製鋲所として創業し、2代目はボルトの製造を、3代目は自動車部品製造をそれぞれ新事業として始めました。現在は、BtoB(企業間取引)の部品事業を軸としながらも、現社長(4代目)はコーヒーミルやスマホスタンド等のBtoC(消費者向け取引)事業、SIer(協働ロボットの導入支援)事業、ベトナム人エンジニアの人材紹介事業など積極的に新事業展開に取り組んでいます。
また、メキシコとタイに工場を構えるほか、新たにインドへの進出も計画しており、海外展開にも意欲的に取り組んでいます。さらに、2025年大阪・関西万博の大阪ヘルスケアパビリオンにおいて、八尾市が実施する「まちこうばのエンターテイメント!~みせるばやおモデル~」への出展も予定しています。同社が90年の長きにわたり事業を続け、新事業や海外展開等、新しいことに挑み成長を続ける秘訣について、4代目社長である南田剛志さんにお話しを伺いました。
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株式会社ミナミダ
創業 :1933年
資本金 :3,000万円
従業員数:145名
事業内容:冷間鍛造部品の製造・販売、自社製品事業、Sier(協働ロボットの導入支援)事業、ベトナム人エンジニアの人材紹介事業
所在地 :大阪府八尾市上尾町5丁目20-1番地
#冷間鍛造 #今をもっとおもしろく #新規事業
日本文化が育てた技術・冷間鍛造
ミナミダは、※冷間鍛造と呼ばれる金属の加工法を得意としており、長い歴史の中で培われた加工ノウハウによる高精度で多彩な加工技術、製造工程の削減や切削レス化等のコスト削減に繋がる提案等を強みとしています。
冷間鍛造は、材料を削らずに圧力を加えて成形するため、切り屑が発生せず、必要最小限の材料でものづくりができ、材料を無駄なく使う「エコ」な加工法です。そして、加熱・冷却工程、材料の切削工程を必要としないため、高速・大量生産が可能です。
一方、金属が変形しにくい常温で成形するため、複雑な形状の部品に加工する難易度は高く、目的の形状を得るための適切な加工プロセスの設定、高精度な金型の設計などへの高度な技術と経験が求められます。
熟練の技を必要とする冷間鍛造が今日まで受け継がれてきた理由について、4代目は、「『モノを大切にする文化』がある日本だからこそ、材料を無駄なく使う冷間鍛造が受け継がれてきた」と誇らしく語ってくれました。
※冷間鍛造(れいかんたんぞう)
冷間鍛造は炭素鋼、合金鋼、ステンレス、非鉄金属などの金属材料を金型を用いて圧縮成形させる方法です。常温(または常温に近い環境下)で鍛造加工を行うため、材料はある程度の変形性(延性、割れにくさ)と、高くない変形抵抗(加工力の大きさ)を持ったものである必要があります。
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フォーマーを用いて材料が必要分だけ切断され、写真3の「#1」から加工を5回行い目的の形状「#5」が得られます。目的の形状を得るためにどのような金型を用いてどのような順番で加工を行うべきかを慎重に設定する必要があります。例えば、加工プロセスの順番が不適切な場合や、「#1」の段階で寸法の誤りがある場合、目的の形状を得ることはできません。 このような点から、冷間鍛造には高度な技術と経験が必要とされます。
冷間鍛造を未来へ継ぐために
長年培われ、ミナミダの成長を支えてきた冷間鍛造技術を未来へ継ぐため、同社は人材獲得に注力しています。しかし、冷間鍛造は高度な技術と経験が必要となるため、冷間鍛造に造詣のある人材を外部から採用することは極めて困難です。そのため、4代目は「自社で人材を育成する仕組みを作っていかなければならない」と力強く語ってくれました。
ただ、現在は教育体系が整っていない為、教えられる側の成長度合いは、教える側の技術レベルやセンスに依存し、技術者の間で技術力の「差」が生まれ、作業の質やスピード等にバラツキが生まれています。特に、冷間鍛造の基礎教育段階における「差」が生まれることを4代目は課題に感じています。
この課題を解決するため、4代目は、基礎教育段階における「差」をなくし、誰が教えても同レベル・同内容になるような体制を構築し、社内の技術を「標準化」していくことを目指しています。現在、「標準化」の実現に向けて教育専門の部署の設置を計画する等、着実に準備を進めています。また、人材育成の際には、それぞれの技術レベルに応じた到達目標を設定することで、技術者が自身の成長を実感しやすくなるような環境作りを進めるとともに、早く戦力になってもらうことを目指しています。
このように技術力の「標準化」を目指す背景には、新事業に対する4代目の強い思いがあります。
「かつては、試作用金型を購入し、人手を割いて新技術を生み出し、新製品・新事業に挑戦することができる人的・資金的な「余力」がありましたが、グローバル競争の中で現在は「余力」が少なくなってきています。将来に渡って、弊社が生き残るためには新技術・新商品、新事業こそが必要である」と4代目はまっすぐな目で語ってくれました。
「標準化」によって、技術力の「差」をなくし、新技術を生み出し、新製品・新事業へ注ぐ「余力」を生み出すことで、日々、新たな取組に挑戦しています。
成長の秘訣「今をもっとおもしろく」
日々、新たな取組に挑戦を行う4代目が2023年4月、先代の後を継いでまず行ったのが、ミナミダの新たな経営理念を策定することでした。「今をもっとおもしろく」これが新たな経営理念です。「おもしろい」=「成長(改善や目標の達成)が伴ったもの」と定義し、社員一人一人が「おもしろく」あり続けることで、同社自体も「成長」を続け、ひいては、同社に関わる全ての人々・社会が「おもしろくなる=成長する」ことを目指しています。
4代目は、「この経営理念を策定したことにより、採用時には、同社の理念に共感した人材を獲得できるようになり、新入社員の「質」の向上を感じている」と言います。
経営理念の策定に続いて行ったのが、行動規範の設定です。社員への経営理念の定着度を向上させるため、社内でプロジェクトチームを立ち上げ、社内全体を巻き込んだ取組を進めています。但し、4代目は、「設定した行動規範は、「成長」につれて当たり前のものになります。当たり前にできることをいつまでも掲げるのではなく、「成長」に応じて、行動規範は改善を続けていかなければならない」と言います。
経営理念の実践の1つとして、日々の業務改善のアイデアや取組を社内で「見える化」するシステムを導入し、社員は日々、「成長(改善)」に取り組んでいます。実は、こうした社員の改善アイデアを「見える化」したことが新事業である「ロボットSIer事業」の誕生に繋がっています。省人化のため、作業用ロボットを導入したところ、工場(現場)における業務効率化が図られました。社員の一人から「この成功体験・ノウハウを基に、ロボットメーカーのようなロボット導入事業が行えるのでは」というアイデアが社長に届き、新事業である「ロボットSIer事業」が生まれました。
更に、経営理念を実践する「おもしろい」若手世代の活躍も伺うことができました。BtoB(企業間取引)の事業を営む同社は、技術価値をユーザーに対して「見える化」するための取組としてBtoC(消費者向け取引)の事業を行っており、これまでにスマホスタンドやコーヒーミルを製造しました。2023年4月にはコンパクトでありながらも高い解凍速度を誇る「OMRIQ PLATE」の販売を開始しました。
入社2年目の石田さんがこのBtoCの事業を任されています。「課題に直面した際には、大学のゼミや八尾市の共創プロジェクトへの参加を通じてアイデアの発想・アドバイスを受け活動しているが、技術面で「できる」・「できない」の判断は難しく、苦労している。現場とのコミュニケーションを大切にして、試行錯誤を繰り返しながら技術的な課題を乗り越えており、日々「成長」を感じている。」と石田さんは言います。
「今をもっとおもしろく」この経営理念に基づいた、社員一人一人の「成長」が今日も新たな挑戦を続ける同社を支えていました。
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100年目も「おもしろく」あり続けるために
90年の長きにわたり事業が続いてきた理由について、4代目は、「世の中の動きに常に注目して、時代とともに作るものを変え、ひたすら「成長(改善)」してきたからだ。」と言います。
100年目に売上100億円を目指す同社は、「今をもっとおもしろく」の経営理念に基づき、冷間鍛造技術の更なる向上、各拠点間の相互交流、海外進出、新事業への挑戦を今日も社員一丸となって続けています。
「100年100億」企業を目指して、ミナミダは、今後も時代とともに「成長」を続け、100年目も、更にその先でも、社会を「おもしろく」していくことでしょう。