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優しい笑顔で何でもつくる、「世界基準」がそこにある(共栄ダイカスト株式会社)

「金型」、それは、製品を製造するために金属でつくった型のこと。
金属や樹脂などの素材を型にいれ、熱を加えたり力をかけることで、求められる製品の形を作っていきます。
金型で成形をすることで同品質のものを安定して得ることができるので、生産のために必要不可欠な存在でありつつ、金型の品質そのものが製品の良否を決定づける、とても重要な製品なのです。

そんな金型づくりに始まり、「試作」「金型」「鋳造」「加工」まで一貫して生産に取り組む会社が共栄ダイカスト株式会社です。東大阪市柏田、JR長瀬駅近くの街工場がひしめき合う地域に同社は居を構えています。
今回は、同社の金崎社長にお話をお伺いしました。

共栄ダイカスト株式会社
設立  :1969年​
資本金 :1,000万円​
従業員数:38名
業種  :ダイカスト製造業、金型​
所在地 :大阪府東大阪市柏田西3丁目9番10号​
#金型から一貫ダイカスト製造 #東大阪クオリティ
#世界で愛用される製品づくり#人づくりで始まる未来づくり


工場(こうば)から工場(こうじょう)へ

共栄ダイカスト株式会社の創業は1965年、高度経済成長からオイルショックに至る激動の時代に、金崎さんの実父である先代が貸しガレージでダイカスト(※1)マシンを起動したところから始まりました。

(※1)ダイカスト(Die Casting)
溶けた金属を精密な金型に圧力をかけて流し込むことにより、高精度で鋳肌(鋳造製品の表面部分)の優れた鋳物を早いペースで大量に生産する鋳造方式の一種。

一般社団法人日本ダイカスト協会

金崎さんの入社時はまさに典型的な町工場(まちこうば)だった同社。「このままではいけない」という危機感と、「町工場のイメージを変える」という強い思いをもったと金崎さんは言います。

「良くも悪くも頑固な職人」だった先代やベテラン社員とぶつかり合いながら、工場内の整備から若手の採用、新規顧客の開拓など、会社をよりよくするための変革を進めてきました。

また、内部の変革のみならず、しっかりと外に発信していくことの重要性も感じていた金崎さんは、ホームページの開設や、大手リサーチ会社等への丁寧なレスポンスの徹底、国際標準企画であるISO企画の取得、数々の展示会出展によるPRも欠かしません。

展示会での出展の様子(同社ブログ「東大阪のダイカスト工場の日々。」

結果、変革に向けた取組を通じて人の輪が大きく広がり、現在は、大手自動車メーカーから衝突防止ユニット部品やサスペンション部品などをはじめ、誰もが知る有名商品の金属部品の製造を数多く請け負うようになりました。

常にもっと良くできないか、試作を重ねて品質にはとことんこだわる。当然失敗もする。でも人生は答えが出ない事が多い。何度も失敗して対処の仕方を学び、乗り越える」と話す金崎さん。

優しい眼差しの内側に妥協を許さない情熱が宿っています。

品質への徹底したこだわり、職人技の再現への挑戦

「試作」「金型」「鋳造」「加工」まで一貫したものづくりができることが最大の強みである同社は「模型でも粘土でもイメージを伝えてくれたらそこからオンリーワンの金型を作るのが私たちの会社」と金崎さんは語ります。
発注者の様々なニーズに応える為、技術者たちがトライアンドエラーを繰り返して、高品質な金型を完成させていきます。

同社が品質に対して徹底的にこだわるようになったきっかけとなった出来事があります。それが大手企業のクライアントから依頼された「落下しても壊れないパソコンの部品製造」の案件でした。

「私たちがクライアント先に納品した製品を先方の品質担当の方が検査された際に、電子顕微鏡を使ってようやく把握できるような細かな傷でも追求されたことがある。このようなクライアントと付き合っていくためには、この高いレベルの品質を要求されるのか。」と当時を回想しつつ、品質の重要性を身を持って学んだそうです。

しかし、そこで諦めないのが金崎さん。もともとご自身の強みだと感じていた「理詰め」というマインドセットが見事にマッチしました。

(金型の)図面作成という仕事には高品質な製品製造を担保するため、根拠と寸分の狂いもない正確性と、その正確性をもって職人が仕上げることが求められます。
だからこそ、従来、職人達の勘と技に頼っていた工程そのものに、理論と根拠を持たせることを意識し始めました。近年は、職人が手作業で仕上げた製品のデータを収集し分析、細部に渡り技を再現することを目指した、「職人技のデータ化」にも挑戦しています 。

広く海外で愛用される中小企業の技術力の結晶   

工場内を歩きながら金崎さんは、特殊な形のはさみの柄の鋳造品を手に取り、「ここも長い付き合い、ほとんど趣味みたいな仕事」と照れくさそうにはにかみました。このはさみの柄の製造を同社に発注しているのは、奈良県生駒市の八栄精機株式会社です。

八栄精機株式会社は創業1965年、業界では老舗の理髪用はさみ専門の製造業者です。同社社長の松本さんは「理髪用はさみの柄は手に馴染むよう細くて曲線が多く、軽さも求められるのでダイカスト鋳造するには高い技術が必要なんですが、共栄ダイカストの金崎さんは、たとえ注文が安くとも技術的なオーダーに真剣に向き合ってくれます。今までに何種類も形の違うはさみの柄の金型を作ってくれました。」と語ります。

理髪用はさみの柄を加工している様子

同社では鋳造に加え、バリ取り(※2)、メッキ塗装、持ち手の穴の内側まで研磨した状態で出荷します。ここでも、「試作」「金型」「鋳造」「加工」まで一貫したものづくりの強みを活かしているのです。

(※2)バリ取り
樹脂や金属の加工時に発生する不要な突起等を研磨する作業のこと

weblio辞書

実は、このはさみの注文の大多数はEUをはじめとする海外から。ヘアスタイルの流行に合わせ「軽くて鋭い切れ味」の八栄精機株式会社のはさみは海外市場で高い需要があります。

日本の中小企業の技術力の結晶が​ 海を渡ってBARBER愛用の品となっている

スパッと、毛先が揃った髪型のファッションモデルを想像して下さい。このはさみの切れ味は、海外の理・美容師から根強い人気を誇り続けています。
品質と真摯に向き合う2つの町工場から生まれたはさみは毎年、海外展示会にも並ぶ定番製品となり、今もなお新たな顧客を生み続けています。

社員が生き生きと働く町の工場(こうじょう)

取材中、工場内のあちこちで「こんにちは」と元気に声をかけられました。社員目線の働きやすい環境作りが金崎さんの方針。

例えば、外国人の社員のために言葉でなく色を使って製品の仕分けをする、有給取得しやすい環境作りなど、年齢、性別、国籍を超え、社員のことを思って行う数々の取組が功を奏し、事実、離職率は低い状態だと言います。

組織づくり、人づくりの分野でも「常にもっとよくできないか」の精神で、全社員が生き生きと楽しんで仕事をし続ける会社を目指す。共栄ダイカスト株式会社の未来を見据えた挑戦はまだまだ続きます。


KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]

経済産業省近畿経済産業局は、近畿2府5県(福井県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県)における経済産業省を代表する機関であり、経済産業施策の総合的な窓口機関です。年間 1,000 件以上にも及ぶ企業訪問を通じて、未来に向けて躍動する関西企業を発掘し、そんな企業の挑戦を、より良い未来を見据えた変化への「兆し」と捉え、「KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]」として、とりまとめています。


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