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本来の鮮明な緑色が加熱加工後も保持できる国産キウイフルーツピューレの開発(株式会社八旗農園)

株式会社八旗農園は、トップブランド「あら川の桃」の産地である和歌山県紀の川市にある、桃の生産販売及び果物の受託加工企業です 。

株式会社八旗農園
設立   2014年
資本金  998万円
従業員数 54名
業種   農業・食品加工業
所在地  和歌山県紀の川市桃山町元266-3
#あら川の桃 #6次産業 #人材育成 #和歌山工業技術センター #公設試との連携のもと躍進する企業


「あら川の桃」の産地、和歌山県紀の川市でどこにも負けない桃づくり

同社は、2009年に「自分で栽培した桃を自分の手で売りたい」という共通の思いで、地元農家と異業種からの新規就農者の3者が桃の共同直売所を立ち上げ、事業を開始しました。
その後、地ビール製造企業からクラフトビール用のピューレの供給依頼があったことをきっかけに、株式会社八旗農園を設立し、地場で採れた規格外の桃の加工場の操業を開始しました。

変色を共同研究で克服し、安心安全のピューレの完成   

操業するなかで、桃以外の地元紀の川の特産果物の加工も手掛けるようになりました。
取り扱う果物の検討を進める際、「キウイフルーツの鮮やかな緑色は他の果物ピューレとの色のバランスが良く、商品展開における訴求効果を発揮する」と考えたことから、ピューレへの加工に着手しました。

しかしながら果物の変色を抑制する従来と同様の加工方法では、キウイフルーツ本来の鮮やかな緑色は失われてしまい、濁ったような色に変色してしまう問題に直面して頭を悩ませていました。
着色すれば緑色が保持できますが、同社は添加物を加えることなくキウイフルーツ本来の鮮やかな緑のピューレを製造することに拘っていました。

そんなある日、果物加工関係の勉強会に出席していた同社は、和歌山県工業技術センターの職員に声をかけられ、キウイフルーツの加熱加工時の変色の悩みを話したところ、食品加工に知見を有する和歌山工業高等専門学校の紹介を受けて、3者での共同研究がスタートしました。

製造工程における様々な条件等を変えながら3者で実験を重ねた結果、キウイフルーツの変色の原因を突き止め、同社は念願の加熱加工後も変色を抑制する特殊な加工技術を確立できました。
この特殊な加工技術により、同社は本来の鮮やかな緑色を保持したキウイフルーツピューレの製造に成功しました。

産地農家が営む同社が拘りを持って製造した加工品は、鮮度や味といった素材の良さを最大限アピールするだけでなく、安全・安心における信頼感から、食に拘りを持つ小売店や飲食店等に採用されています。

加熱してもキウイ本来の緑色を保持できるように独自の特殊製法により製造したピューレ

次代を担う新規就農者の育成に取り組み、農業の「紀の川モデル」を作りたい

同社は従来の伝統栽培法を継承しつつ、新たな栽培技術の導入による作物の品質向上や自社での作物の加工、販売先の開拓を進めるなど、次々と新しいことに挑戦しています。

この背景には、どこにも負けない桃作りへの思いと、就農に不安を感じる若者に「農業で十分に生計を立てていける姿を見せたい」という強い思いが込められています。
次代の就農者の育成のため、採用から4年後の独立を目標とした新規就農希望者の採用に注力しています。
4年経過後には、同社での継続雇用または独立の選択が可能となっています。

さらに社内の人材育成にも積極的で、毎年、同社の社員を1年間、和歌山工業技術センターへ研修生として派遣して、果物加工に関する様々な専門技術を身に着けさせることで、社員の自信や仕事に対する誇りに繋げています。

現在は、和歌山県が全国生産量1位を誇る「はっさく」の苦み成分に含まれる健康や美容に対する効果などに着目し、紀の川市が推進する、はっさくの新たな活用により地域活性化を図る「紀の川はっさくプロジェクト 」にも参加しています。

同社は今後も、地域の持続可能な農業の実現を目指した活動に取り組んでいきます。

公設試担当者のコメント
先ずは技術相談からを合言葉に、相談から適切に「企業が今困っていること・将来の発展に貢献できること」を捉え、漠然とした課題の明確化に努めアドバイスするなど企業との連携を強化しています。
本件は相談時点から企業の課題が明確で、知見を持つ和歌山工業高等専門学校と八旗農園との三者で共同研究を進めることができました。
また、開発においては、食品開発関連機器を機能的に集約した「フードプロセッシングラボ」をご活用いただき、スピードアップを図りました。
(和歌山県工業技術センター)


KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]

経済産業省近畿経済産業局は、近畿2府5県(福井県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県)における経済産業省を代表する機関であり、経済産業施策の総合的な窓口機関です。年間 1,000 件以上にも及ぶ企業訪問を通じて、未来に向けて躍動する関西企業を発掘し、そんな企業の挑戦を、より良い未来を見据えた変化への「兆し」と捉え、「KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]」として、とりまとめています。

2023年11月に発表された「KIZASHI vol.23『公設試との連携のもと躍進する企業』編」では、公設試の活用をきっかけに躍進している、食品加工や医療機器、金属加工など幅広い業種の中小企業等11社を特集しています。

事業環境の変化を捉え、多様な課題解決や新規事業の開拓に挑戦する11社の熱い想いと、またその想いを受け止め、悩みの本質を引き出して一緒に考え、実現に向けてサポートする公設試の姿を感じていただき、公設試をよく知らない、もしくは、敷居が高いと感じて利用を躊躇されている方に、ご覧いただければ幸いです。

https://www.kansai.meti.go.jp/1-9chushoresearch/jirei/jirei23.html

公設試のすすめ2023

近畿経済産業局では、当局管内に立地する工業系の公設試の紹介冊子「公設試のすすめ」を作成し、各公設試に設置してある多様な機器の説明、依頼試験や技術指導などの支援メニューの利用方法をわかりやすく紹介しております。

また、先端技術の活用を期待できる、産業技術総合研究所関西センターの紹介もございます。本ガイドブックを御覧いただきまして、一番近くで頼れる技術相談窓口「公設試」を積極的に気軽にご活用ください。

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