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CO2冷媒を用いた産業用冷凍機の開発(日本熱源システム株式会社)

環境面で注目されつつも、夏に猛暑を迎える日本での実用化は難しいと考えられてきたCO2冷媒。そうした中、日本初のCO2冷媒産業用冷凍機の開発で栄えある「第9回ものづくり日本大賞優秀賞」を受賞されたのが、日本熱源システム株式会社の村上さん、黒石さん、田中さんの3名です。

日本熱源システム株式会社
設立 1987年
資本金 4,500万円
従業員数 100名
業種 産業用冷凍機製造販売
所在地 東京都新宿区四谷1-6-1 四谷タワー20F
#産業用冷凍機 #CO2冷媒冷凍機 #地球温暖化防止 #ものづくり日本大賞

地球温暖化防止に向けた産業用冷凍機「冷媒」の課題

冷凍機の中を低温に保つには、「冷媒」が大きな役割を担います。一般的な冷凍機では、内部に冷媒と呼ばれるガスを充填し、圧力を操作することで、液化・放熱、気化・吸熱を繰り返し、機内を低温にする仕組みです。

この冷媒について、特に産業用の冷凍機では、現在でも人工的に作ったフロンガスの一種が使用されています。フロンガスは、地球温暖化を高める作用がアンモニアやCO2といった自然冷媒と比較して圧倒的に高く、国際条約モントリオール議定書は段階的な削減を義務付けています。

環境負荷低減のために日本で用いる自然冷媒といえばアンモニアが一般的でしたが、刺激臭や毒性の面で課題がありました。この点、CO2冷媒は、安全性・環境面において優れています。しかし、特に産業向けの中大型冷凍機に採用するには大きな課題がありました。

CO2は臨界温度(気体がどんなに圧力を加えても液体にならない温度)が31度と低く、夏の最高気温が時には40度を超える日本で冷媒として機能させるためには、CO2を液化させるための付加的なシステムが必要となり、結果として省エネ性を損ねてしまいます。

こういった事情から、CO2冷媒は、夏が涼しい欧州等でしか実現しないと考えられていました。このような中、日本独自のCO2冷媒冷凍機開発に名乗りを上げたのが日本熱源システム株式会社です。

冷凍機専業メーカーによる地球温暖化防止への挑戦

同社は長年オーダーメイドの冷凍機を設計・製造してきたため、冷凍機の設計・製造から、各圧縮機のインバータ制御のアルゴリズムおよびプログラムの開発まで自社で一貫して行うノウハウをもっています。

開発に着手したのは2012年。「猛暑下での安全運転」と「高い省エネ性」の両立を目標に設定しました。そのためにまず、社員がドイツに留学し、CO2冷凍機の基本原理を習得しました。その後、滋賀工場に冷凍冷蔵庫を含めた実験プラントを制作。試作機を何基も作り実証実験を繰り返しながら、猛暑下での冷凍機の最適制御や機器のサイズ調整を行いました。

ポイントは、猛暑を乗り切るため冷凍機内の冷却システムや冷媒の貯留方法です。同時に冷凍機の心臓部である圧縮機をインバータ制御するなどして省エネ性を追求しました。

「スーパーグリーン」の誕生と今後の展開

同社は三年の開発期間を経て、ついに、日本の気候に合った我が国初のCO2冷媒産業用冷凍機「スーパーグリーン」を誕生させました。

懸念であった省エネ性能は、従来のフロン冷凍機に比べ20~40%向上という驚異的な結果を出しました。製品発売時、業界内では北海道や東北のみで成り立つものと考えられていましたが、現在では全国で、食品工場をはじめ多岐の業界向けに累計300台以上の導入実績を積み重ね、CO2冷媒の完成度の高さが市場で存在感を示しています。

地球温暖化防止の取組が世界中で加速する中、自然冷媒冷凍機への置き換えは、国内だけでなく世界でも進んでいくものと推測され、今後は世界への展開も見据えています。

同社はマレーシアでも初号機を納入し、東南アジア市場参入の足掛かりをつけました。さらに、滋賀工場を改修・増設し、増産対応と、新型機の開発に一層注力していく体制に入りました。今後も業界をリードする存在として地球温暖化の防止を一層進められることを期待します。

 -受賞者メッセージ-
栄誉ある賞を頂き誠にありがとうございます。今回受賞を頂いた産業用冷凍機は、自然冷媒であるCO2冷媒を使用し、かつ省エネ性能が高い製品として高い評価を頂いております。
この製品は日本のカーボンニュートラル・地球の温暖化防止に貢献できる製品である自負しております。今後はさらに開発を進めより高性能、多機能な製品開発を続けてまいります。


KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]

経済産業省近畿経済産業局は、近畿2府5県(福井県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県)における経済産業省を代表する機関であり、経済産業施策の総合的な窓口機関です。年間 1,000 件以上にも及ぶ企業訪問を通じて、未来に向けて躍動する関西企業を発掘し、そんな企業の挑戦を、より良い未来を見据えた変化への「兆し」と捉え、「KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]」として、とりまとめています。

2023年4月に発表された「KIZASHI vol.22『第9回 ものづくり日本大賞編』」では、2023年1月に決定した第9回ものづくり日本大賞受賞者のうち、近畿ブロックから受賞した10案件の取組をご紹介しています。

今回の受賞者の皆様も、それぞれの技術力を存分に活かしながら、その新規性と革新性、豊かな発想力によって、「ものづくり」を通じた様々な社会課題の解決に貢献されている、そんな姿を特集しました。

https://www.kansai.meti.go.jp/1-9chushoresearch/jirei/jirei22.html

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