治験DX!常識を覆す便利さと超高セキュリティで医薬治験業務プロセスの効率化を実現(株式会社ビットブレイン/株式会社EP綜合)
新薬が患者の元に届くまでには、規制当局の承認と、新薬の有効性や安全性、品質等を検証する「治験」をクリアしなければなりません。
この治験プロセスにおいて大幅な効率化を実現し、栄えある「第9回ものづくり日本大賞 優秀賞」を受賞されたのが、福井県のIT企業株式会社ビットブレインの斎藤さん、新野さん、片山さんと、治験業務支援の国内大手である株式会社EP綜合の畠山さん、高松さんによる開発チームです。
”治験プロセス”の課題
治験には「SDV(Source Document Verification)」という治験の評価において重要な記録や報告を、医療機関が保存するカルテなどの原資料(※1)を直接閲覧することによって照合する業務があります。
このSDVは、臨床開発モニター(※2)が治験実施施設に実際に訪問し、被験者(治験に参加した患者)の原資料と症例報告書の整合を取る必要があり、費用・時間の両面でコストがかかるため、従前よりリモートSDVシステム普及に向けた様々な議論が行われてきました。しかし、リモートシステムは高いセキュリティの確保が必須であり、導入コストの課題も大きいため普及が進みませんでした。
治験を依頼する製薬会社は、コスト削減のため「クオリティ・コスト・スピード」の3つを評価しますが、日本ではコストとスピードが諸外国よりも劣っており、総合的に低評価です。
もし、日本の治験パフォーマンスが改善されなければ、薬の入手が困難になるだけでなく、医薬品開発そのものに大きな影響を及ぼしかねません。
従来の課題を覆す”治験DX(※3)”
今回、株式会社ビットブレインと株式会社EP綜合が先述のハードルを乗り越え、リモートSDVシステム「SPG-Remote Medical for SYNOV-R」を実現したポイントは、以下のとおりです。
まず、システムには独自のセキュリティクラウドシステムを介する方式を採用しました。これは、治験実施施設側での画面データを画像として抜き出し送信するもので、異なるネットワークを交えることがないため、安全性を担保しています。
また、リモートSDVを適切に管理するため、予約管理システムも実装しました。これによりシステムにアクセス可能な日時や対象者を限定できるため、閲覧対象外の情報に誤ってアクセスするといったことは発生しません。
さらに、専用のリモート閲覧室を株式会社EP綜合内に配置し、電子カルテ端末と同様の情報を遠隔で閲覧できるようにしました。
そして、リモートの利用者はセキュリティや情報取扱いなどの高度な教育受講を必須にしており、情報漏洩リスクを徹底的に排除しています。
日本の医薬品開発に革新を
高セキュリティだけではなく、普及拡大に向けた導入コストの課題もクリアしています。
本システムを利用するには、治験実施施設(病院側)では、専用ルータを設置するだけで良く、ネットワーク工事は不要のため、コスト面・導入負担面で大幅に改善しました。
そうしたことから、すでに大規模病院を中心に150を超える病院での導入が進み、治験依頼者である製薬会社の利用も進んでいます。本システムが国内全体で広がれば、これまで治験業務に要した病院訪問時間・回数が大幅に低減し、治験業務にかかるコスト・時間は諸外国並みの水準に下がるといいます。
今後ますます、新薬の流通の迅速化、安定供給化に繋がることが期待されます。
KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]
経済産業省近畿経済産業局は、近畿2府5県(福井県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県)における経済産業省を代表する機関であり、経済産業施策の総合的な窓口機関です。年間 1,000 件以上にも及ぶ企業訪問を通じて、未来に向けて躍動する関西企業を発掘し、そんな企業の挑戦を、より良い未来を見据えた変化への「兆し」と捉え、「KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]」として、とりまとめています。
2023年4月に発表された「KIZASHI vol.22『第9回 ものづくり日本大賞編』」では、2023年1月に決定した第9回ものづくり日本大賞受賞者のうち、近畿ブロックから受賞した10案件の取組をご紹介しています。
今回の受賞者の皆様も、それぞれの技術力を存分に活かしながら、その新規性と革新性、豊かな発想力によって、「ものづくり」を通じた様々な社会課題の解決に貢献されている、そんな姿を特集しました。
https://www.kansai.meti.go.jp/1-9chushoresearch/jirei/jirei22.html