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「子どもたちを救いたい」​挑戦を続ける『下町ロケット』モデル企業​(福井経編興業株式会社)

「衣料から医療へ」。
今年で創業79年目を迎える福井経編興業株式会社は今、社運をかけた大きな挑戦の中にいます。​

福井経編興業株式会社
設立  :1944年​
資本金 :8,000万円​
従業員数:87名​
業種  :経編生地製造​
所在地 :福井市西開発3丁目519-3
#事業転換 #シンフォリウム #リアル下町ロケット #人づくりで始まる未来づくり #地域未来牽引企業


創業70余年 ニット生地製造会社の新たな挑戦

繊維の主要産地、福井県に立地する同社は、国内最大規模の経編会社(※)です。
大企業から編み工程だけ委託する業態が中心の業界では珍しく、原糸を購入し加工、販売する独立した商流を構築してきました。

※経編(たてあみ)
縦方向に連続して編んで生地にしていくもの。伸縮性や機能性に優れ、応用範囲は広く、そのフィールドはファション、ユニフォーム、インテリア、医療、産業資材など多岐に渡っています。

http://www.fukutate.co.jp/recruit/what_is_tateami/

100台近くの編み機を使用し、高品質なニット生地を製造してきた同社は現在、心臓修復パッチ「シンフォリウム」の商用化に取りかかっています。

そこには、中心となって事業転換へ果敢に挑む社長の髙木さんの決断力、そして、子どもたちの手術の負担を軽減したいという、強い思いがありました。​

医療分野の開拓

きっかけは、展示会への出展後に舞い込んだ1つの依頼でした。
2000年代、アパレル1本での経営に陰りが見え、現状に危機感を抱いた髙木さんは、展示会で自社の高い技術力を何度もアピールし、契機を求めたところ、シルクで編む人工血管の開発依頼が届きました。
その研究開発を通して医療分野に活路を見いだし、髙木さん自ら猛勉強。​

その後、大阪医科薬科大学・根本教授から、日本製の医療資材を作ってみないかという誘いをうけ、取引先の大手繊維メーカー・帝人とも協働し、シンフォリウムの開発が始まりました。
​シンフォリウムは、先天的心臓疾患を有する子どもの手術に使用する修復パッチです。

伸張性のない従来品では、子どもの心臓が大きくなるに伴い再手術が必要となりますが、ニット生地でできた同製品は、成長する子どもの心臓に合わせて伸びるため、再手術を回避することができます。
まさに、髙木さんの鋭い危機意識と、委託加工に甘んじない同社だからこそ持っていたメーカーとのネットワークが、子どもたちを不安から救う製品を実現させました。​

​心臓修復パッチ「シンフォリウム」(左)と、縫着した様子(右)

福井から世界へ、フクイタテアミの未来

シンフォリウムの開発は、会社を存続・発展させるための髙木さんの経営判断と、手術の負担低減による社会貢献との、2つのモチベーションに支えられています。
現在は難関とされる様々な法規制のハードルをクリアし、2023年度中の販売に向けて準備を進めており、一刻も早く国内外への展開を目指しています。​

製品の研究開発に加えて同社が重要視しているのが、広報です。
はやく製品を子どもたちのもとへ届けたいという髙木さんは、メディア​戦略の強化に注力しています。
シンフォリウムの開発経緯をもとに作家の池井戸潤氏が著した『下町ロケット2 ガウディ計画』(小学館文庫)も、その一環です。

ドラマ『陸王』の製作に伴い、シューズの生地について池井戸氏から取材を受けた髙木さんは、この機会を逃す手はないと思い、「あと1時間もらえないか」と直談判しました。
開発中であったシンフォリウムについて熱弁し、後日、4時間の臨床手術に池井戸氏をアテンド。
その後、同社がモデルとなったストーリーが完成しました。

こうしてできた書籍を広報に活用するほか、時には学校での講演会に登壇するなど、自社の技術の発信の場を広げています。​

ドラマ撮影時に使用された「GAUDI」の看板

髙木さんはさらに、今後の医療分野への進出にあたり、女性リーダーの育成も進めたいといいます。
医療分野においては女性による発信力・説得力が重要との考えからです。
実際、現在販売中の介護業界向け製品は、次代を担うリーダーとして、女性が中心となって進めています。​

衣料から医療へ。
ニット生地が持つ無限の可能性を胸に、確かな技術と人材が裏付けるメイドインフクイの製品で、世界の医療市場へ挑み続けます。  ​


KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]

経済産業省近畿経済産業局は、近畿2府5県(福井県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県)における経済産業省を代表する機関であり、経済産業施策の総合的な窓口機関です。年間 1,000 件以上にも及ぶ企業訪問を通じて、未来に向けて躍動する関西企業を発掘し、そんな企業の挑戦を、より良い未来を見据えた変化への「兆し」と捉え、「KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]」として、とりまとめています。


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