技術を受け継ぎ、育て、守っていく。(株式会社千石)
部品の下請け製造に始まり、一貫した製造プロセスと高い量産化技術を活かしたOEM事業で高い評価を受けてきた株式会社千石は、2023年に創業70年を迎えます。
技術やノウハウを事業ごと受け継ぎ、育て上げる
株式会社千石は、主に暖房器具などの家電製品を受注していますが、近年では独自の製品でも注目を集めています。
同社の理念は、「自分たちにないものを外部から積極的に取り入れていく」こと。他企業から技術やアイデアを事業ごと受け継ぎ、自社の事業として育てあげることで、優れた技術を無駄にすることなく、製品として世に送り出してきました。自社ブランド「アラジン」は、まさにその象徴といえます。
受け継いだ特許技術と自社ブランドの融合により生まれた「アラジントースター」
2005年に暖房器具ブランド「アラジン」の販売権を買収。そこに特許技術「遠赤グラファイト」を組み合わせ、高性能のヒーターを完成させました。瞬間発熱や柔軟性など高い性能を持つこのヒーター、元は大手家電メーカーが事業選択の過程で手放した技術です。同社が設備ごと受け継ぎ、高性能ヒーターとして売り出しました。
さらに優れた加温機能をより活かすべく社内でアイデアを出し合い、「アラジントースター」を開発。当時は高級トースターという製品は存在しませんでしたが、「いいものを適正な価格で売る」という社長の決断で販売を開始し、高級トースター市場を切り開きました。
成長のキー
自社ブランドに頼ることなく、地に足のついた発展を目指す
今では同社の売り上げのうち、60%以上を「アラジン」ブランドが占めますが、自社ブランドの売れ行きが好調な今だからこそ、原点に立ち返ることが重要だと、同社専務の千石滋之さんは語ります。部品製造やOEM事業は利益率こそ見劣りするものの、安定した経営の柱となるだけでなく、取引先との信頼関係の構築にもつながるからです。
知財戦略についても、令和3年度の知財功労賞受賞を機に、これまで以上に深く考えるようになりました。外部から講師を招き、若手中心に勉強会を開催するなど、人材育成に取り組んでいます。
特許技術を引き継ぐことは、海外への技術流出を防ぐことにもつながります。今後も多様なアイデアを積極的に取り入れながら、暮らしを便利する製品を生み出し続けます。
KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]
経済産業省近畿経済産業局は、近畿2府5県(福井県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県)における経済産業省を代表する機関であり、経済産業施策の総合的な窓口機関です。年間 1,000 件以上にも及ぶ企業訪問を通じて、未来に向けて躍動する関西企業を発掘し、そんな企業の挑戦を、より良い未来を見据えた変化への「兆し」と捉え、「KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]」として、とりまとめています。
https://www.kansai.meti.go.jp/1-9chushoresearch/jirei/jireitop.html
2023年1月に発表された「KIZASHI vol.20 『不変と可変 揺るぎない価値観、絶え間ない挑戦』」では、事業環境の変化を前向きに捉え、絶え間ない「挑戦」を続ける中小企業11社に対しインタビューを実施し、その「挑戦(可変)」の裏に宿る、揺るがない「価値観(不変)」を大切にしている姿を特集しています。
https://www.kansai.meti.go.jp/1-9chushoresearch/jirei/jirei20.html