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ひと創りを通してものづくりを変革、地域の未来を拓く(株式会社みせるばやお)

大阪府八尾市は関西有数の製造業が集まる地域です。市内の中小企業はその高い技術力で多くの大手企業を支えてきました。そんな、八尾の企業たちが時代の流れの中で抱えている「人材育成」という課題に、八尾の企業みんなで乗り越える。

そのための枠組み「みせるばやお」が栄えある「第9回ものづくり日本大賞 優秀賞(人材育成支援部門)」を受賞しました。

株式会社みせるばやお
設立 2020年
資本金 55万円
従業員数 7名
業種 人材育成のための教育事業並びにそのカウンセリング業、
   各種マーケティング業及び企業の販売促進活動の企画業務
所在地 大阪府八尾市光町2-60 リノアス8F
#八尾市 #人材育成プラットフォーム #FactorISM #ものづくり日本大賞

魅せる・見せる + 場 + 八尾(やお)

大阪府八尾市は関西でも特に指折りの製造業が集まるエリアです。市内の中小企業はその高い技術力でこれまで多くの大手企業を支えてきました。

しかし、近年、ものづくり企業を取り巻く環境は大きく変化し、下請けやOEMからの脱却を目指して、自社がもつ独自の発想力による商品展開を狙ったり、事業承継といった課題に直面しています。
これらを乗り越えるため「人材育成」にしっかりと取り組んでいくことが求められていますが、個別企業ごとに人材育成を行っていくことは、時間的にもリソース的にも限界となっているのも事実です。

このような中、八尾市役所の呼びかけにより、市内にイノベーション拠点をつくる動きがはじまりました。

その拠点の創設に向けて検討準備会が開催され、市内の中小企業や金融機関、大学などが様々な意見を交わすなかで、「地域を支えるものづくり中小企業に対して、一元的な人材育成のプラットフォームとなる機能が必要ではないか」という声があがり、中小企業の経営者や社員の発案によって、2018年に「みせるばやお」が生まれました。

その後、法人組織として「株式会社みせるばやお」が設立され、よりきめ細かく活動を企画・支援することでできるようになり、他の地域にはない大きな特徴となっていきました。

地域の製造業のエネルギーで、ものづくり人材を育てるシステムを開発

「みせるばやお」のスタートは、地域の将来を支える子どもたちにものづくりの楽しさを魅せる活動からでした。
「一社一社の目先のビジネスではなく、将来的にどんな会社でも考えるべき中長期の取り組み」が企業と企業の垣根をなくし、中小企業の経営者を未来志向へと変えていきました。

その後、徐々に活動の幅を拡大。 現在は5つの実施分野に整理して取組を展開しています。

みせるばやおの5つの取り組み分野

運営の特徴として、5つのそれぞれの分野において「企業、大学、金融機関などのネットワークとなる場」と、「企業とエンドユーザーが交流できる場」の2つの場を用意しています。この異なるレイヤーの場を設定することで、実際のビジネスを意識したイノベーションを起こしています。

また、こういった活動は、地域の中小企業人材の意識改革と、企業自体の活性化、そして新たなビジネスの構築にも寄与しています。
例えば、それぞれの企業の強みを活かしたコラボ商品や、大学との連携プログラムに参加した学生が関係する企業に就職するなど課題解決の事例が次々に創出されています。

広域オープンファクトリー「FactorISM」

そしてなにより「みせるばやお」を語るには、八尾市を中心に広域で開催されるオープンファクトリー「FactorISM」は欠かせません。上述したみせるばやおの5本目の柱となる地域活性・魅力発信の要となる取組です。

オープンファクトリー
ものづくり企業が生産現場を外部に公開したり、来場者にものづくりを体験してもらう取組であり、従来から工場見学やツアーといった形態で実施されてきた取組です。 近年では、ものづくりに関わる中小企業や工芸品産地など、一定の産業集積がみられる地域を中心に、企業単独ではなく、地域内の企業等が面として集まり、地域を一体的に見せていく「地域一体型オープンファクトリー」という取組へと進展をみせています。

経済産業省 近畿経済産業局

「FactorISM」 は、「ファクトリー(工場)」と「ツーリズム(観光)」を合わせた造語で、ものづくり中小企業の魅力を届けるだけでなく、まちの活性化につなげる狙いもあります。

イベントをはじめた当初は八尾市を中心とした取り組みでしたが、「こうばはまちのエンターテイメント」を合言葉に、毎年、参加企業は、近隣の市町村でその輪を広げ、連携地域は現時点で8市まで拡大。今や全国から注目をうけるモデル事例となっています。

「僕らのことなんて誰も興味ないと思う。でも何かが変わる。そう思って参加したんです。」これが現状からの変革を求めた参加者の最初の声だったそうです。

その言葉のとおり、回を重ねるごとに「何かが変わる」というエネルギーはどんどん高まり、狙いとしていたものづくり企業と地域住民や子供たちとのコミュニケーションも徐々に活性化されていきました。

結果、企業で技術を磨く職人たちも、自らの技術に対する誇りを持てるようになっていき、製造業の結集力と地域の協働により生まれた人材育成の新たな形として結実していきました。

2025年の大阪・関西万博では、大阪ヘルスケアパビリオン会場と一体となる活動になるよう準備が進められている。今後、みせるばやおが牽引する地域の中小企業とまちの活性化のコラボレーションのさらなる展開に期待したい。

-受賞者メッセージ-

「みせるばやお」は、オープンで創造的なナレッジシェアを活動の基礎として、ものづくり企業を取り巻く環境変化に対応できる経営者・従業員・起業家の人材育成に努めております。自発的に発生するプロジェクトが次々と生まれるのも、「認め合う文化」を大切にしているからです。  
 このビジネスモデルが八尾モデルとして、他の地域に波及され、同じ課題を抱える日本全国の中小企業の変革につなげていきます。


KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]

経済産業省近畿経済産業局は、近畿2府5県(福井県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県)における経済産業省を代表する機関であり、経済産業施策の総合的な窓口機関です。年間 1,000 件以上にも及ぶ企業訪問を通じて、未来に向けて躍動する関西企業を発掘し、そんな企業の挑戦を、より良い未来を見据えた変化への「兆し」と捉え、「KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]」として、とりまとめています。

2023年4月に発表された「KIZASHI vol.22『第9回 ものづくり日本大賞編』」では、本年1月に決定した第9回ものづくり日本大賞受賞者のうち、近畿ブロックから受賞した10案件の取組をご紹介しています。

今回の受賞者の皆様も、それぞれの技術力を存分に活かしながら、その新規性と革新性、豊かな発想力によって、「ものづくり」を通じた様々な社会課題の解決に貢献されている、そんな姿を特集しました。

https://www.kansai.meti.go.jp/1-9chushoresearch/jirei/jirei22.html