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ナノセラミック分離膜技術でカーボンニュートラル社会の実現を(イーセップ株式会社)

イーセップ株式会社は、ナノセラミック分離膜技術で省エネイノベーション・カーボンニュートラルの実現に挑む企業です。

イーセップ株式会社
設立 2013年
資本金 2億2300万円
従業員数 26名
所在地 京都府相楽郡精華町精華台7丁目5番地1
#ナノセラミック分離膜 #小型化 #液体燃料

ナノセラミック分離膜技術で脱炭素に貢献 

現在の化学工場における生成物の分離精製プロセスでは、大規模なプラントでの加熱・冷却を何度も繰り返し行っているため、大量のCO2を排出してしまっています。

コンピューターのデバイスが超大型から小型へと進化したように、「化学プロセスもプラントを小型化することで省エネに貢献できないか。」そうした考えの下、ナノセラミック分離膜(※)技術を活用し、化学プロセス(反応・分離)の小規模化・省エネ化を目指しているのがイーセップ株式会社です。

(※)ナノセラミック分離膜
膜孔径をナノレベル(nm(ナノメートル)は10億分の1メートル)で精密制御したゼオライト膜やシリカ膜を中心とするセラミック分離膜

今回は、ナノセラミック分離膜技術で省エネイノベーション・カーボンニュートラルの実現に挑む代表取締役社長 澤村健一氏にお話を伺いました。  

イーセップ株式会社  代表取締役社長 澤村健一さん

ナノセラミック分離膜が叶えるプラントの小型化・省エネ化

同社がカーボンニュートラル社会の実現に向けて取り組んでいるうち、今回は次の2つを紹介します。

(1)化学溶剤のリサイクル 

化学プラントでは現状、大規模なプラントにより加熱・冷却を繰り返すことで化学溶剤から水分を取り出し、化学物質の分離を行っていますが、使用された化学溶剤のうち、リサイクルされているのは1~2割程度にとどまります。

そこで、所望の分子のみを選択的に膜透過させることができる同社の「ナノセラミック分離膜」を用いて化学物質の分離を行うことで、従来生成過程で必要であった加熱・冷却作業の省力化に繋がり、プラントの小型化に繋がる技術の実用化への道筋を拓くことに繋がりました。

実は、この分離膜技術は30年以上も前から注目されてきたものの、分離膜は高熱によって溶けてしまうことが大きな課題とされていました。

しかし、同社は奈良先端科学技術大学院大学をはじめとした様々な大学等と連携しながら開発を進め、高温耐久性に優れたナノセラミック分離膜の製品化に成功。廃棄溶剤の大幅な削減や、原料となる化石燃料の節約など、カーボンニュートラル実現への貢献が期待されています。

シリカ系分離膜 長さ:400mm
両端部保護シール付き標準品 膜孔:2~10nm

(2)「e-fuel」の高効率精製-CO2からガソリンをつくる-

また、同社は、未利用の間伐材などのバイオマス由来の再生可能エネルギーを利用した水の電気分解から生まれるH2(水素)と回収CO2(二酸化炭素)から液体合成燃料「e-fuel」を精製する事業にも注力しています。

従来技術では、CO2からe-fuelを作る工程の反応率が低く、生成される水を除去するには、複雑で大きな設備が必要とならざるを得ないなどの課題が存在しました。そこで、株式会社やまびこ(東京都青梅市)と共同研究開発契約を締結し、同社のナノセラミック分離膜技術を活用し、やまびこ社の主力製品である小型屋外作業機械に搭載するエンジン駆動を実証として、効率的にCO2からe-fuel(ガソリン)を生成することに取り組んでいます。

同社は、今後、2025年の大阪・関西万博を1つのターゲットとし、e-fuelの製造実証や、製造したe-fuelを用いた車両試運転など、実証を重ねていく予定です。

また、やまびこ社との連携はe-fuelの合成プロセスにおいて、再生可能エネルギーを利用した水電解による水素と回収CO2を用いて合成する方法のみならず、現状未利用のまま放置されている林地残材を用いた木質バイオマス資源を有効に利用する方法も構想しており、今後の進捗が楽しみです。

「簡単」「エコ」「高効率」な分離でみんながスマイルな未来へ

澤村社長は、カーボンニュートラルの実現には、「経済性も重要な要素」だと語ります。

また、シニア人材の積極活用や外国人人材の活用も同社の特長の一つです。同社は、定年退職後の経験豊富なアクティブなシニア人材を積極的に登用しているほか、海外展開も視野に入れて、留学生や外国技術者も採用するなど、多様な人材が活躍しています。

イーセップは、会社ロゴのように簡単(easy)、エコ(eco)、高効率(efficient)な分離(separation)を追究し、みんなが笑える社会を作っていきます。


KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]

経済産業省近畿経済産業局は、近畿2府5県(福井県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県)における経済産業省を代表する機関であり、経済産業施策の総合的な窓口機関です。年間 1,000 件以上にも及ぶ企業訪問を通じて、未来に向けて躍動する関西企業を発掘し、そんな企業の挑戦を、より良い未来を見据えた変化への「兆し」と捉え、「KIZASHI[関西おもしろ企業事例集 - 企業訪問から見える新たな兆 (きざし)]」として、とりまとめています。

2022年12月に発表された「KIZASHI vol.19 『社会課題解決とともに成長する企業 – シリーズ:2025の先に待つ未来を描く 02 -』」では、社会の様々な課題を解決し、人々が快適に暮らすことができる社会を創ろうと奮闘する企業を特集しています。


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