関西バッテリーだよりDENCHY “ホンモノ“に触れることをきっかけに将来に繋がる学びを伝えたい - 授業レポート(2)- 兵庫県立姫路工業高等学校 工業化学科 宇都宮 英人 先生
こんにちは。近畿経済産業局 次世代産業・情報政策課です。
今回の関西バッテリーだより-DENCHY- では、兵庫県立姫路工業高等学校 で実施された、バッテリー授業の様子をお届けします。
同校では2024年1月にも2年生向けに4学科でバッテリーの特別授業を実施するなど、東矢校長先生をはじめ多くの先生のご協力により、学校を挙げて精力的にバッテリー教育プログラムに取り組んでくださっています。
今回は、2023年度に教材作成にも携わって下さった工業化学科の宇都宮 英人先生へのインタビュー記事をお届けします。
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校庭に電気自動車がやってきた
2024年7月、青空のもとに清々しい始業の挨拶が響きます。
この日、兵庫県立姫路工業高等学校の校庭では、機械科1年生75人に向けたバッテリーについての特別授業が実施されました。
「実物を見ること、そして実際にバッテリーに関わる仕事をしている企業講師から解説を受けることが、彼らにとって素晴らしい経験になるのでは」との想いでこの授業を企画したのは、兵庫県立姫路工業高等学校 工業化学科の宇都宮 英人先生です。
生徒たちの前には、3台の電気自動車が並んでおり、「電気自動車を見たことがありますか?」との企業講師からの問いかけに対してパラパラと手が上がります。
その後、バッテリーは電気自動車にとっての心臓であり、走行距離や加速性、安全性等の性能を左右する重要な要素であるとの解説があった後、各々が自由に電気自動車を見学しました。
電気自動車の側には企業講師が控えていて、生徒たちは自由に質問を投げかけたり、BEVとHEV(※)では搭載するバッテリーの種類や数が異なり、そのために電池を搭載するスペースの大きさに違いがある等の説明を受けたりと、30分の見学時間が物足りなく感じるほど、生徒たちは興味津々の様子でした。
次は教室に戻り、企業講師による座学の授業です。
バッテリーの実物が回覧され、生徒たちは自分の手でその重さを確かめながら、バッテリーが身近で重要な存在であると解説を受けました。
その後、バッテリーによって世の中がどのように便利になったかを近くの生徒同士で相談しながら考えるワークを実施しました。
学校の先生と企業講師が教室を回り、悩む生徒にはヒントを出しながら回答を促します。
生徒からは「昔は団扇で仰いでいたが、最近ではハンディファンが普及している」等の回答が挙がりました。
最後に、朝校庭で見た電気自動車にも使われているバッテリーが姫路市に立地する工場で作られていること、また同校の卒業生もバッテリー分野で活躍していることについて、真剣な表情で解説を受け、授業は終了しました。
学校内で広くバッテリー授業を展開
姫路工業高校では、ご紹介した機械科1年生以外に、工業化学科2年生、機械科2年生にもバッテリー授業を展開しています。
9月には、工業化学科2年生を対象に、テキスト教材を用いた座学のバッテリー授業が実施されました。担当は工業化学科の宰務 琢己 先生です。
授業の進め方として特徴的なのは、授業前後のアンケートや授業中の声掛けを通じて生徒の理解度をこまめに確認していらっしゃる点、日頃の授業や資格試験での学びとバッテリー教育教材の内容を紐付けて解説されている点です。
授業前のアンケートでバッテリーについての生徒の認知度があまり高くなかったことを受けて、SDGsの17の目標を話題に出し、バッテリー産業もそれらの目標に貢献していることを紹介する等、生徒の関心事であるSDGsの延長としてバッテリーについて学べるよう、工夫を凝らしていました。
また学科・学年にもよりますが、同校では学校での座学の授業を実施した後に工場見学や産総研関西センターでの小型電池製造実習の機会を設け、バッテリーについての理解をより深めることを目指しています。
宇都宮先生からのメッセージ
姫路工業高校では、複数の学科において計画的にバッテリー授業を実施しています。
私自身、2023年度から教材作成に関わってきましたが、環境問題との関わりや仕事の解説等、化学系以外の学科でも使いやすい内容だと考えています。
また、この取組はマイスターハイスクール普及促進事業にも採択されており、企業との関わりもさらに深めていきたいと考えています。
当校では、特に進路指導の観点でバッテリー教育プログラムに期待しています。テキスト教材を用いた座学の授業後に産総研関西センターでの小型電池製造実習を体験し、その学びをもって実際の工場を見学する、という流れが、生徒にとって深い学びに繋がると考えます。
編集後記
姫路工業高校では、2024年1月にも2年生向けに4学科でバッテリーの特別授業を実施するなど、東矢校長先生をはじめ多数の先生のご協力により、学校を挙げて精力的にバッテリー教育プログラムに取り組んでくださっています。
学科ごとに異なる生徒の関心や学習状況に応じて実施方法をアレンジいただいており、見学にお伺いする度、勉強になることばかりです。
その背景にある「生徒たちが工業高校卒業後に自身の専門性を活かして社会で活躍してほしい。そのために、ものづくりには様々な業界があることを知ってほしい。」との宇都宮先生の熱い想いが印象深く心に焼き付いています。
次回の授業レポートもお楽しみに!
関西バッテリーだより-DENCHY-とは
GX・DX等の実現にかかせない様々なイノベーションを支える基盤として、長期的な成長が見込まれるバッテリー(蓄電池)産業。
経済産業省は2022年8月に「蓄電池産業戦略」をとりまとめ、2030年までに国内150GWh(年間)のバッテリー製造能力を確保する等の目標を打ち出し、バッテリー関連企業が集積している関西エリアで「関西蓄電池人材育成等コンソーシアム」を立ち上げました。
これから益々の盛り上がりが期待されるバッテリー産業ですが、基盤産業であるからこそ、一般の目に触れる機会が少なく、その魅力が十分に認知されていないと考えています。
そこで近畿経済産業局では、未来を担う若い世代を含め、多くの方にバッテリーの魅力を“やわらかく”お伝えしたいという想いから「関西バッテリーだより - DENCHY -」をスタートしました。
今後も、様々なゲストへのインタビュー記事も順次お届けしますので、ぜひご覧ください!